#ファイル1-芹沢ユノの場合
名前:芹沢ユノ
性別:女
交友関係:知り合いは多いが親しい者は多くない
部活:帰宅部
「入学式後のホームルームのときに彼を初めて見て、世に言うイケメンとは少し違った、でも整った顔立ちに一瞬だけ目を惹かれました。そのときは特別な感情は抱いていなかった、と思います」
芹沢ユノはそう話してくれた。
その『彼』というのは、高校1年生のときに同じクラスだった伊川渉のことである。
芹沢ユノの主観に時折彼女の周りの者の話を織り交ぜながら彼女の物語を記す。
「入学から1ヶ月経つ頃にはクラスの雰囲気は和やかになっていて、出身中学の違う人たちとも仲良く話すようになりました。彼、涉君ともそれなりに交流はありました。このときもまだ特別な感情は抱いていなかった、と思います。
まもなく、校内実力テストが行われました。涉君はこのテストで総合トップをとりました。そのせいか、彼に質問に行くクラスメイトが多くなりました。勉強方法だとか、授業の内容についてだとかに関するもののほかに、趣味や彼女の有無についての質問が多かったみたいです。顔が整っていて頭がいい、ということで彼に想いを寄せる女の子もいたようでした。彼女の有無に関する質問はこの女の子や他の男子が特に気にしていたみたいです。男子は半分妬み嫉みが入っていたようでしたけど…。しかし彼は、よく言えばクラスメイトと一線引いて、悪く言えば誰にも興味なさげに愛想笑いで受け流していました。あまり深く人と関わるのが苦手な人なんだろうか。そのときはそう思っていました。多分このあたりから、彼の不思議な人間像に興味を持ち始めたんだと思います。」
「7月頭に2日間に渡って開催される文化祭の準備のために、その前の2週間は授業が短縮され、できた時間で準備を行うという日程に切り替わりました。私の学校の文化祭では、クラスや部活で出し物をするのではなく、学級学年織り交ぜて部門という形で出し物をする方式をとっていました。