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第20話 黒谷の魔女たち - 終章 黄金の月・あるいは赦しの味

同日 夜 金戒光明寺・庫裏裏庭


 煉瓦を積み上げて築城された即席の「天火(オーブン)」の前には、奇妙な静寂が漂っていた。


 雪雲が去った後の夜空には、凍てつくような月が懸かっている。


 その場を支配する空気は、巨砲の導火線に火を点じた後に耳を塞いで着弾を待つ砲兵の張り詰めた緊張感にも似ていたが、同時に、産室の外で我が子の産声を待つ父親のような、祈りにも似た温かさを孕んでいた。


 会津藩きっての知恵者、山本覚馬は、分厚い眼鏡越しに煉瓦の隙間から漏れる熱気(陽炎)を凝視し、懐中時計と睨めっこをしている。


 彼の日増しに衰えゆく視力は、もはや細かな文字を追うことは叶わない。だがその分、彼の肌は熱の微細な変化を感知し、その耳は薪が爆ぜる音と、炉内で沸き立つ湯の音で、燃焼状態を正確に読み取っていた。


 彼にとって、これは単なる菓子作りではない。比重の異なる液体と気泡を含んだ生地を、熱伝導の差を利用して分離・凝固させるという、南山の科学技術の実地試験であった。


「…炉内温度、安定。湯煎の水位、蒸発量計算通り」


 覚馬が低い声で呟く。


「…竹子、排気口(ダンパー)を二分の一閉鎖せよ。通気口を絞り、余熱で芯まで火を通すのだ。……決して焦がすな、敵(生地)は繊細ぞ」


「御意!」


 中野竹子は、真剣そのものの表情で、煉瓦の隙間に差し込んだ鉄板(破棄された鍋の蓋を加工したもの)を操作した。


 その手つきは、敵の城門を閉ざすかのように慎重かつ断固たるものであった。


 炉の中には、水を張った鉄の盆が置かれ、その湯の中に生地の入った空き缶が鎮座している。


 下半分は湯の熱で優しく蒸され、上半分は煉瓦の輻射熱で香ばしく焼かれる。この「湯煎焼き」こそが、プリンとカステラを共存させる唯一の秘策であった。


 その時である。


 閉ざされた煉瓦の隙間から、これまで千年の歴史を持つ京の都が、一度たりとも経験したことのない、異質の香気が漏れ出し始めたのは。


 それは、暴力的なまでに甘美な侵略であった。


 缶の底に敷かれた南山の砂糖が熱を受けて焦げる「カラメル」のほろ苦い香ばしさ。


 湯煎で温められた卵と練乳(ミルク)が醸し出す、濃厚なコクのある匂い。


 そして、上部で膨張を続けるカステラ生地から溢れ出る、小麦と「バニラ」の、妖艶でいてどこか母性的な甘い香り。


 その香りは、血と脂と、寺院の古びた線香の匂いが染み付いた黒谷の空気を、物理的に浄化していくようだった。


 殺伐とした戦時の空気が、一瞬にして、平和な団欒の記憶へと塗り替えられていく。


「……なんと」


 後方で見守っていた千重子が、思わず胸元を押さえた。


 その芳香を吸い込んだ瞬間、彼女の胸の奥がキュッと締め付けられたのだ。


 それは、会津の屋敷で子供たちを抱きしめた時の、あの乳臭くも温かい匂いに似ていた。あるいは、遠い昔、母に手を引かれて行った祭りの夜の、綿菓子の甘さにも。


「匂いだけで、心が溶けそうですわ。…まるで、子供の頃に見た極楽浄土の絵図のような香り…。これが、南山の…文明の香りなのですね」


 照姫もまた、うっとりと目を閉じていた。


 彼女の頬を、一筋の涙が伝う。この甘い香りが、閉じこもっている夫・容保の固く凍りついた心を、春の雪解けのように溶かしてくれる予感がしたからだ。


「時間だ…」


 覚馬が懐中時計をパチンと閉じた。


開門(オープン)!」


 号令と共に、竹子が耐熱布を巻いた手で、重い鉄扉を一気に引き開けた。


 ボワッ!


