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黒の暗殺者  作者: 平平平平
第一章 生ヲ穿ツ者
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第31話『発見』

 

 realworldの運営開始から10日目、言い換えるなら俺がrealworldを始めてから10日目の今日。


 俺はメイラードの街の中央にある噴水に腰をおろしていた。



 始めて疾風の平原に行った日の様に、ドクさんやミシェルを待ち合わせをしている……訳ではなく、ただボーッとメイラードの街並みや空中を見つめていた。


 端から見たら上の空にしか見えないだろうが、俺がこんな状態になっている事にはちゃんとした理由があった。




 昨日ドクさんとミシェルから『用事があるから一緒に行動出来ない』と申し訳なさそうに言われ、 じゃあアネハと久し振りに遊ぼうかと思い誘ってみたら『今日はパーティー全員の都合がついて今組んでる最中だから無理』と断られてしまい、今日パーティーを組む相手がいなくなって冒険に出かけられないのだ。


 無論、やろうとしたらソロで街から出てダンジョンに行く事も出来るといえば出来るのだが、折角この一週間で所持金が2万弱も貯まってきたというのに、慣れないソロプレイをして全額散らすのは嫌だった。

 そして、なんとなくではあるが街から外に出るのは余り乗り気ではなかった




 ……という訳で。

 そんな諸々の事情 (まあ全部俺の都合が悪いだけなんだが) によりダンジョンに行く事を止めた俺は、こうしてメイラードの中央噴水で暇を潰していたのだ。




「あー宿題あるんだがなぁ……」



 今日学校で数学と古典の品詞分解が宿題として出たのだが、このままログアウトして一々宿題をやらなければならないと思うと、どうしてかやる気になれない。



「……まあ、授業が始まる直前の休み時間にでもやるか」



 俺の呟いた独り言は街の喧騒にのまれ、誰かに聞こえる事なく消えていく。



 ……それにしてもドクさんとミシェルの言う用事とは一体何なのだろうか?

 一回目と今回の共通点や違いを上げようにもよくわからないし (強いて挙げるなら一回目から今日までで丁度一週間後という事位だろう) 、ぶっちゃけこの一週間の間パーティーを組んだ事で互いに親しくなったものの、俺は彼らの事を何一つ……ではないにしても殆ど知らなかった。


 考えたら出合ってからまだ(・ ・)一週間しか経過していないのだから、そこまで気にする事でもないのかもしれない。



 そうだ。その通りだ。

 気負う必要はないのだ。

 人に嫌われるのは嫌だし、ましてや好関係を築いていた人に疎まれるのは嫌だ。

 ドクさんやミシェルは俺の事を故意に避けているのではなく、何か事情があるのだ。

 決して俺が嫌われた訳ではない。




 そんな風に色々と考えつつ、俺はメニュー画面を開いて自分の現在のステータスを確認した。









 ・name(アバター名) : 【 クロ 】 Lv.7

 ・race(種族) : 【 亜人族(デミヒューマン)

 ・職業(job) : main【 盗賊シーフ Lv.5 】 sub【 短剣使い(グラディエーター) Lv.9 】

 ・ステータス

 生命力(HP)【 30 】

 攻撃力(STR)【 30 】(+4)

 防御力(DEF)【 3 】

 魔法力(INT)【 3 】

 魔防力(RES)【 3 】

 器用値(DEX)【 5 】(+2)

 素早さ(SPD)【 29 】(+3)


 ・weapon : (所持武器)初心者の短刀(STR+2 SPD1)

 

 ・Passive Ski(常時発動型能力)ll : 【気配遮断[微]Lv2 】 【亜劣(デミ)】 【短刀の心得】(STR2+1 SPD+1) 【盗人の心得】(DEX+2 SPD+1)


 ・Active Skil(選択時発動型能力)l : 【ステップ Lv2】 ( スラッシュ Lv5 ) 【スティール・グランス(盗み見)Lv1 】 【スティール・センテン(盗み聞き)ス Lv1】


 ・称号 : ー








 うん。相変わらず攻撃力と素早さだけが異様に高い。

 他のステータスの10倍って、こんなステ振りそうそう見ない様な気がする。……ってまあ当たり前か。


 それとメイン職業を盗賊に変えたせいでステップとスラッシュは一時的に使えなくなってしまったが、その代わりに新しく盗賊のスキルが使えるようになった。



 使えるようなったスキルとは、盗賊のレベルが5になった時に取得した【スティール・グランス(盗み見)】と【スティール・センテン(盗み聞き)ス】だ。

 俗にジョブスキルと呼ぶらしいこれらのスキルはノーマルスキルと違い特定の職業ではないと取得出来ないそうだ。



 名前に『盗む』という悪っぽい名前がついているが、そんなに酷いスキルではない。


スティール・グランス(盗み見)】は短時間の間 視力を強化し遠くの物を見易くするスキルで、 【スティール・センテン(盗み聞き)ス】は盗み見と同様に短時間だけ聴覚を強化し、広範囲の音を聞き取りやすくするスキルらしい。



『らしい』というのはまだ実際にスキルを試していないから、詳しくは言えないのだ。

  そして、どうせ暇を潰しているのだから、此処でこのスキルを試してみようと思い、ステータスを開いたのだ。




(……じゃあ試してみるとしますか)



 大きく息を吸って軽い深呼吸をする。

 そして、




「『スティール・グランス(盗み見)!』」










 〰ー◇ーー◇ーー◇ーー










 《スキル【 スティール・グランス(盗み見) 】のレベルが上がりました。》

 《スキル【 スティール・センテン(盗み聞き)ス 】のレベルが上がりました。》





 俺はスティール・グランスとスティール・センテンスをそれぞれ2・3回づつ試し、スキルレベルが1上昇してLv2になった所で使用を一回中断した。




 ……うん。

 スキルを使用した感想を一言で表すならば、 『 落胆 』 であった。



 使っているうちにわかったのだが、このスキル、盗むとか大仰な名前がついている割には、なんと人に対して使うスキルではなかったのだ。



 まずスティール・グランス(盗み見)は現在自分によく見えてない部分を一時的に目に写すスキルの様で、恐らくは投擲武器や魔法の命中率を上げる効果があるのだろう。


 そして、スティール・センテン(盗み聞き)スは半径五メートル以内にいる音の発生源を意識的に識別出来るようになるスキルであり、恐らくは森や洞窟といった視界が悪い場所で敵の位置を判別し易くなる効果がある様だった。



 これだけ聞けば使い勝手がよく強そうに見えるスキルだが、俺の亜族人と同じ特殊種族であった獣人族の種族スキル (各種族が持ってるその種族しか取得出来ないスキルの事、亜人族だけ唯一所持していない) には、Lv1の時点でこれ等のスキルと同じ能力、若しくは性能がやや上回っている能力があると知っていたので、亜人族(初期種族スキルなし)だった俺がようやく手に入れたスキルの実態がそんな事だったのは、なんともいえない悲しさを感じた。




 とはいえ、スキルなんて持つだけでも 儲けもん と考えるべきなのかもしれない。

 何時何処でどんなスキルが有効になるのかなんて、その時にならないと分からないものなのだから。




 ……それにしても。



(あーあ、スキルの確認が終わったからまた暇になってしまった)




 何か他に暇を潰せる物はないのだろうか?





 そんな事を考えながら視線をあちこちにやっていると────ふと、ある建物に目が留まった。



 それはこのメイラードという街の中で、かなり目立つ位置に建てられており、入り口の門にはでかでかとこう書かれた看板が掲げられていた。






 〝メイラード冒険者ギルド〟 と。








次回の更新は5月17日(火)です

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