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黒の暗殺者  作者: 平平平平
第一章 生ヲ穿ツ者
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第24話『待人』

 翌日。


 俺はメイディアの中央にある大きな噴水の縁に座っていた。

 時刻は大体2時を少し過ぎた頃だろう。

 捕捉しておくが、夜ではなく昼である。

 

 学生である俺が何故こんな早い時間にログインしているのかというと、今日の曜日が土曜日であったことから、学校が普段の7限まである平常授業ではなく四限までの午前中授業だったのだ。

 自分の分の昼食や、今日の夕食の作り置き等といった家事を軽く済ましてからだったので、ログインがやや遅くなってしまったが、それでも待ち合わせの時間にはやや速かったようで、こうして目立ち易いオブジェクトを背に座って待っているのだ。


 待ち合わせの相手は俺のパーティーメンバーである、ミシェルとドクさんだ。

 一昨日ドクさんと宿の前で別れる際に、少し余裕を持たせて約束したのだが、どうやら余裕を持たせ過ぎてしまったらしい。


 集合時間は2時半なので、それまではずっと此の場で待機せざるをえないだろう。理由は入れ替わりになると怖いからだ。


 後約20分、秒になおすと約1200秒である。

 空や街の喧騒を端からみて時間を潰そうとした俺は、直ぐに考え事をしてしまっていた。

 無論、内容は昨日見た光景ーーより正確に言えば路地にいたミシェルとドクさんーーに対してのものだ。


 しかしまあ、一日程時間が経つとそこそこに頭も落ち着いてくるようで、今俺の頭の中には昨日の様な『彼らの行動に対する』疑問はなく、寧ろ俺が見た少し後には彼らが忽然と消えていた事に対する心配の念が生まれていた。

『もしかするとミシェルとドクさんは、路地に居るのを俺が見ている事に気づいたのでは? だから直ぐにあの場からいなくなったのかもしれない』

 そんな心配である。


 断りを入れた程の用事なのだから、人に目撃されるのが嫌な用事だというのは容易に想像がつくものだ。

 ましてや自分達が感情をむき出しにしている所を目撃されたのである。その場から直ぐに人がいない所へ向けて移動する可能性は十二分にあり得る事だろう。


 そして、もし今述べた仮説が正しいものであるとするならば、即ち、俺は今からそんな気まずい事をしてしまった後の相手に会わなければならないのだ。

 確証はなく、しかしながら可能性はかなり高い、あやふやな疑問を抱いたままで、である。


 逃げる……もとい会うのを後日にして此の場から立ち去るという選択肢は、人との約束を破るのが心苦しく感じる俺の性格と、彼らはプレイヤーではなくNPCなのでフレンド登録(連絡・通信)も出来ないという事実から、土台無理な話だろう。



(あぁ……、一体どうすれば……)



 俺はやるせない気持ちを抱きながら空を仰ぐ。

 ゲームとは思えない程にきれいで、澄んでいる蒼い空を視界に捉えるが、焦る気持ち故か、何一つと言っていい位に感慨が湧かなかった。


 と、そうして空をボーっと眺めていた俺は、突如自分の視界全体が人の顔で覆い被さった事に驚き、「うわっ!」と声をあげながら後ろへ仰け反ってしまう。



「えへへへーー、クロちゃーん。 二日ぶりだね!」



 仰け反った事で後ろの噴水に落ちそうになった俺の手を掴んだのは、喜色満面の笑みを浮かべたミシェルだった。










事情により次回更新は2月5日とします。

申し訳ありません。

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