 もわり、と白い蒸気が、冬の夜気の中へと立ち上る。竹子は熱さを堪え、火箸を使って慎重に缶を取り出した。


「成功、でしょうか?」


 竹子が不安げに尋ねる。缶の上からは、狐色に焼けたカステラ生地が盛り上がっているのが見えるだけだ。その下に眠るはずの「秘宝」は、まだ見えない。


「ひっくり返してみねば分からん。比重の法則を信じろ。重きプリン液は下に沈み、軽きカステラ生地は上に浮く。さあ、皿へ」


 覚馬に促され、竹子は皿の上に缶を伏せた。


 コン、コン、と底を軽く叩く。


 緊張の一瞬。

 竹子がゆっくりと缶を引き上げる。


 ズルッ、ポチャッ。


 湿った音と共に、その全貌が露わになった。

 三人の女性の目が、限界まで見開かれた。


 「カステラ・プディング」


 それは、美しき二層の塔であった。

 上段(缶の底だった部分)には、琥珀色のカラメルソースを纏い、ぷるんと震える黄金色の「プリン」が。


 そして下段には、その湿り気を吸い込み、しっかりと土台を支えるスポンジ状の「カステラ」が。


 本来混ざり合うはずの二つの液体が、南山の科学(比重と熱管理)によって奇跡的に分離し、一つの菓子として結実していたのだ。


 琥珀色のソースが、黄金の肌を滑り落ちていく。

 それは、泥と汗にまみれた三人の女性と、一人の技術者が生み出した、食える宝石であった。


 京の市場を駆けずり回った千重子の足、すり鉢と格闘した竹子と照姫の腕、そして煉瓦を積んだ覚馬の知恵。それら全てが、この小さな二層の塊に凝縮されていた。


「……できた……」


 竹子が、へなへなとその場に座り込んだ。


 武者震いか、それとも空腹か、彼女の腹の虫が「グゥ」と小さく鳴いたが、誰もそれを笑う者はいなかった。誰もが、その圧倒的な「完成度」と言葉を超えた存在感に、ただただ見惚れていたからである。


          ◆


 その頃、本堂での長きにわたる軍議を終えた松平容保は、冷たい夜風が吹き抜ける渡り廊下を、規則正しい足音を響かせて歩いていた。


 彼の歩調に乱れはない。背筋も、会津武士の矜持そのもののようにピンと伸びている。まだ二十代の若さだ。幼少より鍛え上げた基礎体力は、この程度の激務で尽きるものではない——と、本人は信じていた。


 ただ、南山から贈られた洋装の軍服が、近頃やけに体に馴染まないことには気づいていた。かつては胸板に吸い付いていた生地が、今は少し浮いている。革帯ベルトの穴も一つ、いや二つほど緩くなっただろうか。体重にして一貫と数百匁(約五キロ)の減少。戦時下の指揮官としては、許容範囲内の消耗である。


(……家臣たちは騒ぎすぎだ。食事が喉を通らぬなど、ただの忙しさゆえのこと)


 容保は、眉間に刻まれた皺を指で揉みほぐした。


 周囲、特に江戸の勝海舟や、妻の照姫が寄せる過剰な心配は、彼には少々大袈裟に思えていた。


 心は折れてなどいない。京を守る。帝を守る。その使命感がある限り、己は倒れない。だが、その強すぎる精神力が、肉体からの悲鳴を無意識にかき消していることに、彼自身だけが気づいていなかった。


 頭は冴えているつもりだった。しかし、思考の端々に砂が噛んだような重さがある。眠りたいわけではない。ただ、少しだけ何も考えずに横たわりたい。それはまだ死への渇望と言う程のものでなく、疲労がもたらす脳の自衛本能であったが、そこまで疲れていることに自覚ができていないと言う事はとても危険なことだった。


