色が消えた
言うほど全く残酷では無いと思います
「突然、色が消えた。」
ある11月中旬。
僕は幼なじみと一緒に買い物に来ていた。
「栞、家の洗顔まだあったっけ?」
「昨日、私が買ってきたばっかりなんですけど」
栞が笑いながら教えてくれた。
彼女の名前は「寺沢 栞」。
小学校低学年からの付き合いで、同じ高校に通う幼なじみだ。
栞の家庭の事情により、4月から家に住むことになったのだ。
「あとは、何が足りない?」
「こんなもんじゃない?」
「じゃあ会計するか」
会計を済ませ、スーパーを後にした。
外の空気は冷え、もうすぐ冬本番だ。
「この前ハロウィンが終わったばっかりなのに、もうクリスマスなんだね」
栞が街中のクリスマスの飾り付けを目にしながら言う。
「クリスマスが終わったら休む暇もなくお正月、日本の冬は大変だな」
「あ、クリスマスツリーだ」
栞が立ち止まって指した方向には、巨大なクリスマスツリーがあった。
「相変わらずデケェなぁ…」
「うわぁ…綺麗…」
「いつもと同じじゃねーか?」
「いつもと同じ色でも、去年と今年では全然違うもんね」
栞の考え方は豊かだ。
「どう違うんだよ?」
どうしても、去年のと何が違うのか分からなかったから、少しいじわるく栞に聞いてみた。
「え〜?んー…、、、」
「わからないんだな」
「わかるもん!わかるけど、、言葉にできないだけだもん、」
栞は頬を膨らませながら恥ずかしそうに下を向いていた。
「あー、寒。うわぁ、これから更に冷えるって、はよ帰ろ」
スマホの画面を見ると、時刻は18時過ぎになっていた。
天気予報を見る感じ、これから更に冷えるようだ。
「あー!待ってー!」
言いながら栞が駆け足でついてきた。
そうして家に帰った。
そんな日々を過ごしていた。
ある日の朝。
「栞〜朝だぞ、そろそろ起きないと遅刻するぞ」
いつものように栞を起こしに2階に上がった。
「入るぞ〜」
しっかりノックをしてから栞の部屋に入った。
「ん、んん〜……」
栞はまだ布団で目を瞑っていた。
「まったく…ほら、起きろ」
栞の布団から無理やり毛布を剥ぎ取った。
「んぁ、寒いぃ…」
栞が目を擦る。
「もぉ…彩十ってば、、、?…」
栞が強く目を擦る。
「どうした、栞?」
彩十は驚いたような顔をした栞に、問いかけた。
「あれ、、、色が…?」
栞の世界から「色」が消えた。
なんの前触れも無く「色」が消えた。
今まで見えていた「赤」や「青」、「黄」も「緑」も栞の世界から消えてしまった。
残ったのは「白」と「黒」だけ。
「はぁ…?」
そんなことを知る由もない僕は、まだ寝ぼけているのかと思い下に降りた。