第六話:急遽
次の土曜日は、女バスの試合だ。今は練習で精一杯。
ホイッスルの音と共に、ドリブルの音が地に響く。
「飯塚っ、頼んだ」
パスはそんなに多くないが、「縁の下のシュート王」とかつていわれていた。
バスケは7歳からはじめ、今まで6年間、毎日ボールを触り続けている。
バスケ経験のない人からみれば、かなり不思議であるだろう。
ラインクロスやファールも、ほぼ無い。プレイの仕方が遅いのかも知れない。
「違反女王」と言われる栄 松美、通称まつは、美弥に敵意があるらしい。
しかしそんなことをものともせず、1人黙々とプレイする舞子は、女子の憧れの的。
「もうすぐ女バス試合でしょ。頑張ってね」
男バスの選手達は次々と帰っていく。見物客かと怒りたくなったが、応援に支えられた。
「うん、応援有り難う。明日は男バスでしょ。絶対みにいくからね。」
舞子は上目遣いで男バスの先輩を見ている。それも格好いいひとばかり。
でもそんなふうな仕草できることが、美弥にとってあこがれだった。
舞子といい、純といい、どうして美弥の友達はこういう美形ばかりなんだ、と美弥はつくづく思うのであった。
「あれ?まいちゃん。今日まこといなくないか?」
舞子はさがす仕草をして、ほんとだ、と目を合わせた。まことに電話してみると、驚きの一言が返ってきたのだ。
「俺バスケやめるから、よろしくコーチに言っといて。みーちゃん、江藤、ごめんね。俺さ、続けていく気がないんだよね。『オマエみたいなへなちょこ、やめちまえ』ってしかってでもしてくれないかな・・。俺なんていなくても同じだよ、みーちゃん。」