 その時、冷涼な夜気の中に、異質な匂いが混じった。


「……ん?」


 容保は足を止めた。


 それは、殺伐とした黒谷の本陣には似つかわしくない、甘く、ふくよかな香りだった。記憶の底にある、母の懐のような。あるいは、遠い異国の陽だまりのような。


 その香りを吸い込んだ瞬間、彼の腹の底で、何かが「ギュルリ」と小さく、しかし明確に鳴った。


(……なんだ、これは)


 数日間、空腹など忘れていたはずの胃袋が、その香りに反応して猛烈に活動を始めたのだ。


 自分は腹が減っていたのか?


 その単純な事実に、容保は初めて気づかされたような気がした。


 誘われるように、彼は匂いの元——妻・照姫の居室へと足を向けた。障子を開けると、そこには、厳格な本陣の空気とは隔絶された、奇妙な空間が広がっていた。


 部屋の中央には、粉まみれになり、髪を乱し、しかしどこか誇らしげな三人の女性たち——照姫、千重子、竹子——が正座していた。普段は奥ゆかしく控えている彼女たちが、まるで一戦を交えた後の戦士のような顔をしている。


 そして卓上には、湯気を立てる黄金色の菓子と、黒い飲み物が置かれている。


「……これは、一体?」


 容保が問うと、照姫はすぐに立ち上がり、夫を迎えた。彼女の目には、容保が「大袈裟だ」と感じていたあの深い憂いの色はなく、代わりに慈愛と、少しの悪戯心が宿っていた。


「お帰りなさいませ、殿。少し、お痩せになりましたね」


 照姫は、容保の軍服のわずかな隙間に触れ、微笑んだ。


その手は温かく、甘いバニラの香りがした。


「これは、私たちが殿のために焼いた、南山の菓子にございます。殿は『大丈夫だ』と仰いますが、体は正直です。どうか私たちと共に、この『文明の味』を毒見しては頂けませんか?」


「余は、そこまで弱ってはいないつもりだが」


 容保は苦笑しつつも、抗いがたい引力に引かれるように座卓の前に座った。


 目の前にあるのは、湯気を立てる四角い黄金色の物体。よく見れば、それは二層になっていた。上段は艶やかな琥珀色の蜜を纏った滑らかなプリン、下段はどっしりとした気泡を含む焼き菓子のカステラである。


 竹子が、緊張した手つきでナイフを入れる。


 刃は、上の層を抵抗なくすぅと通り抜け、下の層に達すると、サクッ、という微かな感触と共に、しっとりとしたスポンジを断ち切った。


 切り分けられた断面から、琥珀色のカラメルソースがとろりと滲み出し、皿の上に黄金の泉を作る。その湯気が、容保の鼻腔をくすぐり、脳髄を甘く痺れさせる。


「…頂こう」


 彼はフォークを手に取り、その二層が重なった欠片を、掬い上げるようにして口に運んだ。


 瞬間。


 口の中に広がったのは、強烈なまでの「熱量(カロリー)」と、とろけるような「優しさ」の二重奏であった。


 舌の上に乗せた途端、上の層——プリン——は、噛むよりも早く淡雪のように崩れ、濃厚な卵と牛乳のコクを口いっぱいに広げる。


 続いて、下の層——カステラ——を噛み締めれば、気泡の中にたっぷりと吸い込まれていたカラメルソースが、じゅわりと溢れ出した。南山の砂糖が焦げたほろ苦さと、練乳の暴力的なまでの甘み。相反する二つの味が、熱という仲人の手によって完璧に調和し、疲労した脳に即座にブドウ糖の慈雨を降らせていく。


