第二十二話~お嬢様の特異性?いいえ、珍種です~
あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしく^^
目の前に仁王立ちしているのは学園でもかなり有名なお嬢様、エレメンスタイン侯爵の一人娘・レティスリール嬢だ。
「…何か用ですか?」
いい加減人の行く先を塞ぐのは止めてくれないか。
「…こんな、みすぼらしい娘が…」
みすぼらしくて悪かったな。こう言っちゃなんだが俺は多分に普通、だと思うぞ。
「貴女、ケイマ・サラジェット国家魔法師様の幼馴染なのですって?」
「へ、ケイマ?」
「!呼び捨てにするなんて…!あの方はこの国を守る素晴らしき方ですわ。貴女の様な方が気安く出来る方ではないのです!大体、どういう手を使ったのか、姫様にも近付いて…取り入ることしか出来ない虫にも劣る方ですわね!」
…物凄いこと言われてるな、おい。
虫以下…って…。あんたが今着てるそのドレス絹だろ?この世界でも絹は蚕の繭から出来るんだぞ?
お前虫を馬鹿にするなよな。俺自身も実はあまり虫は得意じゃないが、それでも感謝はしてるんだ。
ミミズは土を良くしてくれるし。
って、違う違う。論点がずれてるぞ。
「お話はそれだけですか?でしたら授業に遅れますのでもう行きたいのですが」
「まぁ…!信じられない、何の反論もなさらないの!?」
反論期待すんなよ。人の話聞きそうもない輩に無駄に話すほど俺の時間は安くねぇよ。
面倒くさくなった俺は、スカートのポケットから小さな瓶を取り出した。
「これ、ご存知ですか?」
「そんなものがどうしたというのです!?とにかく、貴女は今後ケイマ様にも姫様にも近付かぬようっ!」
「これね、キネシマ草とササカゼリ虫の糞を混ぜて作る薬なんですけどね?すっっっごく臭いんです。…もう聞いてないね」
ぱっと蓋を開け、彼女の顔の前にほんの一瞬。
それでお嬢様は気を失った。
すかさず蓋を閉める。ここが中庭の通路で良かったよ。そうじゃなきゃ換気が必要になるところだ。
お取り巻きをつれてなかったのも幸いだったな。
瓶を仕舞い、今度は袋に入った錠剤を取り出す。
錠剤を一粒、水なしで飲み込む。
…昔は水なしで薬飲むとか絶対無理だったなー。
まぁいいや、俺は気を失ったお嬢様を抱え上げた。
今飲んだ薬はシトロン草とミミツカ花の蜜を混ぜて作った俺のオリジナル薬。その名も【強力丸】。読んで字のごとく、強力無双になれる薬だ。
ただし効き目は十分だけど。
お嬢様を普段の三十倍くらいのスピードで走り、保健室に運んだ俺はそのまま先生に全てを任せて授業に向かった。
今日は何作ろうかなー。
「どうして、保健室に…?」
「ええと…ほら、あの有名なクレイル先生の弟子の子が連れてきたのよ。お姫様だっこで」
「!!?お、お姫様だっこ…!?」
顔を青くして、赤くして、お嬢様は三日寝込んだそうです。
「あ、貴女、また姫様と一緒でしたわね!?」
「ああ、レティスリール嬢。寝込まれてたそうですけど大丈夫ですか?(あの薬なら一時間もすれば目を覚ますと思ってたんだけど…効き過ぎちゃったのかな。ちょっと悪いことしたかも?)」
「!だ、大丈夫、ですわ。その、あの、貴女が私を保健室に…?」
「ええ、何か問題でも?」
「お、おお、お姫様だっこで!?」
「(お姫様だっこって…確かに横抱きにはしたけども)そうですね。そう言われてみれば…」
「私、ずっと決めていたことがありますの。私は一番最初にお姫様だっこをしてくれたかたに全てを捧げると!」
「(どんなこと決めてんのこのお嬢様!)は、はぁ…でも、緊急時でしたし、私は女ですし…」
「そんなことは問題ではないのです!貴女は私の未来の夫なのですわ!」
「ええええ!?それは、無理でしょう!?エンラントリュードでは同性婚は認められてないですし!」
「シルビエセレーンでは出来ますわ。お互いに成人した暁には結婚いたしましょうね」
…話を聞かないお嬢様の(限りなく一方的な)婚約者にされました。
俺、前世で悪い事でもしたかな?
あ、前世って日本でのことか…。
生意気じゃなく、俺についてくるお嬢様は可愛いんだけどね…妹みたいで。
…はぁ、めんどくさい。
新キャラお嬢様。
テンプレのツンデレ生意気高慢お嬢様にしようと思っていたのに、するする筆が進んで珍種のお嬢様になりました。
シルビエセレーンは隣国の一つ。舞踊とかが盛んな国で性的に奔放という噂です。
幼馴染に恋する恋敵のはずだったのに…おかしいなぁ…。
ところでキャラ紹介とか必要ですかね?