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黒の暗殺者  作者: 平平平平
第二章 死二抗ウ者
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第12話『猛暑日』



5月19日水曜日

5月20日木曜日⬅前回

5月21日金曜日

5月22日土曜日

5月23日日曜日⬅今回





 5月23日 午前8時27分


 5月の下旬に入り、春の爽やかな風が止まると共にいよいよ太陽も本気を出し始めてきた今日この頃。

 強い日差しによってアスファルトが焼ける匂いと、日曜日だからか元気な子供達の叫声が乾いた風に煽られて町中に漂っていた。


 気象庁曰く本日の日本の天気は全国的に曇一つない快晴となっているようで、俺が住んでいるこの町の気温も長々と続く地球温暖化と町の立地のおかげもあって本日35度を越える見込みらしい。

 冬の次には春が暫く居座るかと思いきや、ものの一瞬で過ぎ去り夏が来て。今度は夏の次に秋が居座るかと思いきや、やはりまた一瞬で過ぎ去り冬が来る。

 いやはや、2070年代生まれの現代っ子である俺からしてみたら、日本にはハッキリと判れる四季折々の様々な景色があると言われていた数十年前を是非見てみたいものである。



 ……とまあ、そんな俺のどうでもいい願望は置いておくとして。

 何はともあれ今年一番の猛暑日で地方の一部では軽く40度を越えるだろうと予報されているこの炎天下のなか、俺は高校生という限られた青春を謳歌する為にも家の外へ友人と遊びに出かける───なんてこともせずに自室でゴロゴロとだらけていた。


 せっかくの休日だというのにそれで( 味気ない青春 )いいのか高校生、などと突っ込まれるかもしれないが。

 そもそも季節の変わり目であり、また急激な気温の変化にまだ体がついていけていないこの時期にこれといった理由や目的もなしに外出する方が間違っているのだ。


 

「よっこいせっ……と」



 俺はリビングのテレビから流れる気象庁やメディアがこぞって熱中症の注意喚起をする音を左耳から右耳へと聞き流しつつ、食器用洗剤の匂いがわずかに残る両手をぶらぶらと振りながらソファに座り込む。

 家族は皆それぞれの所用や部活動で外出しているため家にはおらず、その代わりとして一番遅く起きた俺が諸々の雑事をこなしていたのだ。



「それにしても……暑いなぁ」



 立夏(5月上旬)を通り過ぎ、気温は真夏日かと空目してしまうほどに暑い日ではあるが、これでもまだ5月の半ばである。

 幾ら暑いからとはいえ5月から冷房を稼働させるのは(家族間の取り決めという理由もあるが)色々と後ろめたい気持ちがあった。



(──っと、もう9時か)



 暑い暑いと呻きながらも御飯の催促として足元にすり寄ってきたペット達の世話を済ませ、室温を確認するために温度計を見ていると、ふと隣にあったデジタル時計の『8:58』という表記が目に入ってきた。 

 部活動やクラブに参加(所属)していない俺と翔大にとって、日曜日というのは纏まった時間が簡単に確保可能なまたとない機会であり、実際、俺は翔大と今日の9時30頃からRWで一緒に遊ぼうと約束を交わしていたのだった。



「……せっかくだし、さっさと残りを片付けて先にログインしようかな」


  

 目の前にある室温計が27度を指し示している現状に顔をしかめながらも、有言実行とばかりに残った雑事を片付けていく。


 そしてそれから15分後。

 やや予定よりも幾分速めになったログインをするために、俺は自室のベッドで寝転がっていた。

 VRヘッドギアを頭に被り電源を入れる。ピピッという電子音と共に緑色のランプが点灯し、内臓されている精密機械達の蠢く音が鼓膜を振るわせ始めた。


 ようやくゲームの開始である。

 

 





次回の更新は7月17日(月曜日)です。

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