第十話~魔列車の車窓から~
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ところで、この国はエンラントリュードという国である。
国王陛下はバベル・ド・クランテ・エンラントリュード、と仰る。
ちょっとした予備情報だ。
子供と離れたがらない両親や祖父母、叔父叔母、従兄弟たちと離れ(美形集団の群れって感じだった)泣きじゃくりルーナにまとわりつく子供たちをルーナが笑顔で懐柔し、俺とルーナは中央の都市・グランエルに向かった。
アレニは別行動。一緒じゃなくて良かったと思うよ、本当に。
荷物は大部分既に郵送済みだから(魔法配達便、というのがある)持ってるものはほんの少し。
まだまだ俺より小さいルーナの手を握り、俺は魔列車に乗り込んだ。
魔列車。
魔法の力のみで動く列車。
自動ドアで空調も完璧、等級分けがあって特級は凄いらしい。乗る機会はないと思うけど。
俺たちが乗るのは一等級の個室。王様が切符くれたんだって。気前いいなぁ。
「えっと…4両目の3号室…。…あ、ここだ。切符をスイッチの横に入れて…開いた開いた」
「切符ここに入れたら降りるときどうするの?」
「じ、おじいちゃんが言うには乗ってる間は客室の中にあるブレスを付けることで、部屋の出入りが出来て、食堂車とかも使えるんだって。それで、降りるときはブレスをスイッチ横に嵌めると切符が出てきて降りれる、ってことらしいよ。良く出来てるよな。これ考えた人凄いな」
「うふふ、そうだね。うわぁ、おねえちゃんお部屋綺麗だよ」
「本当だ。流石一等級。一体いくらするんだ、この部屋…」
広さは1Kのアパートくらいあるし、それとは別にバス・トイレ完備。ベッドルームも広くて綺麗。
ソファもテーブルも高級そうで、カーペットはふかふか。
ミニキッチンにお茶セット…おお、冷蔵庫(これまた魔法で冷やしてるものだ)には食材が…。
これは、この旅が楽しくなりそうだ…。
俺たちが住んでいた町はカルトと言い、国でも外れのそのまた外れ、ってくらい端にある。
魔法を使ってひとっ飛びで中央に行くのもいいけど、旅行も楽しいよ、と王様が言ったのかどうかは知らないけど、俺たちは一週間かけて魔列車で中央へ向かう。
こんないたれりつくせりで後で何か要求されやしないか不安になるな。
…そしてその不安は見事的中するのである。
旅です。旅が好きです。
次回も魔列車からお送りします。