第十三話~もったいないおばけが出るよ~
両手に皿を持ったウェイトレスさんがこちらへやってくる。
「ベルーフリアンセットとカルランレーナセットでございます」
にこやかに笑うウェイトレスさん。うん、ご飯が美味しく食べられそうだ。
「すいません、食後にリクルのフェレージョを二つ」
「かしこまりました」
ウェイトレスさんが立ち去ると、俺はまずじっくり料理を眺めてみた。
流石プロだな、見事な盛り付けだ。このセンスが俺には足りないんだよな。
ルーナのベルーフリアンセットは母さんのこぶしぐらいの大きさのベルーフリアン(ハンバーグみたいなもの)と付け合わせのニジン(ニンジン)のグラッセとふかしたジャガ(そのものずばりじゃがいも)と綺麗に山になってるご飯が一つの皿に乗っている。
確か現代じゃこういうのプレートランチとか言うんじゃないかな。良く覚えてないけど。
あと、オニーニスープ(オニオンスープ)もついてる。
食欲をそそる香りと見た目にルーナはフォークとナイフを持って目を輝かせてる。
俺がナイフを持つまでお預け状態になってるな、これは。
これも躾の賜物というものです。
自分の分は食べ始めてからじっくり観察しよう。
「いただきます」「いただきまーす」
切り分けたベルーフリアンを口に運び、ぱっと顔を輝かせるルーナ。
「美味しい?」
「うん!お肉が凄く柔らかいの」
「いい肉使ってるんだろうなぁ。合挽きか、それともミーツ(牛に似た家畜(カウ、まんま牛じゃないか)の肉の事)100%か…」
「お姉ちゃんのは美味しい?」
「美味しいよ。やっぱりラザニアだった」
「?ラザニア?やっぱりって?」
「ああ、こっちの話。トメト(トマト)のソースとミティ(ミルク、カウの乳)のソース、それにチーズ(これはここでもチーズなんだ)が混ざり合って一つの味になってるんだ」
「…美味しそう!今度作って!」
「同じのが作れるように研究するよ」
ただ…これラザニアなのに皿に入ってないんだよな。直接ご飯に乗ってる…。
…あれ、これってラザニアじゃなくてドリア?でもご飯は普通だし…ううん…。
でもこの国に生まれて何がホッとしたかってほぼ食に関して現代と遜色がなかったことだよ。
白米もあれば醤油や味噌もあるし…。
日本人の心です。
寮に入ったら母さんに糠床送ってもらわないといけないな。
和やかに話しながら食事を楽しむ。
口に物入れながら喋っちゃ駄目だけど、会話を楽しむのはいいんだよ。
そんな時、視界に入った物に思わず目を見開いた。
「もったいない…!もったいないお化けが出るぞ…!」
「どうしたの、お姉ちゃん?」
「あれ、さっきどこかに持ってた料理。全然減ってないどころか殆ど手もつけずに戻ってきてる」
「本当だ、もったいないねぇ。美味しそうなのに」
「全くだ。どこのお大臣か知らないけどどうかと思うよ、本当に」
どういう人間か知らないけど、食べることを大事に出来ない奴は長生きできないよ!