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008 敵を見据える

「――はい。それでは、手続きが完了しましたので……どうぞ。お受け取りください、ユウリ・ユースティス様」



 追放されて二ヶ月が経った。

 公領を牛耳るギャング【ロア・サタン】を乗っ取ることに成功した俺は、親衛隊隊長のライラを引き連れ銀行にいた。


 

 目的は、組織を動かすために必要な資金調達。

 遠慮なくユースティスの名を使わせてもらい、上限いっぱいまで金を借りた。



「――しかし、驚きました。ユウリ様って、公爵の嫡男だったんですね」



 銀行を出て、待機させておいた馬車に乗り込んだ俺とライラ。猫目で背の低い桃色髪の護衛は、ネクタイを緩めながら驚いた。



「ああ。そういえば教えてなかったな。二ヶ月前に追い出されたんだよ、俺」


「へえ~。ユウリさんみたいな超有能な人間を追い出すって、やばいですね。頭イカれてるんじゃないですか?」


「剣を振る以外に能のない人間だよ、俺もあいつらも。他のことはおまえらに任せっきりで申し訳ない」


「ハハッ、腕っぷしが強いってだけで千を越える人間を束ねられるワケないじゃないですか。才能ですよ、それ。カリスマっていうんですかね?」


「カリスマ、ね……」



 馬車から流れる景色をぼうっと眺めながら、思う。

 うまく、物事が行きすぎている気がする。

 ひとも金もチャンスも何もかも。まるで天からの贈り物がごとく、そうあれかしと降り注いでいるようだった。



 だってそうだろう。

 この俺が高級スーツを着込み、まるで貴族のように公領を我が物顔で歩けるとは思いもよらなかった。



「それにしても、ユウリさんは家を追い出されたってのに、どうして銀行は金を貸してくれたんすかね?」


「……確かに。俺もダメもとで行ってみたんだが……」



 既にユースティス家の人間ではない。ライラやユージが知らなくとも、公領に大きく根を張っている銀行がそれを知らないわけがない。



「ま、考えても仕方ないですね。金は借りれたんですし。……ユウリさん、これからどうするつもりですか?」


「そうだな……直参(組織)が乗っ取られたと知られたら、王都の本家は間違いなく動く。それがいつになるのかはわからないが……」


「今回の比じゃない戦争になりますね」


「だから、その前に……ユースティスを頂く」



 その宣言に、ライラが驚愕に顔を染めて、次の瞬間には大きく口角を歪めさせた。



「かはっ、最高ですねそれ! さいっこうにイカれてますよそれ! やっぱりユウリさんは頭がオカシイ!」



 ユースティスを頂く。それはつまり、ユースティス公領を我が物にする。

 それ即ち――



「実の父親を殺すなんて、燃えますね! しかも相手はあの【剣聖】を宿す猛者! 文字通り剣一本で成り上がった漢じゃあないですか!」


「そいつだけじゃない。【剣豪】のアリシア、【剣鬼】のヨシュアもいる。親父の側近には、殺しても死なないような老師もいる。他にも——」


「【ガリーザ・エルトス】……公爵お抱えの騎士団。練度も実力も半端じゃない。うちの兵隊で相手にできますか?」



 俺の言葉を継いで、ライラが笑う。

 彼女に倣い、俺もかすかに笑みを浮かべた。



ガリーザ・エルトス(奴等)を凌んようでは、その先などない」


「ひゅ~、辛口だ。ユウリさんにとっては、一種の試練のようなものなんですね、そのイベントは」



 着いていくことを是とするか否か。

 必要か不必要なのか。

 それを見定めるための祭事イベントだと言われてみれば、ああ確かに、そうなのかもしれない。

 


「正直なところ、時間稼ぎだけで構わない。俺が親父を殺すそれまで保ってくれればそれでいい。それ以上は期待していないよ」


「ふぅん……なるほど? でも頭が死んだからって、動きが止まるワケじゃないですよね?」


「いや、止まるさ。それがうちの風習だからな」


「……どういうことですか?」



 疑問を浮かべたライラへ、ユースティス家の後継者にしか教えられていない習わしを告げた。



「ユースティスは代々、()()()()()()()()()()()()()


「な……なんですか、その戦闘民族丸出しの風習……」


「要は、親父を殺せる資質があるものを次期当主と見出し、当主自ら育てる。――ライラ、これは必然なんだよ。父親殺しは定められた運命なんだ」



 そう、これは運命なのだ。

 俺が追放されたのも、要は運命のイタズラなのだろう。

 


 親父と並ぶため盤上の駒を集め、統率し、鍛え、挑む。

 一種のボードゲームのような様相を呈しているが、真に親父を越えるには理にかなっている。皮肉なほどに。



 ならば、すべては必然。

 それを理解し、狙ってやったのか否かは知る由もないが、あの親父()はやはり只者ではない。



「そのためにも、幹部連中にはがんばってもらわないとな。せめて騎士団長と互角にやりあえるぐらいには」


「うへえ、それはちょっと厳しそうですね……ユージなんか泣いちゃうんじゃないですか?」


「他人事だな」


「いやあ、そんなことはないですよ?」


 

 桃色の短い髪をくるくる指で遊ばせながら、ライラは破顔した。



「おまえには期待してる」


「期待していてください。望むなら、あなたをどこまでも連れて行ってあげますから」



 幼い容姿とは裏腹に、妖しい大人の色気を滲ませたライラが、赤い唇を舐めた。


 徐々に馬車の速度が緩やかになっていき、景色の流れも遅くなってきた。

 程なくして揺れがおさまり、ドアが開かれた。



「――お待ちしておりました、ユウリ様」



 サングラスをかけて馬車を降りた俺に、膝をつきこうべを垂れる商人の男。

 その男には、見覚えがあった。



「お会いできて光栄です。私、アララール・フェリックスと申します。以後、お見知り置きを」



 二ヶ月前、運命の分岐点。

 シャーロットの父親、ロールイス伯爵に宝石を売っていた商人の男が今、俺に膝を折っている。



「ユウリだ。よろしく頼む」


「こちらこそ、お互いに良い商売をいたしましょう」



 硬く握手を交わし、俺とほぼ同じ身長の優男は、薄く微笑んだ。






「おもしろかった!」



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