 そして、鼻に抜けるバニラの芳醇な香り。


 それは張り詰めていた交感神経を強制的に緩ませる、香りの麻酔薬だった。


 美味い、などという言葉では追いつかない。咀嚼するたびに、枯渇しかけていた身体の燃料タンクが、一気に満たされていくのが分かった。そのあまりの衝撃に、容保の思考が一瞬、停止した。


「…ああ、そうか」


 容保は、二口目を運びながら、独り言のように呟いた。


「…余は、腹が減っていたのだな」


 その言葉は、驚くほど素直に口をついて出た。


 自分が思っていた以上に、体は悲鳴を上げていた。


 自分が信じていた以上に、心は渇いていた。


 妻や家臣たちが案じていたのは、この「無自覚の摩耗」だったのか。


 とろけるような甘さが喉を通るたびに、鎧のように固めていた意地や強がりが、はらり、はらりと剥がれ落ちていく。


「……甘いな」


 容保の目尻が、ふっと下がった。

 それは、京に来て以来、誰も見たことのない、憑き物が落ちたような穏やかな表情だった。


「…甘い。そして、温かい」


 彼は、黙々と、しかしその食感と香りを慈しむように、皿の上の黄金を平らげた。


 胃袋が温まると同時に、指先まで血が巡り、体の芯から力が湧いてくる。それは、精神論ではない、物理的なエネルギーの充填であった。


「美味しいですか、殿」


 照姫が、安堵の息と共に尋ねる。


「ああ。これほど美味いものを、余は食べたことがない。生き返る心地だ」


 容保は、空になった皿を見つめ、力強く頷いた。


 その瞳には、先ほどまでの疲労の陰りはなく、指導者としての本来の鋭さと、人間としての温かみが戻っていた。


 彼は、粉まみれの三人の女性たちを見回し、深く頭を下げた。


「礼を言う。そなたたちの懸念、正しかったようだ。余は少々、無理をしていたらしい」


 その素直な言葉に、千重子と竹子は顔を見合わせ、目元を拭った。主君が己の弱さを認めること。それは強さの証でもある。


 照姫は嬉しそうに微笑み、大久保翁の練乳をたっぷりと入れたコーヒーのカップを差し出した。


「お飲みください、殿。これは、明日を戦うための、黒く甘い薬湯にございます」


 容保はそれを受け取り、一口すすった。


 苦味と甘さがが、口に残る甘さを更に加速させ、意識を覚醒させる。

 

 自分はまだ戦える。


 だが、それは孤独な戦いではない。この黒谷の奥には、自分自身の体よりも深く自分を理解し、支えてくれる、頼もしき「兵站部隊」が控えているのだ。


 容保はカップから立ち上る湯気の向こうに、明日への希望と、妻への感謝を見ていた。


     ◆


数日後 照姫の居室


 騒動から数日が過ぎた昼下がり。


 柔らかな陽光が差し込む照姫の部屋では、再び茶会が催されていた。ただし、その卓を囲む参加者たちの様子は、前回の優雅なそれとは些か異なっていた。 


「…いたた」


 竹子が、茶碗を持ち上げようとして、顔をしかめた。その手は微かに震えている。


「情けない話ですが、右腕が筋肉痛で上がりません。カステラ作りが、これほど過酷な武芸だとは思いも寄りませんでした。千回の素振りよりも、あの三十分の撹拌かくはんの方が、よほど腕に堪えます」


「私もですわ、竹子さん」


 千重子も苦笑しながら、自身のふくらはぎをさすった。


「錦市場を駆け回り、重い荷を担いで歩いたせいで、足が棒のようです。ですが、不思議と心地よい痛みですわね。これは、戦い抜いた者だけが得られる勲章のようなものですから」


