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第二十話 ゾーイ対ピーコック戦、決着

 ゾーイはピーコックにポイントを先取されたわ。

 残りはあと一本。

 一本で一ポイント取って引き分け、二ポイント以上取らないとゾーイの勝利は無い。

 これはキツイわね。


「ゾーイがんばれーっ!!」

「頑張れ頑張れーっ!!」

「ゾーイ、しっかりーっ!!」


 声援をかけてみたが不安は拭えない。

 勝ってよ、ゾーイ。

 自分の仕合よりもハラハラするわね。


 ゾーイはレーンを替えた。

 落ち着いているみたいね。


 ピーコックはリードで気を良くしたのか、ウキウキした感じの動きをしているわ。


 主審の笛が二回鳴る。

 中央旗が上がる。

 馬止旗が下がる。


 この試合前の独特の緊迫感が良いわよね。


 中央旗が下がり、馬止旗が上がった。

 両騎馬は同時にスタートし、またたくまに襲歩(ギャロップ)に速度を上げる。

 ほぼ同じ速度で中央で向かい合った。


 ピーコックが突きを放つ。

 ゾーイはそれを槍で巻き込むように……。

 私の技じゃない。

 一度、見ただけで覚えるだなんて、ゾーイは凄いわ。


 ゾーイはピーコックの槍を巻き込み外側に弾いた。

 そして槍はそのままピーコックの兜に吸い込まれるように打ち込まれた。


 ガッチャーン!


 槍が砕け散る。

 ピーコックはぐらりと倒れかけ、はっと気がついたように持ち直した。

 落馬はしなかったわね。


 副審の旗が三つ上がる。

 ゾーイが三ポイントで勝利だわ。

 

「やったーっ!! ばんざーい、ゾーイ!!」

「すげえ、巻き込み打ちも使いやがった!!」

「覚えが早いわねえ」


 これもダメ元でやってみて成功した口かしらね。

 

「勝者ゾーイ!! 三回戦に進出!!」


 ゾーイが馬上で拳を天に上げると、観客席が爆発したように湧いた。


「うっは、勝った勝った、毎回ゾーイはハラハラさせんなあ」

「強くなったなあ、前のままならピーコックには勝ててない」

「ピーコックも良くやったわ」


 ピーコックは苦い顔をして肩をすくめ、待機所へと帰っていった。


「さあ、待機所にもどりましょうか」

「そうですね」

「ゾーイを褒めてやらねばーっ!」


 テュールがトトトと走って行ってしまった。

 私は観客のおじさんたちに黙礼して客席を離れた。


 待機所に戻ると、ゾーイとテュールがぴょんぴょん跳ねて喜んでいた。


「あ、アガタ、勝ったよ勝ったよ、またアガタの技を使っちゃったっ」

「よく一回見ただけで出来るようになるわね、凄いわ」

「私は覚えるの得意なのー、次の仕合のアガタの技も盗むわっ」

「あら、怖いわね」

「く、くそう、俺も早く覚えたいっ!」

「トーナメントが終わったらね」


 ピーコックがのっそりとやってきた。


「あー、アガタ夫人と戦いたかったあ。やっぱり今回の大会だけなのかい?」

「そうね、賞金を受け取ったら牧場に引っ込むわよ」

「俺の馬も世話してもらおうかなあ」

「そうしなさいよ、ピーコックも」

「うむ、アガタ夫人の牧場なら得る物も多そうだぞ」

「大会がおわったら、相談にいくぜえ」

「まってるわ、ピーコック」

「ゾーイ、凄かったな、次も負けるなよお」

「ええ、ありがとう、ピーコック」


 勝った相手に祝福を送れる騎士は良いわね。

 彼は手を上げて自分の馬房に引っ込んでいった。


 さて、準決勝は午後だわ。

 ゾーイの次の相手はと。


「デイモン・スウィフト、三回優勝して黒騎士とも戦っている強豪ですね」

「ああ、デイモンには連敗してる~~」

「強いの」

「すごく」

「とんでもないわ」

「勝てると良いわね」

「勝ちたいわっ」

「その意気だ~~っ」


 ゾーイはテュールに背中をバンバンと叩かれた。


「お腹が空いたのでお昼を食べに行こうっ」

「そうね、行こうかテュール、ガッチン、何か欲しいものある?」

「昨日の焼肉サンドが美味かった、またエールと一緒に買って来てくれ」

「わかったわ」


 賭けにも勝ったし、懐は温かいわね。


 私たちは競技場の広場の屋台街を歩いた。

 相変わらすテュールは目に付いた料理を食べ散らかしていた。

 彼女が目を付ける屋台はどれも美味しいので助かるわ。


「なんで、美味しいお店がわかるの、テュールさん」

「匂いとか雰囲気ね、良い屋台は一目見て解るわ」


 焼肉串を頬張りながらテュールは語った。

 昔からテュールに任せておけば美味しい物にありつけると仲間でも評判だったわね。

 戦場のご飯は時々もの凄く不味いのだけれども、そんな時でもテュールはまあまあの部分とかを調達していた。

 本当に助かっていたわ。


 私とゾーイは昨日美味しかった焼肉サンドのお店で食べて、ガッチンとウォーレンの分も買った。

 エールの小樽もつけてね。


 今日は暑いぐらいの良い天気で気分が良いわね。

 沢山の平民たちがやってきていて、思い思いの場所でお昼を食べているわね。


「夜は中日のパーティが楽しみね」

「そういえばそんな行事もあったわね」

「興味無いの?」

「あまりないわ」

「私はお料理に興味があるっ!!」

「テュールさんらしい」


 ゾーイは笑った。

 私も釣られて微笑んだ。


 ああ、娘達も連れて来たかったなあ。

 コンチャもアマラも楽しんだろうに。

 次回は家族みんなで来たいわね。

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― 新着の感想 ―
[一言] >娘達も連れてきたかったなあ 大丈夫ですよ奥様。貴方の娘さん達は大きくなったらそこの常連になると思いますよ。多分試合をする方で。
[一言] はむはむはむは さん アメリカの場合、WW2の戦場でコカコーラがつきものだったそうで。コカコーラ社の深慮遠謀で。
[一言] 戦場の食事は大事 近代軍はどこも美味しい食事のための部隊を作ったくらい 腹に入れば良いって考えの米英は力を入れなかったみたいだけど
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