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39話 レイチェル、気付く

「そ、それがでやすね……そのでやすね……シュルトワの騎士だと名乗ってるでやんすよ」


 ハッサンさんの慌て方は尋常ではありません。

 いくら、騎士……それもシュルトワ王国の者が現れたにしてもこの慌てようは只事ではないようです。

 何が起きたのでしょう。


「聖女様、お願い出来ますかな」

「え? は、はい。分かりました」


 イブン老はハッサンさんの言葉と態度で全てを察したというのでしょうか。

 やはり、凄いお方です。


「姐さん、すんませんでやすう!」

「あ、あぁ!?」


 ハッサンさんに腕を引っ張られて、慌ただしく部屋を出て行くことになりました。

 ハッサンさんは大男で見た目通りの力のある方。

 わたしは小娘に過ぎません。

 ちょっと普通の人よりも力が強いかもしれませんが、大したことではありません。


 そんなわたしですから、半ば引きずられるような状態になっていたのも仕方のない事です。

 でも、今は緊急事態。

 仕方がないのです。

 それにしても、どうして、こんなにも慌ただしいのでしょうか?


「あの……ハッサンさん?」

「なんでやんす?」

「こちらの方がそうですか?」


 引きずられるまま、連れてこられたのは集落の中心部に位置する広場でした。

 そこに動かすことすら、出来ないのでしょうか。

 毛布などを敷き、寝かせられていたのは見覚えのある男性でした。


「ペドロさん……」


 わたしを砂漠まで護衛してくれたのが、親切な若い衛兵さんB改めペドロさんでした。

 ペドロさんは、顔色が悪く、苦しそうな表情を浮かべています。

 額には脂汗が浮かんでおり、腕や足にも裂傷が見られました。

 しかも傷の周囲が紫色に変色しているようです。


「これは……まさか!?」

「そうでやす! 毒でやんすよ!」

「毒!?」

「間違いないでやす。毒でやんす!」

「どうすればいいんでしょう」

「それは……っ!」


 ハッサンさんは口ごもりながら、わたしの顔を見つめてきました。


「聖女様なら! 聖女様なら、治せるでやんす!」

「えっ!? わたしがですか?」

「頼むでやんす! このままじゃ、こいつは死んじまうでやんすよ!」

「わ、わかりました。とにかく、やってみます」


 わたしはペドロさんの傍に膝をつき、彼の手を取りました。

 そして、目を閉じて意識を集中させます。

 見えます。

 すると、身体に何か、熱を帯びた力のようなものが流れ込んできました。

 これは一体?

 魔力?

 いいえ、違います。

 これが毒……?

 いえ、違う。

 毒ではない。

 もっと別の……呪い?


(ほど)いて!」


 黒く、禍々しい蛇のような紐がペドロさんの体を締め付けているイメージが頭の中にふと湧いてきました。

 紐だったら、解けばいいのかしら?


 あやとりをする要領でぎゅうぎゅうに編み込まれた紐を解いていく様子をイメージとして、思い浮かべます。

 その瞬間、ペドロさんの全身を淡い光が包み込みました。

 光はすぐに消えてしまいましたが、確信がありました。


「これで大丈夫だと思いますけど」




 ペドロさんの意識が戻ったのはそれから、二日後のことでした。


「聖女様のお陰で助かりました。本当にありがとうございます」

「いえ、お礼なんて。困った時はお互いさまですわ。それに、わたしは当然のことをしただけです」


 顔色も大分、良くなったようですがまだ、起き上がることが出来ないのか、ベッドに寝たままです。


「それでも、感謝の気持ちを伝えたかったのです。ところで……」

「はい。どうしました?」

「ここはどこなんでしょう? 自分は確か、砂漠にいたはずなんですが。気が付いたら、ここにいまして」

「あぁ、それはですね」


 わたしはペドロさんにこれまでの経緯を説明することにしました。

 砂漠で倒れていたこと。

 砂漠の民が発見し、集落まで運んだこと。

 わたしがこの砂漠の民の集落に御厄介になっていること。

 ペドロさんは事実を一つ一つ噛み締めるように神妙な顔をして、聞いてらっしゃいます。


「そうだったのですか……しかし、聖女様がここにおられたとは何たる、僥倖!」

「は、はい?」


 どういうことでしょう?

 まさか、わたしのことを探していたのかしら。

 ペドロさんの痛々しい姿にも色々と考えなくてはいけませんし、何よりも気になるのは呪いです。

 あの禍々しくも黒い気は……。


「聖女様、魔王が復活しました」


 ペドロさんがようやく絞り出すように呟いた言葉はわたしの予想するものと同じだったのです。

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