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第二十七話 中日パーティ開始

 四人でホールに入ると中は着飾った人でいっぱいだった。


「お、ゾーイやったな、一皮むけた感じだぜ」


 堂々とした騎士の人がゾーイに声を掛けてきた。


「ありがとうトミー、あなたに言ってもらうと嬉しいっ」


 ああ、ゾーイの一戦目の相手のトミーさんか。

 落ち着いた感じの紳士ね。


「二段突きとは驚いたよ。お、あんたはアガタ夫人! トミーと言います初めまして」

「アガタよ、トミーさんの技量も凄かったわ、地味だけど上手いわね」

「あはは、解ってくれて嬉しいですよ。さすがは牧場の奥さんだ」


 トミーさんはなかなか気さくで如才ない感じね。

 

「アガタさんは次回のトーナメント(馬上槍仕合)は出られますか?」

「いえ、今回だけ特別なんですよ」

「それは残念ですね、ユニコーンと戦ってみたかった」

「アガタはすんごく強いよトミー」

「そりゃ見てれば解る。チャドなんか恥ずかしくてパーティに来てないよ」

「あの負け方はねえ、しょうが無いわね-」


 着飾ったピーコックがやってきた。

 彼、意外にお洒落ね。


「よう、アガタ夫人、ゾーイ、やったなあ」

「ピーコック、チャド知らない?」

「ああ、ひでえ負け方をしたからなあ、宿で凹んでらあな」

「やっぱりねーっ」

「牧場の奥さんって舐めてよお、徒士(かち)戦闘を挑んで返り討ちで、さらに不意打ちの逆襲、なかなか酷い負け方だぜえ」

「悪かったかしらね」

「きにすんねい、アガタ夫人、あいつは最近良い気になってたから良い薬だよお」


 やっぱり誇りを賭けて対戦すると、相手と良く知り合えるわね。

 意外に気持ちの良い騎士さんたちが多いわ。


「お、伯爵の挨拶だぜ」


 テュールが私の裾を引っ張った。

 ゴーバン伯爵が壇上に立った。


「あー、トーナメント(馬上槍仕合)も無事中日を迎えた。今回は番狂わせがあり、女性同士の決勝戦となったが、なんともふがいない。男性騎士たちはたるんでいるのではないだろうか。やはりトーナメント(馬上槍仕合)というのは勇壮で鍛え上げられた偉丈夫たちのぶつかり合いが醍醐味だ、君たちが勝ちを譲ったとは思いにくいが、次回は是非とも頑張ってくれたまえっ!」


 会場はシンとして静まりかえった。

 だれも拍手をしない。

 そりゃそうよね。


「で、では、皆の者、中日のパーティを楽しんでくれたまえ。以上」


 そう言ってゴーバン伯爵は台を下りた。

 パチパチと黒騎士だけが拍手をしていた。


「ちっ、アガタ夫人がどんだけ強いか、見てわからねえのかよっ」

「ゾーイだって頑張ったぜ、誰一人手なんか抜いてねえ」


 ぶつぶつと低い声だけが会場に流れた。

 それをかき消すように陽気な音楽が楽隊によって流されて、雰囲気が華やかになった。


 花束がこちらに近寄ってきた。

 良く見るとデイモンが一抱えもある薔薇の花束を抱えてやってくる所だった。


「ゾーイ、結婚してくれっ!!」

「「「は?」」」


 その場にいた一同は固まった。


「俺は女なんかピーピー泣くだけの下等生物だと思ってた、だけどお前は凄い技で俺を落馬させた、もう、結婚しかねえっ!! お願いだ、ゾーイっ!!」


 うん、こいつも馬鹿だわ。


「いやいやいやいや、そのあのそのあの、ええと、プロポーズだなんてそんなそんな、ええと私はまだ結婚とか考えてなくてっ」

「大丈夫だ、結婚して夫婦でトーナメント(馬上槍仕合)に出ようぜ、奥さんであるアガタ夫人もいるんだし、ゾーイ夫人だっ!! なっ、なっ、なっ」


 ゾーイは真っ赤になってあたふたしていた。


「そういや、ゾーイは良い年なのになんで結婚してねえの?」

「え、あ、その、婚約者が疫病で死んだから、自由にさせて貰ってるの」

「それはご愁傷さまで」

「まあ、絵姿でしか見て無い殿方だったから、あまり悲しくは無かったけど」


 ウォーレンがデイモンの前に出た。


「ちょっとまったーっ、ゾーイは俺の、その、妹弟子だ、勝手はゆるさーんっ」

「ばっか、お前何いってんの、兄妹弟子とか関係ねえじゃんよ」

「いや、その、あるような無いような」


 まあ、ウォーレンまで。

 ゾーイはモテモテね。


「おい、デイモン、お前、雰囲気なさ過ぎ」

「な、なんだこのチビは」

「テュールさまだ。もっと雰囲気作ってプロポーズしねえと女の子の方も困るだけだぞ」

「そ、そうよね、うんうん」

「え、そうなのか」


 なんだわね、騎士は馬鹿しかいないのかしら。

 トミーは笑ってるし。


「デイモン、お前は女慣れしてねえなあ」


 ピーコックが呆れた声を出した。


「女なんか嫌いだ。だが、ゾーイは別だ。あの凄い三段突きとか痺れたぜ。で、ずっと一生一緒にいたら楽しいだろうなって思ってプロポーズに来た」

「技に惚れただけね」

「そうだぞ、アガタ夫人。あんたの腕も素敵だが、あんたは既婚者だ。だがゾーイは独身だしな」


 大きい子供が居る。

 彼はトーナメント馬鹿だから、ずっと練習だけしてきたんだろうなあ。


「こ、困っちゃうなあ、こんなの初めて~~」


 ゾーイはゾーイで顔を赤らめてくねくねしていた。


 手を叩きながら立派なジェントルマンが近づいてきた。


「いいねっ、すばらしいっ、若いとは素敵な事だ」


 アルヴィン卿であった。


「あ、これはアルヴィ卿」

「ここここんばんわ」


 さすがに侯爵様なので、みな居住まいを正した。


「だがデイモンくん、君は騎士爵だ、ゾーイくんは子爵令嬢、いささか身分がつり合わないようだね」


 デイモンが、あっ、という顔をした。

 身分を忘れていたのかーっ。


「それはそのー、だ、駄目か?」


 デイモンはゾーイに問いただした。


「それはそのあの、親戚の手前もあるしー」

「ぐぬぬっ、あっ、そうだっ、黒騎士、次の大会で俺はお前を倒すっ!! トーナメント(馬上槍仕合)のチャンピオンになればつり合うよなっ」

「そ、それは、その、どうかしら?」


 トーナメント(馬上槍仕合)のチャンピオンはとても凄い名誉だけど、どうかしらね。

 領地とか税収には勝てない気もするけど。


 黒騎士もやってきた。

 彼は黒い礼服をりゅうと着こなしていた。


「面白いな、デイモン。次回はゾーイ嬢への結婚を賭けた勝負か」

「おうともよっ!」

「あ、でも、今回、私がアガタに勝って、黒騎士にも勝っちゃうかも」


 場が凍り付いた。


「「「「むりむりむりむり」」」」

「失敬ね、あんた達っ!!」


 ゾーイが切れた。

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[一言] 一戦交えれば通じ合える。騎士道とはかくあるべきですな。 ていうか伯爵の盛り下げ力のものすげーこと。デバッファーになれば戦場でも大活躍できるよアンタ。戦闘面で節穴だからだめかな。
[良い点] トーナメント騎士達、みんなバカな男子小学生みたいでカワイイw
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