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第29話 新たなる巫女の力

「はー……今日は色々あった……」



 寮にて。


 いつものように、フカフカのベッドに体を預ける。


 学校生活には慣れたけど、このハードスケジュールに体が追いつくのはいつなのだろう。


 その上、今日のように、いろんなハプニング(?)があった、日には…………



 《ハルカよ、夕餉に遅れるまじ》


「うー……分かってる、よ……」



 そう言いつつも、やはりまぶたは閉じていく……



 《されば、道具の使う(すべ)を学ばぬか?》


「へ? ……あー……アーティファクト?」


 《しかり!》


「……おー、なるほどね……」



 眠気覚ましに、やってみよう。



 千早と緋袴を買った時付いてきた木箱を探すと、道具の絵と共に名前が書いてある。


 それを、身につけている装備と見比べ、照らし合わせる。



「これは……扇。で、こっちは……えっと……あずさゆみ……って、読めば良いのかな?」


 《梓弓……名すらも、昔と変わらず》


「で、これが……えっと……はらいぐし……?」


 《祓い串……!》


「えっ。それが……なんなの?」



 入っていたのは、多分この3つ。


 扇は字の通り。


 梓弓は、小振りな弓だ。矢は見受けられない。


 祓い串は、細い木の棒の先に、白くて四角い紙が沢山連なったようなのが付いている。いかにも巫女という感じだ。紙や串が折れたり破れたりしなかったのは、まあ特殊な加工とかがしてあるのだろう。


 さて、アーティファクトの名前がわかったところで。



「これ……どう使うの……?」


 《扇は、手に持ちて舞うべし。梓弓は、音を鳴らさば……》


「ちょっ、舞?! 振り付けとか分かんないんだけど!」



 しかし、その心配は無用だった。


 扇を手に持ってみる。


 と――



「えっ……!」



 私は、さっきまでベッドに腰掛けていたのに、突然立ち上がる。



 私の身体が――自分の意思に反して動き始めたのだ。



「わあっ……!」



 初めは、扇に無理矢理手を引かれてあっちに行ったりこっちに行ったり。頭は真っ白で、しかし身体は絶え間なく踊っていた。


 しかし、途中から、動きが循環していることに気づいた。一定の舞を何度も繰り返したから、自然と慣れた。



 《ハルカは、舞を学ぶが早し。いずれ、いと良き巫女ならん》


「勝手に引っ張られてるだけだけどね。……でも、多分もう扇無くても踊れるかも」



 昔、バレエをやっていたのが、ここでも役立ったのかもしれない。


 気づけば、自分の舞を鏡越しに客観的に見て……その伸びやかな動きについうっとりするという、変なナルシストと化していた。


 そして――あの日、夢で見た舞と、どこか重なったのだ。



 鏡で自分の舞を見るうち、あることに気づく。


 すでに振り付けを覚え、扇無しでも舞えたのだが、その時は何にもならなかった。


 だが、扇を持って舞ったら、身体がモヤに包まれるのだ。


 これが何か、なんとなくわかる。


 魔力の流れだ。


 この学校に入って、もう何度も見てきた。


 もっとよく見ると、他の子のように、自分の身体から湧き出ているのではないことがわかる。


 扇が横切った空間から、自然と現れるのだ。


 それが、四方八方に放射していく。行き場のない魔力が、形にならぬまま空間に溶け込んでいく。



 《……巫女は、かつて、貴なる者どもにマナを与えけり》


「えっ! マナって……魔力?」



 つまり。この扇と共に舞うことで、人に魔力を分け与えることが出来る……ってことだろうか。



「魔力……魔力ねぇ……私にも欲しいよ……!」



 ――こうして、ギルドカードには【神楽舞=1】が書き込まれた。



 他のアーティファクトも見てみる。



「梓弓って……弓? でも、矢がないよね?」


 《矢を飛ばす弓にあらず。音を奏でるものなり》


「音……こうかな?」



 試しに、弦を弾いてみる。確かに、音が鳴る。美しい音が部屋に響いた。


 だが……ギルドカードに、変化はない。



 《ただ鳴らすだけにあらず。いにしえの巫女は、死霊をぞ呼びたる》


「死霊……?! えっ、どうやって?!」


 《呼ぶ者を心に思い、弓を鳴らすべし。……ハルカ、我が予見正しからば……この後、おなごの、そなたの力に助けらるるあらん。さらば、かれはハルカの友とならん》



 そう言いながら、神様は変なポーズをする。未来視をするときのポーズらしい。初めてそれを聞いた時には驚いた。やっぱり神は凄い、と思った。だけど……テレパシーか何か送ってるみたいなポーズで、何度見ても面白くて、つい吹き出してしまう。



「へー……誰だろ? ステラ? セレーナ? ……まさか、ソフィアさん?」



 神様の言葉、「友と()()()」……推量の助動詞があったから……すでに友達のステラやセレーナの可能性は低いみたいだけれど……ソフィアのような強い子が、私なんかの力を必要とするとは考えにくい。


 でも、じゃあ、誰だろう。まだ見ぬ子だろうか。


 まあ、誰だかわからないけど、その人にそのスキルを使って、そうすれば私のギルドカードに新しく書き込まれるのだろう。



「で……祓い串は?」


 《祈りによりて、身を浄める物なり。巫女のこの術を知りたるは少なかりき!》


「あっ……! あれか、加持祈祷ってやつかな?!」



 それだったら、古文常識。何となくわかる。挿絵でも見たことある。だけど……



「まさか、私が使えるとはなあ……!」



 これも、梓弓と同じような理由があって、スキルとして書き込まれるのはまだだけど……使えるようになる日が待ち遠しすぎる。

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