表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/47

21話 幼き天使に忍び寄る影

「帰りましょう」


 オアシスでの作業を終え、わたしとアーヤは帰路につきます。

 作業と言っても泉の水を小さな壺に汲むだけ。

 そして、わたしが水に祈りを捧げるだけでいいのですから。


 今回はアーヤがどうしても付いていきたいと駄々をこねるので一緒に来たのです。

 しかし、砂漠の夜は冷えます。

 昼間との寒暖差が激しく、油断すると体調を崩しそうになるほど、過酷な環境です。

 とはいえ、これでも大分、緩和されたと聞きました。

 これも周囲の土地がどんどん緑地化されているお陰だと皆さんに感謝されるのですが、わたしは特に何もしていないのですけど?


「ふぁ~」

「アーヤ、眠いの?」


 疑問を感じ、ちょっと考え事をしたせいでアーヤの表情の僅かな変化に気付くのが遅れるところでした。


「うん……ちょっとだけ」

「もうすぐ着くから頑張ってね」

「んー」


 目を擦りながら返事をするアーヤの手を引きながら家路を急ぎました。

 彼女の様子が単に眠いだけのように見えなかったからです。

 胸騒ぎがします……。


 そして、それは的中していました。

 家に着き、ベッドに入った途端、彼女は眠りに落ちてしまいました。

 呼吸と心拍数は正常なようです。

 医術にも詳しいイブン老に診ていただいたところ、命に関わるような事態ではないと仰ったのですが、彼は何かを隠しているようにも見えます。


 だから、心配です。

 何かの病なのでしょうか……。




 翌日になってもアーヤの様子に変化はありません。

 相変わらず、ベッドに寝たきりで動いていません。

 昨日と同じ症状のままなのです。

 やはり、これはおかしいと思い、イブン老に相談したところ、少し難しい顔をされました。


「聖女様には話しておいた方が良いかもしれませぬな……」


 そう言ってから、彼が語りだした内容は驚くべきものでした。

 アーニャの身体には過剰とも言えるほどの魔力が蓄積されているらしいのです。

 本来は時間をかけ、自然に魔力が消費されることで蓄積されることはないものだとか。

 ところが彼女には心臓に先天的な病を持っていた為、身体に負荷がかかることで魔力の消費が滞り、急激に増えてしまった。

 そして、蓄積した魔力により、生命力が削られていたのです。


 つまり、このままでは遠からず死に至る……。

 そんな馬鹿なことがあって、良いのでしょうか。

 わたしは怒りに打ち震えました。

 一人苦しむアーヤに何もしてあげられない己の無力さにです。

 何故、彼女のように幼い命がこのような仕打ちを受けねばならないのでしょう。


「落ち着かれよ、聖女様」

「しかし、イブン老……落ち着いている場合ではありません!」

「手立てはあるのですじゃ」


 居ても立っても居られないわたしをイブン老は窘めるように落ち着いた声で諭してくれました。


「えっ!?︎ それは本当なのですか?」

「はい。ただ、それには聖女様のお力が必要ですじゃ……」

「わたしに出来ることなら、何でも致します」




 イブン老が教えてくれた手立ては実に簡単な物でした。

 必要なことはたったの二つ。

 一つ目はわたしが祈りを捧げた泉の水をアーヤに飲ませること。

 二つ目は彼女の傍らでその手を握り、一晩一緒に過ごすこと。

 これだけでいいというのです。


 本当にこれだけでアーヤが助かるのでしょうか?

 他に方法はないのでしょうか?

 わたしが本当に聖女であれば、奇跡を起こせないのでしょうか?


「聖女様……どうか、頼みましたぞ」

「分かりました……」


 わたしが本当に聖女ならば……。

 アーヤをどうか、助けてください……。

 どうか、彼女を……。


 アーヤの手を握り、彼女が無事でいられるように心からの祈りを捧げているうちに――

 わたしはいつしか、その意識を手放していました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