大事な幼なじみ
栞はどういう見た目をしてるのでしょう…
栞の部屋を出て、彩十は一階のリビングで栞が降りてくるのを待った。
しかし、栞は一向に降りてこない。
栞を待つこと約10分。
「はぁ…まったく、」
彩十はもう一度、栞の部屋に向かった。
「入るぞ」
しっかり栞の部屋をノックして、ドアを開けた。
そこにはまだ布団の上に座っている栞がいた。
驚きを隠せない表情をして固まっている。
「ねぇ……」
「ん?」
「ないの……」
「え?」
「色が…見えないの…」
「はぁ?」
彩十はまだ、栞が何を言ってるのかよくわからなかった。
けど、冗談を言っているようには見えなかった。
「ほんとだって…!」
栞が信じてほしいと言わんばかりに、こちらを向いて言ってくる。
「わかった、わかった、なんか心当たりとかはないのか?ストレスとか、ストレスの原因とか」
何となくストレスのせいにして聞いてみる。
「ない!」
まさかの即答だ。
「まじか…とりあえず病院行くか」
さすがにストレスが全く無いことはないだろうと思いつつ、いつまでこうしてても仕方がない。
早いうちに栞と一緒に病院に行くことにした。
彩十と栞は高校を休み、二人でバスに乗り、眼科へ向かっていた。彩十の母親は仕事で海外に、父親は5年程前に亡くなった。そのため彩十は栞と2人暮し状態なのだ。
「普通に考えて眼科だよな?」
「目だしね、まずは眼科に行くべきじゃない?」
「まずはって…眼科がだめならどこに行けばいいんだよ」
「んー、わかんない」
他人事のように言ってくるが、今病院に向かっている理由は栞にあるのだ。
栞のために向かっているのだ。
約5時間後…
「あぁ〜…疲れたぁ…」
「ほんっと、もう無理」
二人は家についてすぐ玄関で崩れ落ちるように座った。
疲れ果てていた。
結局、眼科に行ってみたが何もわからず。院長に県内で一番の大学病院を紹介され行ってみたが
大学病院でも詳しい事は、わからず。
一種の「色覚異常」と診断されたが、「色覚異常」をネットで調べてみると栞の症状とはかなり違うように思えた。
だから「一種の」が付くのだろうけど、これはそもそも「色覚異常」の類なのか?
「…今更なんだけど、ほんとにすべてモノクロなのか?」
「白黒だよ、歴史の教科書とかで出てくる写真のような感じかな。ネットで見たりするでしょ?白黒の動画とか、そんな感じでもある」
モノクロの動画を見ているような感じだと栞は教えてくれた。
「僕には想像できないなぁ…」
「私だってできないよ、見えてるけど」
冗談を言うほどの余裕はあるようだ。
「はは……はぁ、もう疲れた、さっさと飯作るかぁ…」
ため息がこぼれる。疲れ果ててこのまま寝てしまいたいくらいだった。けれど、ご飯を作らないわけには行かないため、残ってるわずかな力で起き上がり台所に向かった。
今日は手っ取り早くカレーを作ることにした。こういう日のために、彩十はルゥを常備している。
「私も手伝う〜」
栞が玄関から台所にゆっくり、一歩一歩とやってくる。
「って歩けるのか?」
「少し慣れたからこのくらいの距離なら余裕余裕」
余裕そうには見えない歩き方で台所までやってきた。
「おー…って何これ?」
栞はまな板の上にある野菜達を見たが、さすがに何かわからなかった。
「じゃがいもと玉ねぎ、人参はなかった」
「私、切ろうか?」
「さすがに無理だろ、というかやめてくれ」
今の状態で包丁なんて使ったらどうなるか、想像しなくてもわかることだ。
「私のこと心配してくれてるの?」
栞がニヤニヤしながら聞いてくる。
「そりゃしてるに決まってるでしょ、大事な幼なじみなんだから」
大事な幼なじみを怪我させるわけにはいかない。当たり前のことだ。
「えへへ…照れるな…//」
なぜ栞が照れてるのか彩十にはわからなかった。
これは何系のジャンルになるのでしょうか…?