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 今年もジン帝国に夏が来た。

 ジンの民にとって夏は『花火』の季節だ。

 空気が震え夜空に大輪の花が咲く。その夏最初の一発を、人々は見届けた。そして……。

「総員、構え!」

 夏は『戦争』の季節だ。

「ファイアワーク!!」

 隊長の号令とともに数百の兵が引き金を引いた。炸裂する火薬。閃光と破裂音の嵐。場を満たすのは鉄と硝煙の臭い。その一つ一つが残酷なほどに美しく、夜の戦場を極彩色に染め上げる。

 戦争は常に美しくなければならない。

 人々はそう信じて花火を兵器に作り替えた。

 爆弾はもちろん、軍刀も、弾丸も、その一発一発にいたるまで、鮮やかな色に発光して夜闇を彩る。その刹那、世界で最も美しい場所は間違いなく『戦場』だった。

「見つけたぜムシケラ共」

「ウォッカ軍の急襲隊!? もうこんな後方に……ごッ」

 赤く発光する弾丸が一人のジン兵の頭を打ち抜いた。不意を突かれ、その場に待機していた部隊は混乱し逃げ惑う。一部の兵が発砲して牽制するも、青い弾丸は空を切るばかりで敵は止まらない。羽虫のごとく蹴散らされていくジン兵。その場はたちまち地獄に変わった。

「ぐっ……」

「ギムレット!」

「すまんデイジー、俺はもう、ダメだ」

「肩を貸すから一緒に……」

「ダメだ。行け。お前だけでも、生き残れ」

「くそっ……くそったれえええええ!」

 夏の夜、世界で最も美しい場所で、兵士の命は散っていくのだ。

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