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第27話 【神の光】の真実

 状況がひと段落したので、神様に尋ねてみる。


 もう、燐光の壁はない。彼女はいつも通りの様子だった。



「ねえ、【神の光】って、一体何なの?」


 《文字のままなり。神の力より出づる光……》


「でも、もし神様の力なら、私なんて必要ないよね?」


 《我は、神々のうちでは弱かれど、万人をも超ゆる力をぞ持ちたる。されば、我が意のままこの世で使わば、傷つかぬ人ありや?》


「あー……神様の本気も見てみたいけど、確かに怖いなぁ」


 《しかり。それゆえ、巫女の切なる『願い』ある時のみ、我が力の幾ばくかが解き放たるるなり。かの札こそ、そなたの願いを我に伝うれ》



 お札があれば、巫女の『願い』に応じて神様が力を発揮する。


 お札がないと、それが出来ない。神が自分の力を自分で操れば、その強大さゆえ、大惨事にも繋がる。推測するに、神々の取り決めとやらで、力の利用の制限のようなものがあるのかもしれない。それを、巫女が外すことが出来るのだ。


 つまり、巫女は、神の持つ恐るべき力をコントロール出来る。それこそ、【神の光】だったのだ。



「……じゃあ、実質……神様のスキルじゃん……」


 《言わざるか、我はハルカのパートナーなりと?》


「いや、言ったけど……」



 それに、命の危機というぐらい強く念じないと発動しない。これ、果たして実戦向きなのかな?


 自分の緊急時には強力だし、事実、これのおかげで今の私があるのだけれど。



「ハルカ! さっきの光って……!」


「はい。あのスキルです。……今、神様にこの光のこと、聞いたんですが……」



 クレンに駆け寄られ、さっき聞いた話を伝える。



「なるほどな……まあでも、レベルを上げたら実戦向きにもなるだろう。とにかく、無事でよかった。本当に」


「ありがとうございます」


「やっぱり、お前のスキル……【神の光】だったか? あれは凄い。あの状態に陥ったドラゴンを微動だにさせないような壁は、相当な魔導師でも作るのは難しいからな。……そうだ。生徒の紹介が途中だったな」



 かくして、イントロダクションの続きが始まる。


 さっき戦っていたフランツ、ヘレナは、ソフィアのパーティに属している。


 フランツは魔剣使い。魔剣は、簡単に言えば魔法を付与した剣だ。彼の剣に付与されている魔法はオールマイティで、流す魔力の種類や量に応じた働きをするのだという。


 一方、ヘレナは魔法使いだ。貴族出身で、生まれた家はこの世界屈指の火属性魔導師の名門なのだという。長女としてその血を受け継ぎ、類稀なる魔法の才能を開花させつつある。


 だが、彼女の一歳年下の妹がもっと凄いらしい。フレアといい、リヒトスタインとは別の、超エリート校に通っているのだとか。


 ヘレナも、魔導師の名門出身として敬われていた親をこの歳で既に凌駕し、十年にひとりの逸材だともてはやされていた。だが、フレアはさらにその上を行く天才で、百年にひとりの逸材と言われているという。



「……どういう基準なんでしょう、それ……」


「まあ、体内に持ち合わせてる魔力量とか、一回の魔法で出せる威力、それからコントロール力だな。それらが完璧、というかケタ違いって訳だ」


「へえ……でも、妹がそれだと、姉は複雑でしょうね……」


「だろうな……もはや、妹が後継ぎみたいになってるからな。縁談とかもそっちに来てるみたいだし」


「ええっ! でも、ヘレナさんも強いんですよね?」


「ああ。あそこの父親は、俺も関わりがあるんだが……魔法使いとしてはあの世代で最強でも、たまに思考が分からなかったりするんだ。縁談とかは、フレア自身も望んでないことらしいしな」


「……そんな……」



 貴族のことはよく分からないけれど……恐ろしい世界だ。



「さて、話を元に戻すか。あれは、ジャックスとミハイル。双子の兄弟だ」


「本当に双子ですか? あんまり、似てない……」



 クレンの指差す先にいた2人の少年。纏う雰囲気が全く違う。顔つきも違う。ひとりは大人びていて、もうひとりは童顔。



「行くぜ相棒!」


「おっけー」



 アツい雰囲気を纏っているのが、兄のジャックス。その威勢良い掛け声に、柔らかく和やかに答える童顔の少年が、弟のミハイル。


 似てはいない。しかし……



「うぇーい!」


「よっしゃー!」



 息ピッタリの動きで2人同時に放った矢は、狂い無く魔物を射止めた。確か上位魔物だった気がするが、一発で急所に当てたのだ。


 彼らは、弓術師。双子ゆえの団結力を武器とする、校内屈指のタッグなのだ。



「これで、特徴的な奴らは一通り紹介出来たと思う。まあ他の子達のこともおいおいわかってくるだろう。……そろそろ授業も終わるかな」


「はいっ、ありがとうございます!」


 ☆


 ハルカが「神様」と話していた時に遡る。


 その時、その方向を、棒立ちになって眺めている人物がいた。


 水色の髪、青い瞳の少年……ユーリである。


 先週の実習でも龍が出た。自分で倒せるから近づくなと制止するクレンを振り切り、出しゃばった。自分の力を過信したのだ。ドラークはドラゴンより弱い、魔物学の知識もある、だからいけるだろう、と。


 結果は、失敗。今となってはなぜそんな行動に出たのかわからない。ただ、気づけば追い詰められていた。


 なんとか魔法を放って追い払い、逃げた――はずだった。しかし、相手は火属性。自分の氷魔法が通用するはずはなかったのに。


 そんな時、自分の命を救ったのは、謎の燐光だった。


 凄まじい魔力を持った光だった。


 そして、それを放った少女は、この学校の人ではなかったという。


 命の恩人……それと同じ光が、ハルカから出ていた。


 そして今もなお、彼女の横には同じ光。


 見間違えようもない。


 彼女の編入時期も一致する。


 リヒトスタインは、「一芸の上手」を重んじる。ソフィアの槍術、オットーの盾のように。

 だから、ハルカが魔法を上手く扱えなくても、納得がいく。


 ハルカが()()()()、ようやく分かった。なぜ今まで分からなかったのだろう――



 それにしても、最近は竜族が頻出している。その理由を……大人達はなぜ教えてくれないのだろうか……

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