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黒の暗殺者  作者: 平平平平
第一章 生ヲ穿ツ者
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第2話 『自宅にて』

 あれから翔大の言った通り10分もかからずに家に着いた。


「ただいまー」と言いながら玄関の扉を開ける。


 返事はなかった。まあ、まだ平日のお昼時なのだから、働きに出ている両親から返事が無いのは当たり前か。有ったら逆に俺が困る。


 そんな益体もない考えを頭にめぐらせながらも階段を登り、二階にある自室に入り、制服から部屋着に着替える。

 そしてベッドの上に置いていたヘルメットの様な機材──ヘッドギア──を手に持つと、頭に被せてベッドに寝転がった。





 突然だが説明といこう。



 2088年現在において、過去(それも二十世紀後半から二一世紀初頭の頃)にその存在を提示されたVR技術は、空想ではなく確固とした現実の物として実現していた。


 その証差としては今俺が手に取った、体外式仮想空間投影機──通称ヘッドギアと呼ばれる、頭に装着することで仮想現実(VR世界)を体験することが出来るこの装置が上げられる。


 2056年にNAVASIUという名前の会社が作ったこの装置は、当初では色々な名前や呼び方があり、そしてまだ実現段階には至ってなかった。

 だが、2071年に政府や様々なスポンサーが着いた事でとうとう完成し、今に至っている。

 

 因みに何故通称がヘッドギアなのかというと、最初期の型(プロトタイプ)が格闘技でよく使用されているヘッドギアと酷似しているからであり、その由来でもある頭部(ヘッド)(に装着する)衣服(ギア)だからだ。



 閑話休題(説明修了)




 俺はヘッドギアの電源を入れ、起動パスコードを入力してから、視界に表示されたホロウィンドウを操作し、早速検索画面を開く。


 検索にかけるワードは『痒いの痒いの飛んで行け』、先程学校で翔大に奨められたゲームだ。


「痒いの痒いの飛んで行け」と音声入力で検索する。そして二・三個のサイトを行き来した後に《 フリーゲーム:『痒いの痒いの飛んで行け』 》をダウンロードし、ダウンロードが終了するやいなや直ぐ様ゲームを起動する。


「さーて、面白い事を期待してるぜ? 翔大」





 ーーーー




『うっす。一時間ぶりだな卓人』


 時刻は一時四十分。

 俺は翔大に連絡してくれと頼まれた時間となったのでゲームを中止し、VRチャットのアプリを開いて翔大にコールをした。


 VRチャットとは、まぁ、テレビ電話の上位互換の様なモノである。

 携帯電話の如く画面を通じて会話をするのではなく、ヘッドギアを着用し、コール(呼び足し)セーフ(認証)をすることで安全かつリアルな会話を仮想空間にて行うというのが、最大の相違点(進化)と言えるだろう。



「おう」


『で、早速だがどうだった?』


「どうだったって何がだよ、痒いの痒いの飛んで行けの事か?」


『ああ、イグザクトリー(その通り)!』


「はいはい。……そうだな、楽しいというよりも面白いと言うべきか────」



 それから10分程、俺は翔大と 痒いの痒いの飛んで行け について話しあった。


 駄目な点は何か、改善点はどのような所か、開発者はなかなかユーモラスだな、そんな事を話していると、


『おっと、もうこんな時間か』


 翔大がそう言って話しは中断となる。


 時計を確認すると、時刻は1時50分となっていた。




『いよいよあれが始まるのか……』


 翔大の呟きに俺は相づちをうつ。


「ああ……」




 さて、


『あれ』。今まで隠語として使ってきたこの代名詞だが、俺達にとってのあれとは即ち、VRMMORPGの《 real・world 》というゲームである。


 たかがVRMMOのゲーム、と侮ることなかれ。RPG、そう! RPGなのだ。これまで何十年もの間切望されていたあのVRMMORPGなのだ! ──等と翔大は熱弁していたが、実際その通りである。


 VR技術によるMMORPGは、膨大な容量、精密で多用的なAIシステム、莫大な情報処理能力を始めとした様々な技術や土台が必要とされ、ほぼ全てのVRゲームの開発会社が挫折した(諦めた)と言われていた。

 だが、2085年9月18日にVR技術の先駆者であるNAVASIU社と、会社で開発部長である夢砕 現造(むさい げんぞう)が開発に成功し、約2年半の月日をかけた今、とうとう一般人に向けたテストプレイが始まるのだ。


 そして、俺と翔大はテストプレイヤー募集に応募し、見事二人共その権利をてに入れる事ができた。


 そう、俺は今歴史的瞬間を目前としていると言っても過言ではないのだ!……という世迷い言は置いておくとしてだ。



 現在時刻を確認すると1時55分だった。



『さてと、本題の待ち合わせ場所なんだが、公式ホームページを見てもどうやら今の段階でもマップは配布されていないようでな……』


 参ったこった。そう言って翔大は苦笑いを浮かべた。


「マジか。せめて当日には配布されると思ってたんだけどなあ」


『まあ、その代わりとしてはなんだが、街の中でのみヘッドギアの機能が少し使えるらしい。そしてその機能の中には双方が街の中にいる事が条件だが、普通の電話が出来るようでな、ログインしたらこれで連絡取り合おう』


「了解!」




 時刻は14時58分、秒針を確認すると44を指していた。つまり残り一分16秒!




『じゃあな、後はゲームで!』


「おう!」


 翔大がログアウトした事を確認して、直ぐにVRチャットを終了する。


 そしてゲーム《real・world》をいつでも始めれるようにスタンバイする。


 やがて時計の針が14時00分00秒を指した時、俺はreal・worldにログインボタンをタップするのだった。連打で。






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