逃げ込んだ先に
はじめまして。読んでいただきありがとうございます!
これはクラスに馴染めない地味な女子高生と旧校舎の図書室に棲みついている幽霊の女の子のお話です。
ゆっくり更新していきます。
最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
四月が嫌いだ。
毎年思う。桜がきれいだとか新しい始まりだとかそういうことを言える人間が羨ましい。私にとって四月はまた一からやり直しを突きつけられる月だ。高校、新しい席、新しい顔。あまりにも情報量が多すぎる。
高校に入って、三週間が経った。ここにいていいのかな、という感覚がずっとある。別に誰かに直接何かをされているわけじゃない。ただ
「ねえ見た? ほら、あの子」
「見た見た。一人でお弁当食べてるしちょっと……ね」
くすくすと笑い声がした。でも私にはちゃんと聞こえてしまう。ちゃんと、わかってしまう。あの笑い声が私に向いていることくらい。声の主であろう人達の名前はもう覚えた。いや覚えてしまった、が正しい。高梨さんと、田辺さん。いわゆる一軍女子というやつだ。髪も丁寧に巻かれててスカートは心配になるくらい短い。入学式の次の日にはもう仲良くなっていた。早い。怖いくらい早い。
お弁当は一人で食べている。一人が嫌なわけじゃない、と自分に言い聞かせてきたけどそろそろ嘘くさくなってきた。誰かと話したい気持ちがゼロかと言われたらそんなことはない。ただ、どう話しかけていいかわからない。話しかけてもし引かれたら。もし変な間が生まれたら。そう考えると体が動かなくなる。
また笑い声がした。今度は私ことじゃないかもしれない。でも、たぶんそうだ。根拠はないけど空気でわかってしまう。こういう勘だけは昔から鋭くて自分でも嫌になる。残ってるおかずが何個かあったけど蓋を閉めて鞄に突っ込んだ。食べきれなかった卵焼きが潰れたけどどうでもよかった。どうせ家に帰ってから食べる気にもならない。
帰りのHRが終わって、席を立った。案の定、視線を感じた。どこからかは確認しなかった。確認したらその視線と目が合うかもしれないから。見ていないふりをして教室を出た。どこへ行くか、決めていたわけじゃない。帰ってもよかった。でも帰ったところで部屋で一人でいるだけだ。それはそれで別の種類の息苦しさがある。
渡り廊下を通りなんとなく足が向いた先が旧校舎だった。入学のときにもらった案内図に小さく書いてあったのを覚えていた。
“旧校舎は現在使用していません。立ち入りの際は職員室へ。“
そんな一文。でも職員室に申請している生徒なんて見たことがない。みんな興味がないか、初めから知らないんだと思う。私だって今日まで気にしたことがなかった。でも今日はなんとなくそっちに足が向いた。
渡り廊下を抜けると、急に空気がひんやりした。四月でも日の当たらない廊下は寒い。リノリウムの床が新校舎と少し違う色をしていた。くすんだ緑色。踏むと、かすかにきしんだ。
突き当たり。ドアに古びたプレートがかかっていた。
“図書室“
引き戸を横に引くと思ったより重くてガタンと音がした。思わず周りを確認したけど誰もいない。よかった。中に入るとまず匂いがした。埃と紙と木の匂い。埃がキツくて、少しむせた。口元を手で覆いながら、中を見渡した。
本棚が何列も並んでいた。背表紙が日焼けしてタイトルがところどころ読めなくなっている。窓から午後の光が斜めに差し込んで、埃がゆっくり舞っているのが見えた。そして窓際に古い木の椅子と机があった。たぶん、もともと司書の先生が使っていたものだと思う。座ってみようとして机が埃まみれなのに気づいた。鞄を置く気にならなくて持っていた除菌シートで机を拭いた。椅子も拭いた。床に落ちていたよくわからない紙くずを隅に寄せた。それくらいしかできなかったけどまあいっか。
せっかくだから何か読もうと思って本棚の背表紙を端から目で追った。タイトルが日焼けで薄くなっているものも多いけど読める範囲で探す。文庫本が多い。昭和っぽいタイトルのものや名前だけ聞いたことある古い小説。
一冊、引っ張り出した。ぱらぱらとめくると、紙が少し茶色くなっていて、匂いが強くなった。これはこれで、なんかいい。椅子に座ろうとしたとき。
「あれー? ここに誰かいるなんて、珍しいこともあるんだね」
心臓が跳ねた。
本を落としそうになって両手でなんとか抱きかかえた。声のした方向を見ると本棚の影から女の子が出てきた。同い年くらい、に見えた。制服を着ている。でもなんか、ちょっと違う?でもそんな違和感を考える余裕なんてなくてそれどころじゃなかった。
「…だ、だれ…ですか」
最後まで読んでいただきありがとうございます!
第1話、いかがだったでしょうか。
2人が出会ったのは偶然で、でも必然だったのかもしれないな、と書きながら思っていました。
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