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27話 災厄を呼ぶ浄化の炎

(三人称視点)


 時は少々、遡る。

 それは『砂漠の民』の集落に最凶の捕食者が近づく、ちょっと前のことである。


 かつて、その街並みの美しさと王城の壮麗な威容で知られた王都が僅かな期間で見る影もなくなっていた。

 目抜き通りに木霊するのは威勢のいい商いの声でもなければ、元気に走り回る子供の声でもない。

 まるで生きとし生ける者を恨むかのように声を上げる動く死者達の怨嗟の声だった。

 責め苦にでもあっているように苦し気に呻き声を上げながら、ゆっくりと歩みを進める『ゾンビ』の群れが次々と放たれる火矢の前に一体、また一体と灰燼に帰していく。

 腐りはてた肉が削がれ、焼かれていく様は凄惨そのものだった。

 王命に従っている射手の中にはそのあまりの光景に堪え切れず、吐瀉する者の方が多かったほどだ。


 王城の一室で城下の凄惨な光景を鏡で見つめる一人の貴公子の姿がある。

 銀糸のように細やかで美しい白銀の髪が顔にかかるのも一切、気にせず、一心に見つめていた。

 こころなし、その唇が軽く弧を描いている。


 あの子は中々、どうして面白いことを考える。

 『ゾンビ』と名付けたのか。

 しかも燃やすのか。

 何て、面白いことをするんだ。

 貴公子――ビセンテは心の底から、湧き上がる愉悦を抑え切れない。


 人とは何と愚かな生き物なのだろう。

 姉マリベルと同じ、紫水晶(アメジスト)の色をした瞳が僅かに揺らぎ、まるで血に染まったように一瞬、赤くなった。


「ああ。偉大なる主よ。間も無くです。偉大な貴方の御心のままに……」


 ビセンテが感極まったように天を仰ぐ。

 鏡は未だ、城下の光景を映していた。

 紅蓮の炎が魔物の舌のように天を焦がしていた。

 まるで不浄なるものを清めるように燃え盛る赤い炎とともに立ち上る煙はとても不快な色をしている。


 空高く、上がっていく煙は不安だけではなく、さらなる恐怖を呼び起こすことになろうとは……。

 『燃やす』ことを提案したヒメナは知る由もなかったのである。

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