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第47話 スポーツの秋の始まり始まり!

 話し合いから、日がどんどん過ぎていった。


 あの後、例の特殊な部屋――模擬戦闘教室、略して模戦室とみんな呼んでいるらしい――で4人の総当たりをした。意外にも、みんなとある程度善戦する事ができた。と言っても、ここぞという時に必要な知識をど忘れして、結局全敗したのだが。それでも、夏休み中にスタミナと体力と知識がつき、休暇前より成長を感じたのは確かだ。


 剣戟の他、私は玉入れとクィディッチに出ることが決まった。クィディッチでは、あの主人公と同じように、シーカーとして羽のついた金色の球、すなわちスニッチを奪うのだ。今まで使ったことのない、ホウキ型のアーティファクトに乗ることになるので、慣れるまでが大変だった。なお、乗る人の魔力ではなくホウキに組み込まれた魔法石からの魔力で飛ぶので、私にも使えるのだ。方向転換はレバーで行う。


 なお、地球のかの有名小説のそれとは若干のルールの違いがある。防御や牽制に魔法を使っても良いことになっているのだ。他者を意図的に傷つけることなく、かつホウキに乗り続けていれば何でも良い。


 いずれの競技にも、秘策があった。精霊たちや神様の力を総動員する。



「当日、よろしくね」


 《我らに任せよ。我はハルカのパートナーなれば、共に競わん!》



 精霊たちも、ワクワクしているように体を揺らした。初めはホウキに乗って飛ぶ練習が中心だったが、途中から精霊たちと秘策を使う練習をした。当然、チームメイトとともに。因みにA組のチームは、私とユーリ、ジャックス、ミハイル、その他合わせて計7人だ。



「これ出来りゃ無敵じゃね?」


「俺たちがしっかりサポート出来ればの話だ」


「兄ちゃん、足引っ張っちゃダメだよー?」


「うっさいなあわかってるよ!」



 ――そうして、とうとう体育祭の1日目。剣戟以外の競技を全て行う日だ。



「ハルカ! いよいよだねっ、負けないよ?!」


「ステラは強いから、一対一じゃ私は勝てないよ……。でもね、みんなで勝ちに行くから。絶対負けないからね!」


「どうかしら?」


「わっ、ソフィア!」


「魔法が使えるようになった今、私は敵なしよ?」


「それはどうかなぁ?」


「えっ、ハルカとソフィア、いつの間にそんな仲良くなってるの」



 B組の友人たちとの宣戦布告、もとい他愛ない会話。校庭では、競技が進行されていく。


 リレー、綱引き、その他のゲーム。A組の人たちは優秀らしい。B組もだが。とりわけユーリの力は凄まじい、と改めて思う。容姿端麗、成績優秀、その上さらにスポーツ万能だとは。彼はリレーに出ていたが、あっという間に他のクラスのライバルたちを追い越し、差を広げていった。彼の水色の髪や瞳が、いや、彼自身が、輝いて見えた。流れ星か何かに見えたのだ。


 そうこうしているうちに、玉入れの出場選手が呼ばれた。行かなくては。


 所定の位置につく。みんな魔法を使うのを前提としているので、地球の運動会や体育祭のそれと比べ物にならないほど、カゴが高い。



「では――始め!」



 合図とともに、全員が玉を手に持ち、カゴに投げ入れ始める。


 もちろん、その中のほとんどは、詠唱しながら。多くは風魔法。たまに、浮遊魔法を使って何個かダンクシュートしている人もいる。


 その間に――



「風の精霊らよ――」



 打ち合わせをした通りに、合図を送る。もう彼らは、詠唱の文法に従わなくても、分かってくれる。心が通じ合っているから。


 精霊たちは、グループを作りながら分散していく。


 自分たちのカゴの足元に転がっている無数の玉。そのそれぞれに、複数の翠緑色の光の粒がくっつく。風の精霊だ。


 彼らは自分たちの魔力を空気の層と変化させ、玉を包み込む。


 そうして、いくつかの精霊たちが力を合わせて風を起こし、ひとつの玉を持ち上げる。


 個々の力がどうであれ、集まれば強い。


 玉が想定どおり浮遊し、カゴに吸い込まれていく。そこで終了の合図が聞こえた。無事に作戦は成功したようだ。


 結局、もともとあった玉が全て、カゴに収まることとなった。


 勿論、他の子たちが投げ入れたものも多いが。


 結果、玉入れはA組の圧勝だった。



「ハルカつええー!」


「いや自分自身は動いてないじゃん」



 反論できない。多分、私自身は玉を触ってもいない。だって投げても届かないし。



「でもハルカのお陰で優勝したのは確かだな」


「それはそうだ!」



 誰かの優しい言葉にみんなが頷いてくれた。嬉しい。



「ハルカ凄いねー! 精霊に玉を運ばせるなんて、うちのニンフには出来ないからなぁ」


「そうなの?」


「ニンフひとりがひとつの玉を運ぶのは簡単なんだけどね。効率悪いもん。やっぱり、小さくても沢山精霊居るのっていいね!」



 ステラ師匠からお褒めのお言葉を頂いているうちに、クィディッチのふたつ前の競技が終わってしまった。また呼ばれたので、会話を中断せねばならなくなった。


 今度も精霊たちと一緒に戦う。



「ハルカ、ホウキはバッチリか?」


「うん!」



 ユーリに言われたので、私は自分のホウキにまたがって空中で旋回してみる。



「剣術といいホウキといい、ハルカは本当に覚えというか慣れが速いな」


「あっ、クレンだ!」



 いつの間にか、クレンも近くまで来ていた。



「体幹がしっかりしてんだろうな。とにかく、今日の活躍、期待してるぞ」


「ありがとうございます!」



 さあ、期待されていることだし、やってやろうではないか。

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