03-3.
そうしてテーブルに駆けてきた二匹が目をまん丸にした。驚きの表情をしたままで席に着く。
「わぁ!」
「これなぁに?」
目はテーブルに置かれた惣菜パンに釘付けだ。
「パン?」
「でも、パンはパンだけで、間に別の食べ物は挟まっていないだろう?」
二匹して首を交互に傾げている。
そんな不思議がる二匹に私が答える。
「これは惣菜パンと言います。私が考案しました」
──正確には、前世にあったものなんだけれどね。そこはご愛敬。
「「惣菜パン」」
二匹が復唱する。
「お惣菜を間に挟み込んだパンを考案してみたのよ。これが、焼きそばパン、こっちはコロッケパン、そしてこれがハンバーガー」
カインは焼きそばパン、アベルはコロッケパンに手を伸ばす。
「「んっ!」」
大きな口を開けて頬張ると、二匹が同時に驚いたように目をまん丸にする。おひげも好奇心をそそられたのか前のめり気味だ。
きちんと咀嚼してゴクンと飲み込んだあと、興奮気味にしゃべり出す。
「パンがふわふわだ! 簡単にかみ切れるよ!」
「これって本当にパンなの?」
「間に入っているお惣菜ってやつも、クリスティーニャが考案したの? ボク、この焼きそば、ってやつだーい好きにゃ!」
「ボクもこっちのコロッケ大好きにゃ!」
いつもの固いパンと違うことに驚いた二匹に、次々と質問や賞賛を浴びせられる。
「ふふ。美味しかったみたいね?」
「「にゃあ!」」
首を縦にしながら、二口目に挑みかかる二匹たち。そうして、もぐもぐと良く食べて、次にと手を伸ばす。二匹は宙で目を合わせる。そして、頷く。そうして二匹が揃って手を伸ばしたのはハンバーガーだった。
「この、挟まっている茶色いものは見たことがないニャン」
「これはなんだニャン」
そう言って、揃ってパクリと口にする。ビビビッと二匹の尻尾が付け根から先端へと膨らんだ。
「これはなんだニャン! お肉のような味がするけど、お肉みたいに固くないニャン!」
「パクッとすると、じゅわっと肉汁が口の中にじゅわっとあふれてくるニャン!」
二匹はハンバーガーが相当気に入ったのだろう。すごい勢いで平らげていく。
「それはね。ハンバーグ、ってものを中に挟んだのよ」
私もハンバーグを食べながら、かいつまんで説明をする。
「「ハンバーグ?」」
この世界には、ハンバーグはないから、二匹が不思議そうに首を傾げた。満足そうに、両前足で口元を毛繕いしながら。
「そう。お肉をミンチになるまでたたいてね、卵とか、タマネギとか、パン粉を入れて肉だねっていうものを作るの。それを焼いたものがハンバーグなのよ。普通に焼いただけのお肉と違って、柔らかくて美味しかったでしょう?」
「「にゃあ!」」
二匹は、イエスと言う意味で鳴いた。
「これは美味しいニャン」
「また作ると良いニャン」
そう言いながら、残りの一個ずつのパンに手を伸ばす。そして、美味しそうに頬張った。私もそれを見ながら三つのパンを平らげる。そして、おいてあったミルクを飲む。
ケットシーたちもパンを食べ終え、ごくごくとミルクを飲み干した。
「ああ、美味しかったニャン!」
「クリスティーニャはレシピ考案の天才なのニャン!」
──その言葉は、前世の模倣なので、素直に受け止められないのだけれどね。
でも、おちびなケットシーたちが美味しそうにして喜んでくれるのは素直にうれしかった。
「あさってにでも、今までに食べたことのないようなパンをお昼に出すわ。楽しみにしていてね」
すると。
「「わぁい!」」
とケットシーたちが両前足を挙げて喜ぶのだった。
その日私は、空いた時間に、デニッシュに載せる桃のコンポートとイチゴジャム、ブルーベリージャムを作って置いた。




