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黒の暗殺者  作者: 平平平平
第一章 生ヲ穿ツ者
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第22話『怪訝』

「遅れたが、ありがとうなアネハ。俺の用事に付き合ってくれてさ」

「なあに、ちょうど俺もやや羽目をはずしやすいこの世界(ゲーム)で、お前と色々話し合いたかったからな。お互い様だ」



 (皮屋)を出てから直ぐ後のこと。

 俺達はダンジョンには行かず、メイラードを巡り歩いていた。


 綺麗な円形の街であるメイラードの通りは、中心にある巨大な噴水から各門(東門・西門・南門・北門)に繋がっている計4つの大通りと、囲碁の碁盤を彷彿とさせる様に規則正しく並んでいる小さな通りから成り立っており、そしてそれに付随したような形で、先述したどの通りよりもより幅が狭く煩雑に住宅区の間を通っている路地がある。


 今居る場所は大通りからややはずれいて人影も疎らな小通りで、折視界の端を流れていく路地の入口を横目で見ながら、俺は翔大話しかけた。


「でもお前パーティー組んだんだろ? パーティーと一緒に行動せずに、俺と居て良いのか?」

「大丈夫。パーティーの方針が『パーティーメンバー全員の予定が合わない限り活動しない』って事になっててさ、今日は現実(リアル)の用事で二人インできないからパーティーは休みなんだよ。……それよりもお前こそ大丈夫なのかよ。今日知り合ったNPCの冒険者とパーティー組んだって聞いたけど、会わなくてもいいのか?」

「ああ…………そのことなんだが」



 俺は今日、より正確に言えばログアウト直前にしたドクさんとの会話を思い出す。



『すまんクロ。パーティーを組んだ直ぐ後で悪いんだが、明日は俺とミシェルに私用があってな……。ちょっとお前と一緒に行動出来なさそうなんだよ』

『え? あっ 、 私用……ですか?』

『ああ、詳しくは話せねぇが ちょっと野暮用でな』



 別れを告げ宿屋に入ろうとした矢先に話しかけられたので、少し戸惑って俺の返し方がおかしくなっているのは置いておくとして、ドクさんと交わした会話はこれだけだった。

 きちんとした説明もなく、酷く唐突な報告であったので追及しようとは試みたのだが、追問のために振り返った時には既にドクさんが見当たらなかった事と、体を覆う軽い倦怠感があったことから追及は諦めたのだった。

 その結果、もやもやとした気持ちを抱えながら、翔大と共にソロプレイ(パーティーを組んでいない間柄で居るのだからでソロで正しいだろう)をしているのだ。



「俺も大丈夫だよ。お前と似た様な感じでパーティーメンバーの二人が用事で一緒に居れないんだってさ」

「へー、……こう言っちゃ なんだけどNPCにも用事があるだな」

「ん? なんでNPCに用事があったらダメなんだよ」

「誰もダメとは言ってないさ。ただ……」

「ただ?」

「昨日売店の定員にも感じたんだが、このゲーム(real world)のAI技術は凄いなと思ってな。お前もそう思わないか? 『まるで人が中に居るみたいだ』って」

「……確かに」



 俺は翔大の質問に頷くことで肯定の意を示す。


 VRMMOは実現不可能だと言われてきた様々な根拠の一つである『高度なAIの実現』だが、実際にそのVRMMOを完成たらしめた技術の一片に触れてみると、なんとも、舌を巻くことしかできなかった。


 従来の様に同じ言葉を繰り返し使うNPCは、今のところ見かけていない。まずこの時点でAI技術に関しては凄い事なのだが、昨日会った事と昨日交わした会話を記憶していたりするのだ。


 技術の革新は目を見張るものがある。成るほど、若干違いがあるが昨日翔大が言っていた発言はこれを見越しての発言だったという訳か。……いや、それはないな。



「まあ、AIがどうだなんていう会話は、極論してしまえば全くと言って良い程に関係ないんだがな」

「ふーん。それはまたどうしてなんだ?」

NPC(AI)はあくまでもゲームの一部であり、ゲームをプレイする上での外的要因にしかなりえないからさ。大切なのは自分自身がこのゲームを楽しむことが出来るかどうかの有無だけなんだよ。分かったかクロ?」

「……なんか臭いなその台詞」

「まじでっ!? 俺的に結構な出来だと思ってたんだけど!」

「何て言うの? こう理屈をこね回して失敗してるというか、ちょっと本来の意味と違うニュアンスで言葉を使ってーーーーーー



 翔大の言葉に駄目出しをしていた俺の言葉は、そこで止まってしまう。

 そして訝しげに此方を見てくる翔大は完全に視界から外れ、ある一点に目が釘付けとなる。


 先程から流し目で見ていた路地だったが、今俺達が通り過ぎた路地の奥に人影があったのだ。


 先に断言しておくが、俺は決して路地に人が居た事に対して驚いているのではない。

 皮屋を出てから此処までの道中の間で多少は見てきていのだ。今更そんな事でビックリはしない。


 そうではなく、

 俺が驚いている理由は、その路地の奥の方にいる人影に見覚えがあったからだ。

 正確に言えば路地奥に居る三人の人影の内の二人に。



 路地に居る人影の特徴は、浅黒いコートを目深に被った怪しい人物が一人と、青い髪で耳が生えた少女と、赤い髪の男だった。





事情により次回更新は一月17日です。

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