 卓上には、成功したカステラの残りと、再び淹れられた珈琲。


 窓の外には、まだ雪が残っているが、軒先から滴る雫の音は軽やかで、差し込む日差しは確かに春の色を帯びていた。 


 容保はあれから、少しずつだが、しかし確実に食事を摂れるようになったという。


 南山の菓子がもたらした強烈な「熱量カロリー」と「幸福感」は、彼の萎縮していた胃袋のリハビリテーションとして劇的に機能した。今朝の膳では、白粥に梅干し、そして焼き魚といった普通の食事を、「美味い」と言って完食したとの報告が届いている。


 主君の顔色に赤みが戻ると同時に、黒谷の本陣全体を覆っていた陰鬱な空気もまた、霧が晴れるように薄らいでいた。


「私たち、気づきましたの」


 照姫が、湯気の立つ白磁のカップを見つめながら、ぽつりと呟いた。


「文明とは、人を殺す大砲や、時間を冷徹に刻む時計のことだと思っておりました。ですが、卵を泡立てて、人を笑顔にするのもまた、文明なのですね」


「左様でございます」


 竹子が、真面目な顔で深く頷く。


「文明とか技術とか、つまりは力。力そのものに善悪はありません。剣と同じです。それを人を殺める凶器として使うか、あるいは人を守り生かす『活人剣』として使うか。それは、使い手である我々の心一つなのです」


「殿の顔色が良くなられたのが、何よりの証拠ですわ」


 千重子が、カステラの欠片を小さくちぎり、愛おしそうに口に運んだ。


「私たちは、ただ屋敷の奥で震えて、男たちの帰りを待つだけの番犬ではありませんでした。…この甘い毒すらも使いこなし、美味しい菓子を焼いて、男たちの背中を食で支える…そう、私たちは黒谷の魔女になりましょう」


 三人は顔を見合わせ、声を上げて笑った。


 その笑い声は、かつてのような、行く末を案じる乾いた諦念の響きではない。大地に深く根を張った大樹のような、しなやかで図太い響きを持っていた。


 窓の外を吹き抜ける風は、未だ血と硝煙、そして時代の軋むような不穏な音を孕んでいる。


 薩長や幕府、そして朝廷。巨大な政治の歯車が今後どのように回転し、会津という小舟をどの方角へ——あるいは、どのような過酷な荒波の果てへと流していくのか、それは神ならぬ身には知る由もない。


 だが、彼女たちの瞳に、もはや以前のような寄る辺なき不安の色はなかった。


 煉瓦を積み上げて熱を閉じ込め、泥にまみれて空き缶を拾い、腕がちぎれるほどに卵白を打ち据えたこの数日間。その滑稽で、しかし真剣極まる闘争が、彼女たちの腹の底に、ある種の図太い「覚悟」を植え付けていたからだ。


 たとえ天地がひっくり返ろうとも、たとえ明日、戦火に焼かれようとも。


 鍋と釜、そして知恵さえあれば、私たちはどこでだって瓦礫の中から「温かい日常」を焼き上げることができる。


 それは、武士の娘としての矜持を超えた、より根源的で、したたかな「生活者としての自信」であった。


 ふと、照姫の視線が、窓辺に置かれた小さな鉢植えに止まった。それは、卵と交換した時に余った「南山の空き缶」の底に穴を開け、土を入れて再利用した即席の植木鉢だ。


 その土の中から、千重子が市場の片隅で拾ってきた名もなき球根が、小さな緑色の芽を出していた。


「……見て。芽が出ましたよ」


 照姫が指差す。


 決して錆びることのない南山のブリキ缶と、千年の歴史を吸った京の土。そのハイブリッドな環境の中で、新しい命が息吹いている。


「春になれば、どんな花が咲くのでしょうね」


「きっと、見たこともないような、強くて美しい花ですわ」


 三人の女性は、その小さな緑に、自分たちの、そして会津の未来を重ねていた。


 どんな冬が来ようとも、必ず春は来る。そして、根さえ残っていれば、花は何度でも咲くのだ。甘いバニラの香りが、確かな春の予感と共に、いつまでも部屋に漂っていた。





〈第20話了〉



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