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黒の暗殺者  作者: 平平平平
第一章 生ヲ穿ツ者
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第17話『疑問』

 覚悟を決めたステータスを割り振りが終わると、俺は先程の戦闘ーーより具体的に言うなら戦いにおいての彼らと俺の関係ーーを振り替える。




 結論から言うとするならば、俺とミシェルとドクさんのパーティーは (連携は一先ず置いとくとして) 中々にバランスのとれたパーティーだった。



 ミシェルはやや近接よりの魔法使い。

 ドクさんはやや近接よりの盾使い。

 そして俺は近接しかできない短剣使い。



『やや近接より』というのはどういった意味なのかと言うと、彼等が時折ではあるのだが、剣等の近接武器でモンスターを攻撃していたからだ。




 唐突だが、ファンタジーやゲームのパーティーにおいて、『役割』というものがある。


 これは所謂 R(Rolepl)P(anning)G( Game)においての R 、“Role(役割)”に即するものである。

 まあ、役割といっても多々あると思うが、この場合俺が言いたい役割とはパーティーにおける配置の事だ。


 前衛、中衛、後衛。と言えば分かり易いかもしれない。



 敵に物理技による近接的な大打撃を与えるアタッカーや、敵の攻撃を防いだり敵の注意を自分に向けるタンクといった、俗にダメージディーラーとも称される『前衛』


 遊撃を始めとした、あらかじめ討伐対象を定めないことで仲間の加勢や援護、支援等を効率良く行う『中衛』



 敵に魔法技による遠隔的な大打撃を与える職業や、敵にデバフ(バット ステータス)(例 毒 麻痺 ステータス低下等)を付与するデバッファー、味方にバフ(強化)(一時的なステータス強化)を付与するバッファーといった『後衛』

 


 これ等の役割がこの三人のパーティーではきちんと成り立っていたのだ。



 元々二人組のパーティーだった事で、盾使いの前衛(タンク)であるドクさんと魔法使いで後衛のミシェル達は、お互いが少しづつ中衛の役割をこなす事というやや不安定な戦闘スタイルを確立していた。

 けれどそこにATK(攻撃力)SPD(俊敏力)が高い俺が中衛 兼 前衛(アタッカー)として加わる事で、少しではあるもののパーティーのバランスが良くなったらしい。


 これはミシェルの「いつもより戦いが楽だねードク」といったドクさんへの問いかけをしていたのをさっき見たので、あながち的外れなものでは無いだろう。



 と、色々と考え事をしていた俺は、ミシェルが目の前に立って此方を見ているのに気がついた。



「どうしたのクロちゃん? ホーンラビット倒して挙動がおかしくなったと思ったら、いきなり黙り込んで……。何か嫌な事でもあったの?」



 心配そうに伺ってくるミシェル。


 どうやら俺は考え事に没頭しすぎで周りの声が聞こえてなかったらしい。

 とりあえず俺はなんとも無いので、ミシェルを安心させる為に「大丈夫」と言う。



「ちょっと考え事をしていただけだから」

「考え事って?」



 なお質問を重ねてくるミシェルに、「ちょっとした事だから、心配しなくても大丈夫」と言い返して、会話を終わらせようとするが、



「おいクロ」



 後ろからドクさんに呼び掛けられて、試みは失敗に終わった。


 ドクさんはゆっくりと俺の前に歩いてくる。

 そして、


「参ってるのか?」


 そう聞いてくる。

 その顔はやや鬼気迫っていた、



「え?」

「だから、罪悪感や憐れみを感じて参ってるのか? って聞いてんだよ」



 俺の聞き返しにやや苛つきながらも、再度質問をするドクさん。

 罪悪感? 参る?

 始めは意味が分からなかったものの、ドクさんが手に持っていたやや焦げ付いたホーンラビットの死体を、俺の目の前に掲げた事でやっと合点がいく。


 つまりドクさんはこう言いたいのだ。

「さっきお前は生き物を殺した事で、グロッキーになったのか?」と。


 質問の意図を読み取った俺は、直ぐにその質問に対し「大丈夫です」と返す。


 あれはゲームの敵であり、モンスターであり、そういう物(殺していい物)であり、此方に殺意を向けているものであると認識していたからだとは思うが、俺は良心の啖呵といったものは一切感じなかったからだ。



「……そうか、それなら心配はいらねぇか」



 浮かべていた厳つい形相を崩すドクさん。



「……ただ、まあ一つだけ忠告しておいてやる。もし、もしお前がこれから先にモンスターを見かけた時、決して躊躇はするな。 ……奴ら(・・)はモンスターだ。本当にモンスター(怪物)なんだからな」





 ……?

 ドクさんの話しを聞いた俺は、微かな違和感を感じていた。

 ドクさんの話し方の雰囲気やニュアンスがおかしかったような、おかしくなかったような……。


 暫く考えたが答は出ず、単なる自分の勘違いだと納得しかけていた俺は、ふと気づく。


 あれ? そう言えば……。


 俺はドクさんの右手を見る。

 そこには先程言った様にドクさんの手には、白い毛皮が黒く焦げ付いたホーンラビットが一匹いた。


 一目でそれが俺の倒したホーンラビットでは無い事が理解できた。

 俺の倒したホーンラビットには真一文に短刀の傷がついている筈なのに、ドクさんの手にあるのは切り傷所か掠り傷一つもなく、焦げあとは全て火魔法によるものであったからだ。


 俺とミシェルとドクさんの三人で倒したホーンラビットの数は、鯖を読んでざっと10匹前後だった筈だ。

 だが、ドクさんの手にはたった一匹しかいなかった。

 俺にはドクさんはマジックポーチといった収納アイテムは所持していないと話していた記憶がある。

 じゃあ他のホーンラビットの死体は一体何処に……?


 疑問に思いドクさんに問いかけようとするが、



「クロちゃん! ドク! 」



 ミシェルの大きな呼び声に遮られ、かなわなかった。



「もう日も暮れてきたんだし、そろそろ街に帰らない?」











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