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010 巡り廻れ

「――久しぶりだな。実に半年ぶりか、妹」



 葉巻を咥えたまま、妹アリシアの前にでた。

 目を細め、彼女の装いをみる。

 白を基調としたドレスのような衣服だが、体の動きを阻害しない軽やかな作り。

 魔力が常に帯同し巡回しているおかげで耐久性も高く、ちょっとやそっとじゃ破れない代物だ。



 いつだって可愛らしく、かつ敵の流した血で彩れるよう純白を――この装備は、妹が本気で戦う時にのみ着用する戦衣だ。



「おにい、追放されたからってギャングは、何かのギャグ?」


「まさか、そのつまらないギャグかましにここまでやってきたのか?」


「それこそまさか。……ていうか、なんか生意気になったね、おにい。似合わない格好しちゃってさ」


「おまえは変わらず、兄貴に対して舐めた態度だな。教育がなっていない。煙の吸いすぎなんじゃねえのか?」


「今のおにいに言われてもね、説得力がないよ。ま、元からおにいは頭おかしかったし、わたしも眼鏡おにいからよくイカれてるなんて言われてるから、あながち間違ってないのかも」


「よく喋るな。そんなにお兄ちゃんと会えて嬉しいか? 犬みてえに尻尾振ってんのがまる見えだぜ」


「興奮はしてるよ。だっておにい、実の妹に兄の尊厳を踏み躙られ失禁しながら死んじゃうんだよ? よかったね、おにい。わたしに尻尾があったら、その尻尾で殺されてたよ」



 マズイ葉巻を地面に落とし、靴の裏でこする。

 俺たち兄妹からしてみればいつも通りの会話だが、互いの側近たちにとっては違うらしい。

 数メートルの距離でガンを飛ばし威嚇しあっている。

 まさに一触即発。

 触れれば爆発してしまいそうなほど、戦意が高まっている。



「【ロア・サタン】は大きくなりすぎた。前までは気にならない程度だったけど、最近の動きは目に余る。しかも、率いてるのがおにいだなんて……他の貴族に知られたらメンツが汚れるんだよ」


「今さら気にするメンツなんてねえだろ。己のことにしか関心のねえ親父が貴族のツラを気にするたまか?」



 昨日より強く。十秒前より強く。

 いかに強くなることだけを追い求めているような、まさにユースティス家のあるべき姿とも言える現当主ユリウス・ユースティス。

 そんな親父が、政治や交友関係に関心を持つとは思えない。

 あるとするのなら、それは親父ではなく、



「はっきり言えよ。ヨシュアの差金だってな」


「……」


「おまえは言われたことしかできない。やったことしかできない。だから自発しての行動じゃあねえ。親父はこんなつまらなんことに介入はしない」


「ふぅん……? まあ隠すことじゃないし、いいけど。これは眼鏡おにいからの命令。おにいを殺すか連れてこいって」


「思い切ったことするな、あいつも」



 殺気立つ親衛隊を手で制して、文武両道という言葉がお似合いな我が弟の顔を思い浮かべる。

 俺にとって代わり、次期当主になれると踏んだのだろう。

 これまで溜め込んできた知識を総動員して、親父の代わりに内政をはじめたようだ。



「だからっておまえ、俺らを潰すのは得策じゃあねえだろ。うちの組織が納めてる税金、どれくらいか知ってるか?」



 調べさせたが、公領に納めている税金の四分の三は『ロア・サタン』が占めているらしい。

 それもこれも、うちの兵隊を守るために必要なことだからやっているだけで、公領に媚を売っているわけではない。

 


「知ってるよ。そのお金で、後ろのみんなの装備整えた。おにいを殺すために」


「おいおい……民草の血と汗と涙を、更なる流血のために使うんじゃあねえ。お兄ちゃん、悲しいぜ」


「どっちも変わらないでしょ。おにいの稼いでる金なんてあくどい商売で得たものなんだから。その金をきれいなものに変えてるんだから、おにいは黙って死ぬべきだと思う。民のために」


