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03-4.

 そうして、翌日の朝から作業にかかった。


 もちろん、私が作ろうとしているのはデニッシュだ。


 まず、バターをのし棒で伸ばさないといけないので、その台にするツルリとした石の板を冷蔵保存庫(クール・ストレージ)に入れて一晩冷やしておいた。パン生地に挟み込むためのバターも一緒にだ。


 パン生地と混ぜるバターは朝から室温に温めておく。


 冷蔵庫で冷やした台を取りだす。打ち粉をして、バターは冷蔵庫から出したての冷たいものを使いますっと……。薄く長く叩いて、三つ折りにしてから四角に成形します。……って、ちょっと待って、硬い! つらい! そもそもなかなか薄く長くなんかならないじゃない!


「相変わらず、パイ生地作りは大変だわ」


 私はつい、愚痴をこぼす。


 でも、脳裏にケットシーたちの美味しそうな顔を脳裏に浮かべた。


「あの子たちに喜んでほしいものね」


 うん! と気合いを入れ直して、バターに向かい合う。


 気合いを入れ直して、手際よくバターの冷たさを維持しながら成形した。


「じゃあこれは、冷蔵庫に入れておきますか」


 私は冷蔵保存庫(クール・ストレージ)に、台ごとバターをしまった。


 次は生地ね。


 ボウルに小麦粉と砂糖、塩を入れてよく混ぜる。で、室温に温めておいた方のバターを入れてまたよく混ぜる。で、そこに少しの牛乳とお水、卵、酵母水をよく混ぜたものを入れて、今度は手早く混ぜます……と。


 粉けがなくなるまで混ぜて、台の上において丸くまとめる。


 表面がかわかないように濡れたふきんを置いたら、室温で一時間くらい発酵させる。


 ──パン生地作りって、本当に、この待つ時間がいっぱいかかるわよね。


 やっと発酵が終わったら、ガス抜きして少し平らにして、湿った布地でくるんで冷蔵庫で一晩休ませる。


 続きは明日!


 ──長いわ!




次の日、私はいつもよりもかなり早起きをした。太陽もまだ昇っていない。


デニッシュをお昼にあの子たちに食べさせてあげたかったからだ。


 まずはいつでも焼けるようにオーブンの準備をする。


 昨日伸ばしたバターと同じ大きさに、生地を伸ばしていく。そして、生地の上にずらして、ひし形にバターを置く。


 生地でしっかりバターを包んで、長さを三倍に伸ばす。


 三つ折りで折りたたんで、角度を変えてまた伸ばす……を繰り返して、生地はやっと完成。


 ──結構大変なのよね。


 心の中で独りごちる。


 折り込んだ生地は、しばらく休ませてあげる。


 生地を休ませている間に、卵を使ってカスタードクリームを作って置いて、冷蔵庫で冷やしておいた。


 休ませて置いた生地を取り出して、生地を四角く九等分に切っていく。それを、カップに入れて、生地がお椀型に弛むようにする。


 生地をぜーんぶオーブンの天板に並べたら、またしばらく常温で休ませる。


 湿った布地をかけるのを忘れずに。


  ベンチタイムの間に、ケットシーたちと手軽な朝食を食べる。台所がごちゃごちゃしているので、何をしているのだろうと気になる様子だった。


 朝食に使ったお皿などを食洗機(ゲシュルスプラー)に放り込んでしまうと、作業再開だ。


 溶き卵を刷毛で表面に塗って、やっとオーブンに投入する。


「うわあ! 良い匂い!」


 焼けるのは、生地の待ち時間に比べたらあっという間だ。


 ふんわりとお椀型に膨らむ生地。つやつやとしたきつね色に色づいていく表面。漂うバターの香り。


 ミトンを持って天板を取り出し、鍋敷きの上に置く。そして粗熱が取れるまでそのままにしておいた。


 粗熱が取れたら作業再開。


 まずはイチゴジャムのデニッシュ。


 お椀型に焼き上がった底の部分にカスタードクリームを敷く。そして、その上にイチゴジャムを載せ、飾りに半分に切った生のフレッシュなイチゴを一個分飾る。そして、より色鮮やかにするためと、イチゴの甘みを引き出させるためにミントの葉を一枚中央に飾った。


 焼き上がったパイの三分の一をイチゴジャムのデニッシュに仕上げてしまうと、次は桃のコンポートのデニッシュだ。


 底にカスタードクリームを敷くのは一緒。違うのはそこに桃のコンポートを載せて、さらに、今度はミントではなくディルを飾る。ディルの爽やかさが桃の香りを引き立ててくれる。


 こうして、焼き上げたパイの型を、イチゴと桃とで三分の二使う。残りはブルーベリージャムだ。イチゴ、桃と同様の作業でカスタードクリームとジャムを載せ、イチゴジャム同様ミントを飾る。こうして残りの三分の一のデニッシュも完成した。


 私は時計を見る。ちょうどお昼ご飯にしても良い頃合いだ。


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