幼馴染が学園の王子様とカップルになったと思ったら、俺もその輪に入れられた件の続き
こ、これはなんて素敵なんだ!!!
異国の地で初めて男装王子様系ヒロインという存在に触れたとき、私はその尊さに思わず気を失いそうになった…
私の心をこんなにも豊かにするなんて…
その衝撃を忘れることができなかった私は帰国後すぐに男装王子様系ヒロインを探し求め全国を周った
あれだけ素晴らしい存在だ!きっと我が国でも流行っているに違いない、と…
だがしかし、いくら探しても男装王子様系ヒロインを見つけることができない
あんなにも素晴らしい男装王子様系ヒロインという存在がこの国には未だ十分に伝わっていないのか…
そう考えた私は遂に脱サラを決意
50歳を目前にして長年勤めていた大手企業を辞め、一人情熱の赴くまま男装王子様系ヒロインを書きだし始めた…
いつか、たとえどんなに時間がかかってもいいっ!だがいつか!必ず!男装王子様系ヒロインがもっとこの国で流行るように!より多くの人間にその良さを知ってもらえるように!
そして約20年もの月日を費やし、ようやく男装王子様系ヒロインの作品を作り上げることに成功
男装王子様系ヒロインの良さを広めるために独学から作り上げた本作は2021年度モンドセレクション金賞を受賞(大嘘)
国内でのさらなる男装王子様系ヒロインの発展へと貢献を期待される作品となった
皆さんごきげんよう
突然ですがいま僕はどんな状態にあると思いますか?
電車に乗って登校してる?机にほおづえついて授業を聞いている?
考えてみてください、シンキングタイム10秒差し上げます
10・9・8・7・6 はい、そこまで
正解は…
制服の襟の後ろを引っ張られながら剣道部の部室に連行されてい~る~♪でした
あらら残念ながらここで黒柳さんのひとしくん人形は没収となります。
「いや、何でだよ!」
「お前がまた朝練をサボったからだろうが!」
俺の投げ掛けた問に覆い被さるように男が反応する
そう、この男が例の王子様 沖田光月だ
その王子様が何故こんな猫のように俺を引っ張っているかというと
今日俺が所属する剣道部の朝練をサボったってことで昼休みにその分マンツーマンの強制練習だそうだ
あっれれ~ウチの剣道部って朝練自由参加じゃなかったっけぇ?
「まったくお前という男は、僕が目を離すとすぐにサボる…」
「俺からすると、毎度毎度事あるごとにこうして引っ張られるのもどうにかして欲しいんだけど」
「なら真面目に練習しに来い!!!」
沖田はウチの正式な部員ではないが人一倍熱意がある、入部しないのが不思議でたまらない
さて、そんな王子様と俺はある厄介な秘めゴトを共有している
そう、忘れもしないあれはインターハイ1週間前の練習後のことだった…
あの日俺はいつも通り沖田にたっぷりとしごかれた後クタクタになりながら着替えて部室を後にし
帰宅しようと玄関へ向かったものの途中で更衣室に財布を忘れたことに気づき
急いで戻り更衣室のドアを開けた、すると中にいたのはなんと…
~~~~~~~~~~~~~~~~Another side~~~~~~~~~~~~~~~
突然だが私は今、ある男の襟の後ろを掴み、男の所属する剣道部へと連行している
理由は男がまた性懲りもなく朝練をサボったから
そこで仕方がなく、この私が昼休みを返上して練習に付き合っているのだ
まったくこの男はサボり癖が酷過ぎだ
こちらがどんな気持ちで毎朝所属してもいない剣道部へ…
ゴホンッ まあとにかくその腐った根性を私がなんとか強制してやる!!
…別にそれ以上に他意はないからな
お昼を二人っきりで過ごしたいとかそんなんじゃない!
そんなんじゃないからな!!!!!
すると男が無神経なことを口にする…
「お前さぁ、俺のことよりも彼女はいいのかよ?」
「…舞衣には既に言ってある」
少しムッとくる、この私を前に他の女子のことを話すとは…
「いや、でも毎日毎日俺と稽古ばかりだしさ…流石にアイツも嫌気がさしてるんじゃないのか?」
「…彼女は、ちゃんと理解してくれている」
「口ではそう言っても、気持ちは別かも知んねーじゃん?こういうの続けてると面倒くさい事になると思うぞ?な?」
ムッ、何だよ…まったく
「お前、そんなこと言って稽古サボりたいだけじゃないのか?」
「あ?バレた?(∀`*ゞ)エヘヘ」
悪びれもせずに男は笑ってはぐらかす
ほら見ろ、どうせそんなことだろうと思った
まったくこの男はいつもそうだ…いい加減呆れてしまう
「とにかく、舞衣はそこのところ大丈夫だ、僕たちのことは気にするな」
そう、本当に問題が無いことなのである、何故なら私たちは
「仮面カップル」なのだから…
ではどうしてそんなマネをしているのか
それには私の素性が関係している…
私は女子生徒たちを中心に学園の王子様と呼ばれ持て囃されている
本当なら喜ぶべきこと、なのだろう…
だが私の心境は複雑だ… 何故かって?それは―――
私は「女」だからだ…
家の昔からの伝統で女性が長女として兄弟で一番初めに生まれた場合
その子は大人になるまで、つまり高校を卒業するまでは男として生活しなければならない
そういう決まりが旧華族の家系であるウチにはあるのだ…
だから男装をして、男として今は生活している
誠に遺憾ながら…
まぁ、遺憾と言いつつも男として生活すること自体は苦ではない
ただいつの間にか周りから王子様として扱われるようになり
何故だか女子生徒たちの告白が絶えず、ソッチの気が無い私には鬱陶しくなってしまった
そこで、彼女が出来ればこの告白ラッシュが納まると考えた私は、女子生徒では珍しく私に全然関心が無かった椎名舞衣に偽の彼女になってもらえないかと頼むことにした
すると、同じように男子生徒からの相次ぐ告白に嫌気が差していた彼女はこの提案を快諾したのだ
つまり私たちの間に愛などない、勿論仲が悪いとかそういうことはないし
友人としては、むしろ仲は良いのだが…恋愛感情はお互い持ち合わせていない
そしてそれから目論見通り私と舞衣は学園内でお似合いのカップルとされ
私は同性から告白されることが無くなり
私の男装ライフは充実の一途をたどっていた、そうあの時までは…
忘れもしない…
インターハイ1週間前のあの日、私はあの男と二人最後まで居残り練習をしていた…
大きな大会を前に熱が入っていたのだ、別に二人っきりになるまで練習をしたかったとかそういう訳じゃない!
そして、試合形式の打ち合いを終えると、流石に限界だったのか一足先にアイツが練習を終えて着替えに行った
そこでその間私は素振りで時間を潰し、アイツが着替え終わり帰ったのを見計らって
更衣室で着替えることにした
道着を脱ぎ、胸に巻いたさらしを外してタオルで体の汗を拭き
少しリラックスをしたところでブラに付け替えて
そして制服を着ようと手を伸ばしたその瞬間
更衣室のドアの開く音がすると共に、最悪の事態が発生してしまった…
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そう、俺は知ってしまったのだ
そう、私は知られてしまったのだ
アイツの秘密を
ワタシの秘密を
学園の王子様であるアイツが
学園の王子様であるワタシが
実は女物の下着を付ける趣味がある変態だってことを
実は男装しているだけの女性だということを
続くかも…(気が向いたら)