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人生に迷ったら迷い人になった  作者: 赤石 胡桃
異界の迷子と精霊
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異界の迷子と精霊8「結果と縄張り」



百発百中ならぬ百発百外し中の現状に凹むリクトの背を、タミルが勢いよく叩いた。ちょっとむせた。


「そう凹むなって。筋はいいんだ、あとはちょっとした事だと思うんだがなぁ」


「…うん。そうだね!」


「ハハハ!切り替えの早いヤツだな。よし、しっかり付いてこいよ」


「うん!」


この日は朝の訓練で相変わらず当たらない弓の練習をした後、タミルに付いて見回りに来ていた。タミルの足は速い。一見のんびり歩いているようなのに、ほんの少し気を抜くとあっという間に引き離されてしまう。


「リクト、これを見てみろ」


仄かに光る木の前で立ち止まったタミルがリクトを手招きする。タミルの示す場所には何かの模様のようなものが浮き上がっていた。


「これが、オレたち守備隊が結界と呼んでいるもののひとつだ」


呼んでいる、という言い方が気になってタミルを見るとタミルは端正な顔でニヤッと笑った。


「結界というと何をイメージする?」


「えっ?ええと……壁?」


「まあそうだ。壁、つまりその場所は通れない。例えばモンスターなど特定の存在を遮断するものだろ?」


「うん」


「これは何も遮断しないんだ」


「えっ!?」


「俺たちは森と共に生きてるんだ。草や木や、モンスターだってその一部だ。こっちの都合で勝手に区切っていいもんじゃねぇ」


「あ……」


「人間てのはそのへんを捻じ曲げちまう。だから精霊の力を正しく得られないんだとオレは思ってる」


タミルは苦い顔をしたが、リクトも人間だと気付いたのだろう、リクトを見てすこし表情を和らげた。


「じゃあ、この結界は…」


「言わば縄張りの主張、だな。動物にもそういうのあるだろ?」


「匂いを付けたりするあれだね」


「そうだ。モンスターにも生きようとする本能はある。自分たちより強い存在だと認識していれば無闇に近付いて来ないんだ」


「なるほど」


真の意味で共存しているという事だろう。食べるために狩りをしたり、身を守るために目の前の敵を倒すことはあっても、無意味な殺生はしない。


「こうして毎日見回るのは結界の保持というより、危険なモンスターが近付いていないかを確かめるためだよ」


リクトは光る模様にそっと触れてみた。温かいわけでも冷たいわけでもない。何か特別な力のようなものも感じない。ふいに犬がマーキングするイメージが浮かんだ。あれを危険だと認識した事はない。それに近いのかもしれない。


「おいてくぞー」


「わっ!ちょ、待ってタミル!」


「さくっと終わらせて帰るぞ」


タミルはのんびりに見える速足でさっさと歩き出した。


結界、と呼ぶものは里を中心に森の広範囲に散らばっている。それを当番の班員で手分けして見回るのだが、たいてい班長の担当する範囲が最も広いらしい。狩りの日と違って弁当はないから、それを朝のうちだけで周り切るのだ。なかなかハードである。


タミルを必死に追いかけていたリクトだが、ふと視界の隅に入ったものが気になって思わず足を止めていた。


(子ども…?)


引き込まれるように近付いていた。

小さな子がかがみ込んで何やら手元に話しかけている。


「ほら、もう大丈夫。イッカクイノシシのやつめ、今度見かけたら懲らしめてやろう」


その表情は優しげに手元を見ていた。そこには可憐な白い花が咲いていた。


「コビト…?妖精…?」






やっとこの子を登場させられました。

本当はもっと早く登場させるつもりだったのですが…


読んで下さる方がいるか分かりませんが、もしいたら、作者と一緒に楽しんで貰えていると嬉しいです

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