「ハハッ、イカれてんなおまえ」


「何それ、褒め言葉? 殺すよ、おにい」



 互いに満面の笑みを浮かべ、声を大にして笑いあった。

 【ロア・サタン】の広大な敷地内に、俺たち兄妹の笑い声が響く――



「―――」


「―――」



 そして、笑声の停止。

 それが開戦の合図だと了解していたのは、俺たち兄妹と――



「妹君以外は殺せー。ボスの邪魔はするなよおまえら」



 ——親衛隊隊長ライラとその側近のみ。



 圧倒的先制によるライラの、魔弾による絨毯爆撃が【ガリーザ・エルトス】の騎士を叩きのめす。

 相変わらず、圧巻する術式構築の速さ。

 コンマの世界で上空より出現した紫色の魔弾が敷地内の地面を抉り、爆ぜ、混沌と化した最中――



「おにい、やっとふたりっきりになれたねっ」


「ハッ、デレてもまったく可愛げのねえ愚妹だ」



 刀と剣が爆ぜるように爪弾き、都合十の剣戟を謳わせながら屋敷の裏手まで駆け抜ける。

 


「ふぅん……ついてこれるんだ。意外……サボってなかったんだね」


「そもそもの話、兄貴が妹に負けるかよ」


「へえ」



 とは言いつつも、アリシアのいうとおり、鍛錬を欠かしたことはない。

 剣を振っていないと、不安と恐怖に押し潰されそうになるから。

 逃げるように鍛錬していた。

 そのおかげか、こうして【剣豪】スキルを宿す妹と互角に渡り合えていた。



 下段から跳ね上がる剣を刀でいなし、瞬間振り下ろされる刃を捌き、常人の域を遥かに越えた剣撃の応酬を真っ向から叩き返す。

 


 強い。確かに、強い。だが、それだけだ。

 剣の速さも、技の正確性も、剣の重さも、駆け引きも何もかも。

 未熟――いや、常人が相手ならそれでよかった。



 半年前の、全てを失ったあの時の俺相手なら、この程度でよかったのだ。



「っ、なに――おかしい、こ、れ……っ!!」


「背負ってる重みが違う」


「……っ!?」



 ――今は違う。

 あの時とは比べ物にないモノをいま、俺は背負っている。 



「おまえがいま立っている場所なんて――とうの昔に踏破した」


 

 弾かれた剣を戻すよりも早く、刀の切先がアリシアの首に添えられた。

 冷汗を頬から落とした妹が、ピクピクと頬を痙攣させた。



「なんで……外れスキル持ちの、おにいなんかに……!」


「外れスキル……? あぁ、そんなものもあったな」



 懐かしい響きだ。

 外れスキル。

 不敵に笑った俺を、恐怖の入り混じった目で見据えるアリシア。



「おかしいとは思わなかったか? 何かもが出来過ぎだとは思わなかったか? 運が、良すぎるとは思わなかったか?」


「な……何を、急に……?」



 首筋を撫でるように刃を這わせた俺は、笑う。嗤う。咲う。



「すぐに理解したよ。それが俺のスキルなんだって」



 《みそぎの儀式》で【解析不可】だったそれは、ある日とつぜん、天啓が降りてきたかのように脳裏に現れた。



 スキルは、与えられれば赤子でも使える――そんな言葉があるように、本能的にスキル(それ)った。


 これは、望んだ結果モノを手繰り寄せる(モノ)なのだと。



「強く、強くなりたい……その願いがより鮮明であればあるほど、俺は強くなった。俺が適当に成したことでも、それが巡りまわって俺に都合よく働いた」



 ゆえに、



「勝利を願えば勝てる。なぜなら俺が望んだから。もとより、おまえに勝ち目という結果()すらこの世に存在していないんだよ」


「―――」



ゆえに、勝利は必勝となり前提すら覆す。

 



「【我が栄光の光よ、(シャンス・)巡れ廻れ(レジュルタ)】――それが俺のスキルだ」




「おもしろかった!」



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