第6話『ゲームスタート』
───《此処は地球とは別の世界、リフロイナム。》
《魔法という超常的な力が全ての生命にとって当たり前である世界。》
《数多の種族が繁栄し、共存し、生活する世界。》
《火の神、土の神、風の神、水の神、木の神、戦の神、呪の神、獣の神、様々な神が管理している世界。》
《そんな世界、リフロイナムに新たな神が生まれた。》
《その神の名はメイディア。》
《管轄すべき物も、見守るべき物も、しなければならぬ事も、全てが『 無 』である神。》
《生きるべき定めも、果たすべき目標も、為すべき理も、全てが『 空白 』である神。》
《それが【 白の神 メイディア 】。》
《リフロイナムの神々はまだ幼き神メイディアの存在を知ると、こう思考した。》
《何か我々にできることはないだろうか?》
《例えれば、火の神ならば火の加護を、土の神ならば土の加護を、風の神ならば風の加護を、水の神ならば水の加護を。》
《あるいは、木の神ならば木の加護を、戦の神ならば武の加護を、呪の神ならば呪の加護を、獣の神ならば獣の加護を。》
《そうして各々の神が、自らが管理し、自らが統括する物や権利を少しずつ集め、譲渡していった。》
《やがて白の神は様々な神から得たその力を以て、この世界にある一つの種を創り出す。》
《それは我が子であり、眷族であり、使徒であり、そして、白の神の一部でもあった。》
《神々は喜んだ。己の託した力の欠片が、全てが無であった幼き神に守るべき者を創ったのだ。》
《しかし神々は後に驚愕する事となる。》
《白の神の眷族の能力であり、【 白の神 メイディア 】の真の力、それはーーーー。》
《 不滅。 》
《命を落としても、肉体が滅んでも、精神が蝕まれても、それこそ如何なることがあろうとも。》
《足掻き、壊れ、もがき、生き返り、生還し、誕生し、再起し、繰り返す。》
《あたかも、水が巡る様に。命が廻る様に。そして、壊れた者を直すが如く。》
《神々おも恐れおののく力。それが【 白の神 メイディア 】の加護であった。》
《この世界に現存する全種族の特徴を携える事ができ、望めば改宗も、他神に願えばその加護を得る事もできる。》
《通常種よりも脆弱であるものの、万能であり多彩な能力を所有している種。》
《それが 君だ。》
《さあ、この世界ーリフロイナムーで君だけの種を作り上げろ!》
ーー◇ーー◇ーー◇ーー
「お、おぉ……!」
俺は感動を押さえきれずにいた。
辺りを見渡してみる。
足元の地面には薄く光輝く魔方陣が浮かんでいる。
また、壁には様々な彫刻が施され、とても荘厳な雰囲気を感じられた。
そして、天井には10メートルはゆうにありそうなステンドグラス。
どうやら此処は『現在地:始まりの街メイラード/白の神殿』という視界の端に浮かぶ文字からも察っせれる様に、神殿らしい。
神殿からスタートというのはありきたりな設定だったが、むしろそのテンプレ感が俺は今VRMMORPGの世界にいるんだ。という実感を感じさせてくれるのだった。
俺は「凄ぇな……」と呟きながら辺りを見渡そうとし、
「うわ!」
唐突な衝撃で視界が揺さぶられ、しりもちをついてしまう。
い、一体何が起こったんだ?
突然の出来事で混乱している俺は、自分を見下ろしてくるスキンヘッドのおっさんと目が合う。
どうやらこのおっさんとぶつかったみたいだ。
俺はすいませんと謝罪の言葉を言おうと口を開き、
「おい、どけガキ! 邪魔なんだよ!」
そう吐き捨て俺を尻目に立ち去っていくおっさんに、驚愕した。
な、なんだとぉ!?
確かに俺はまだ高校生だが、面と向かってガキって罵倒したなこのハゲ!
そんな事を考えながら立ち上がり、早足で歩き去っていくスキンヘッドの巨漢を睨み付けていると、
「ふべッ!?」
「あ、ごめんねお嬢ちゃん」
耳が尖っている事から恐らくエルフである女性にぶつかられ、また転んでしまう。
「ごめんね。大丈夫?」
エルフの女性はそう言って助け起こしてくれる。
「あ、ありがとうございます、こちらこそボーと立っててすみません」
「気にしないで。ぶつかったのは私なんだから」
「じゃあね」そう言ってエルフの女性は神殿の入口を目指し歩き出す。
その態度はスキンヘッドの巨漢と比べ、雲泥の差であった。
良い人はちゃんと居るんだな。そんな風に関心しながら、俺は自分の身長と比べ頭約二・三個分位高いエルフの女性を見送る。
いや、なんかおかしくね?
何か違和感を感じた俺は周囲を見渡した。
そして目を見開く。
「な、なんだコレーー!?」
俺の周り、というかこの白の神殿には、俺が見上げなければならない程の高い身長の人達しかいなかった。
ど、どういう事だよ!?
巨人族?いや、そんな種族は選択肢無かった筈だ。じゃあなんで?
混乱している俺は、目の前を通り過ぎていく戦士(目測だけど)の初期装備であろう金属鎧に──より正確に言えば金属に映る自分自身に──目が釘つけになる。
そして自分自身の手や足をペタペタと触り、ついにはある事に気がついてしまう。
う、嘘だろ……。
違和感の原因。
それは周りの人間が高いのではなく、自分自身の身長が問題であった。
──そう、今の俺の身体は小学生もかくやと言える程に低い身長だったのだ。
「な、なんじゃこりゃーーー!?」
(´・ω・)「また髪の話してる……」