第二話~そして現実を知る~
相変わらず美人さんをはじめ、皆が何を言ってるのか分らないが、多分ここは異世界という場所になるんだろう。
だって俺、テレビでも何でもこんなにカラフルな人見たことないし。
何よりこの人たち魔法使うんだ。
指先からぽっと火を出したり、ふわふわ物を浮かせてみたりするし。
そして、どうやら俺は転生とかをしたみたいだ。
小さな体で喋れなくて、よくよく目も開けてられないし。
事実は小説よりも奇なり…ってこういう時に使うのかな。
俺の死因も結構あれだけど。
にこにこしながら俺に話しかけてくる美人さん。
抱かれてるってことは…多分この人が俺の母親なんだろうけど…美人だよなぁ…。
こんだけ美人だと鏡見るのも楽しいだろうな。俺は平凡顔だったから鏡なんて髭剃るときくらいしか見ないけど。
上手く開けられない目で、それでも美人さんを見ていたら、部屋の(というか病室?)ドアが開いて荒い呼吸の男がはいってきた。
青い髪に銀色の瞳のこれまた大層な男前。
…え、ひょっとして父親?
何という美男美女カップル…!
「ファグ!」
美人さんが顔を輝かせて美形さんを呼ぶ。ファグ…って名前なのかな?
「リュスカ!」
美形さんが美人さんを呼ぶ。名前だね。うん。
美人さんの腕の中の俺を見て本当に幸せそうに頬を綻ばせる美形さんに何だか少し嬉しくなった。
俺、家族とかいない施設育ちだったもんなー。
あ、捨てられたわけじゃなく親が事故で一歳の時に死んだだけだから。
俺の親もこんなに嬉しいと思ってくれたのかな(この人たちだって(多分)俺の親なんだけど)
美形さん…じゃなくて、ファグさんがリュスカさんに何度も何度もキスをする。
そして俺にも。
ちょ、待って、止めて。
親愛の情で家族愛なのは分るけど、俺女の子ともキスしたことないんだよ!?
初めてが男、父親とか嫌だ!
…幸い、頬と額で済んだけど。ああびっくりした。
感情表現が海外並みなんだな。覚えとこう。
リュスカさんから俺を受け取るとファグさんは俺の顔を見つめながら
「リース」
と言った。
…俺の、名前…かな?
何度も何度もリースと言って笑うファグさん。
まぁ、悪くない名前だ。そう思った。
…それが、女の子の名前だと知るその日まで。
…俺が、女の子に転生していると知るその日まで。