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黒の暗殺者  作者: 平平平平
第二章 死二抗ウ者
63/67

第13話『そういえば』

前回に続き今回もかなり短めになってしまいした。

次話(14話)投稿の際に改めて12話と13話を統合するかもしれません。



「おはよーう」

「おはよー」


 時刻は9時29分。

 場所はメイラード南西街にある小さな噴水の前。

 予定よりも早くにログインした俺は、ここ数日の戦いで消費したアイテムや必要に思えたモノを先に買い揃えた後に、アネハと待ち合わせの場所で落ち合っていた。 


 先に来て噴水の端に腰がけつつ自分のステータスウィンドウを眺めていた俺は、1mを越える大盾を背中に担ぎながら噴水まで歩いてきたアネハに挨拶を返す。

 アネハは右手を軽く挙げながら俺の側にまで近づくと、盾をおろして俺の隣に座り込んだ。


「いやー、会っていきなりリアル(現実世界)の話になるけれどさ、今日はホントに暑いな!」

「ああ、俺もまだ朝だってのにもう室温が25度こえててびっくりしたよ。なんでも天気予報の受け売りだけど今日は俺達が住んでる町ですら35度を越える見込みらしいな」

「はあー道理りで。──はてさて一体今日だけで熱中症患者が何人でるのかね」


 アネハはそんな軽口を叩いた後直ぐに、大仰な手振りを交えつつ「まあこの話題は脇に置いといて」と言って話題を切り替えた。 


「ところで、さっきから何を見てるんだ?クロ」

「ん……これか? いやちょっとスキルが気になってさ」


 アネハに指摘されたのは待ち合わせる前から俺が操作していたステータスウィンドウであった。

 システムウ(ステータス・アイテ)ィンドウは(ムウィンドウの総称)通常、システムによって他の人からは絶対に見ることができない設定が施されており、この設定を手動で切らない限りは他人のウィンドウは透明な薄灰色の板としか認識できなくなっている。 

 アネハのその質問は会話中だというのに手元の作業に目線をあてる俺の行儀悪さを指摘するものではなく、単純にその作業内容が知りたくなったが為のものだろう。

 

「実はスキルポイントがもう30以上も貯まってるのにまだ一つもスキルを取ってなくてさ」

「へえ……促成栽培(経験値倍化による成長)でレベルが一気に二桁いった俺と違って、赤輪キャラでまだスキル取得無しって凄いな──主に駄目な方向で」


 『赤環キャラ』というのは赤魔術の指輪を所持しているプレイヤー、つまりβ版からキャラリセットを行わずに製品版に移行した者達を指すRWプレイヤー間で使われている俗語である。


 RWの種族、職業、また大半のスキルはそれぞれ別々にレベルを持っている。しかし半強制的に選択される種族と職業と違いノーマルスキルの習得には各個人の判断に委ねられている。

 何が言いたいのかと言えばエリクサー症候群よろしくコツコツとスキルポイントを貯めるのも良いが、先に有用なスキルを取ってしまった方が(当たり前だが)スキルのレベルアップが早まるのである。

 

「だろ? スキルポイントなんて残しておくだけ宝の持ち腐れというか勿体無いだけなんだし、この際何か良い使い道がないかなって俺が今取得できるノーマルスキルの一覧を見てたんだよ」

「なるほどな……俺からしてみれば何故今更になってその決断をしたのか結構気になる所だが……」


 アネハはそこで言葉を一回区切ると、横目でチラリと俺を見た後に大きく鼻息をついた。


「おい、なんだその『まあコイツだから仕方ないな』みたいな反応」

「はははは! クロって地頭は結構良いのに割りと何処か抜けてるというか短絡的な思考をする節があるからなあ」

「アネハ、それは説明じゃなくて貶しって言うんだぞ」


 そうして冗談を交えつつそんな益体も無い会話を続けること十数分。

 何処ともなく『折角こうして朝早くから集まったのに何時までも長話するのは勿体無い』という結論に至った俺達は、そそくさと噴水から立ち上がり南門へと足を進ませ始める。


 どうせ目的地までの移動時間は雑談位しかやることがないのだ。

 スキルについて一人で考えるのにしろ、或いはアネハと話し合うにしろ、その時であっても別段大差はないのである。

 



申し訳ありません。次回の更新は7月31日(月曜日)とします。

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