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011 奴隷

「――わたしを殺すの、おにい」



 妹アリシアを捕縛し、俺は執務室へ戻ってきていた。 

 捕縛し連れてきたアリシアは、歯を食い縛りながら俺を睨めつけている。

 この俺に負けたことが、かなり悔しいようだ。



「殺さないさ。妹を殺す兄がどこにいる」


「……じゃあ、どうして生かしてるの。隙があったら殺すよ、おにいのこと」


「そんな未来は永遠に来ない――俺が願わなければな」


「……」



 職人にあつらえさせた椅子に腰掛け、テーブルの上で指を組む。

 一方で、両腕と両足を縛られたアリシアは、床に尻をついている。

 これで彼我の立ち位置をいやでも理解させられるだろう。



「おまえには利用価値がある。指示待ち人間のくせに生意気な性格ではあるが、戦闘力に関しては俺も認めている」


「わたしはおにいの兵隊にはならないよ」


「なるさ。俺がお願いすれば、おまえは俺の思い通りに動く」


「……それもスキル……?」


「いや――もっと自発的にだよ」



 タイミングを見計らったかのように、ドアがノックされた。

 


「入れ」


「――失礼します」



 現れたのは、アララール・フェリックス。

 公領のみならず、王都や各国でもビジネスを展開し成功している大商人だ。



「あ、あなた……は」


「おや、お久しぶりでございます。アリシア様、これまたお綺麗に成長なされましたね」



 面識があるのか、アララールの姿をみたアリシアは、わずかに頬を強張らせた。



「ユウリ様、手配されていたものをお持ちしました。迷惑でなければ、こちらで進めてもよろしいでしょうか?」


「ああ、頼む」


「では――アリシア様、失礼します」


「え……?」



 アリシアと同じ目線の位置に膝を折ったアララールが、腕を掴み……懐から取り出した針を突き刺した。

 痛みにうめく妹。さらに、その行為を察したアリシアは、顔面を蒼白にさせた。



「ま、ま、まさかおにい――わたしをッ」


「興奮するだろ? ()()()()()()()()()()んだからな」


「――ッ!? こ、この――変態おにい!! 離せッ、わたしは奴隷になんかッ!!」



 今さら暴れたところでもう遅い。

 慣れた手順でアララールは作業を進め、待機させておいたライラが邪魔にならないようアリシアの両腕を押さえつけた。



「お恥ずかしながらわたくし、この一瞬、この瞬間に興奮を覚えるタチでございまして」



 「失礼します」と断りを入れてからアララールは、アリシアの腹に腰を下ろした。

 小さく呻き、目を見開いたアリシア。



 その瞳に映るのは、異彩を放つ半円の首輪と、恍惚とした表情を浮かべるアララール。



「とくに、高貴なる身分のお方が奴隷に落ちる痛ましい所業を、私の手で行えるなんて……ああ、何たる罰当たり。至高の幸福か。

 ――それではアリシア様。貴族として、人間として、最後になにか言い残したいことは?」



 今すぐにでも昇天してしまいそうな声音でアララールは訊く。

 対してアリシアは、蒼白となった表情を涙でぐっしゃりと歪めさせ、人間として最後の矜持を吠えた。

 


「く、クソども、絶対に殺してやるッ!!」


「さすがはユウリ様の妹君だ。なんと猛々しい。しかし、そう表に出していてはいつまで経っても兄上には及ばない――まあ、あなたにはもう関係のないことだ」


「――あ」



 カチリと、首に押し付けた輪が隙間なく細首を覆った。

 


「これにて終了です。彼女はもう、あなた様の奴隷となりました」



 実に呆気なく、まるで崖から突き落とすかのようにひとが奴隷に落ちた。

 こんなものなのか。

 実の妹が奴隷に貶められても、あまり現実味はなかった。



「ご苦労。よくやってくれた」


「いえいえ。ユウリ様にはお世話になっていますから。他にもなんなりとお申し付けください」


「いや、逆だよ。おまえにはいつもよくやってもらっている。何かお礼がしたい。何がいい? 俺に出来ることならなんでも叶えてやろう」


「そんな……いえ、お言葉に甘えましょう。お互い、ムダな時間は過ごしたくない。社交辞令など不要ですね」



 呆然と、絶望を孕ませた瞳で天井を眺めるアリシアのその横で、アララールは満面の笑みを湛えた。



「では、ユウリ様。私の娘と結婚していただけないでしょうか?」




****




「あのー。すっごーい、すごく……個人的になんですけど、ユウリさん?」



 時計の針が十二時を過ぎてしばらく経ち、淡い橙色のランプが部屋を照らす中。

 俺の半身を飲み込むようにして絡みつくライラが、頬を膨らませて不満を漏らす。



「婚約、ほんとにしちゃうんですか?」


「……」



 昼過ぎのことを思い出して、俺も苦笑に顔を歪めた。

 なんでも叶えてやろうと言った手前、断るなんてできず、結局引き受けてしまった。



 とはいえ、いきなり結婚するワケではなく、一度食事を交えてから決めることになった。

 ひらたくいえばお見合いか。

 顔合わせの日時は一週間後。

 場所は高級レストランを貸し切って行われる。



「受けちまったからな。不満か?」


「……不満じゃないです。なんていったら、嘘になりますけど」


 

 できるなら俺だって、これ以上相手する女を増やしたいとは思わない。

 むしろ十分すぎるぐらいだ。



 しかし、断るのは簡単だが、言い出したのは俺だ。

 俺にも少なからずメンツがあるし、果てには【ロア・サタン】のメンツでもある。俺自身が汚してはならない。

 


「利益はいっぱいありますよ? 奴隷から武器まで、ほぼ網羅しているような大商人ですからねー。身内に引っ張り込めば心強い。親衛隊隊長ライラとしてはとても賛成です」



 けど、と付け足して、俺の首筋にライラが噛み付いた。



「ただのライラとして、婚約はちょーっといただけないです。その、たぶん、他にも嫌だって思ってるひとが……いるんじゃないかなって。あの、愛人っていう立ち位置でも、いいんですけど……別に」



 己の首元をさすりながら、俺の首に歯形をつけるライラ。そんな彼女のながい桃色を撫でながら、抵抗せずされるがままに受け入れる。



 痛いには痛い。甘噛みなんてレベルじゃない。三日以上は跡が残るほど強く噛まれている。

 しかし、これも彼女なりの愛情表現なのだ。

 すべて受け入れるのが、俺の役目でもある。



「……なんかいってくださいよ」


「ああ、すまん。ここ最近、考えることが多くてな」


「む? しっかり休んでます? やっぱり婚約の話は――」


「それに関しては、我慢してくれ。組織を大きくするためにも必要不可欠だ」


「ぅぅ……はぁい。でもー」



 シーツを押し上げて、俺の腰元に跨ったライラが不貞腐れた顔を脱ぎ捨てて、妖艶に笑う。

 幼い体型に淫らな香気をまとわせて、下唇を舐める。



「第二ラウンド、付き合ってくださいよ?」



 さらさらと桃色の髪がライラの裸体を流れていく。

 髪の一つひとつが生命を帯びているかのように蠢き、俺の皮膚を撫でた。

 

「おもしろかった!」



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