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果実の香りと四人の恋人  作者: シュート
第0章
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プロローグ

 柑橘系の匂いが鼻をかすめた。

 ふと左を向いたその時、バイクは横転し目の前が真っ暗になった。

 僕は死ぬのだろうか。意識が遠のいていく中、そう思った。

 自分がもし死んでしまったら……家族や友達のこと、そして自分自身のこと。後から考えれば色々あったはずなのに、真っ先に頭に浮かんだのは「彼女」の存在だった。


 ゆっくりと目を開けてみる。

 どうやら命は助かったらしい。

 知らない内にベッドに寝かされていて、視界には覚えのない天井、知らない人たちが映る。

 そして僕を襲うのは不安という感情。

 いや、待ってくれ。

 ――僕は一体誰だ?

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