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第19話 精霊って操れるものなんだ!

 かくして、食堂では一緒に食べることになった。


 ステラの妹のセレーナも一緒だ。この子は第一学年。姉とは対照的で人見知りが激しい、臆病な子……そんな印象だった。


 基本的に、向かい合わせに座っているステラが私にマシンガントークをする。それを彼女の隣にいるセレーナが微笑みながら見ている。そんな構図である。



「クレンのクラスなんだー! あたしリーナ先生のとこなんだ。2Bでね、女子が多いよ」


「女子多いんだ、いいな……」


「リーナ先生も女性だしね、むしろこっちは男子が困ってるかな。少数派でね。そっち男子しかいないんじゃないの? 大変だねぇ」


「本当に! ……ん? リーナ……先生は、敬称付きなの?」


「うん。あ、そっか、編入生って言ってたね。まだクレン以外の先生知らない感じか。あの人が特殊なんだよ。一発目の授業で敬語禁止ー! って言うしね」


「え? 何か、この世界……えと、この国では敬語は使わないものだとか言ってたけど……」


「それは冒険者になった時のことよ。まーこの学校の生徒はほとんど該当するけどさ。貴族出身の人とか騎士志望の子は身分とか色々厳しいし、そうじゃなくっても中等学校では普通敬語じゃん? だからクレン以外の先生や先輩にはみんな普通に敬語だよ」


「まじで?!」


「まじだよ。それにしても、へぇ、クレンとこかぁ。じゃあ実習で結構会いそうだね」


「そうなんだ! 嬉しいな」


「本当にね! てか今日この後剣術かぁ……あたし剣術苦手なんだよね」


「私……そもそも経験ないんだよね。前の学校に、剣術の授業が無かったから……」


「えっ、そんな学校あんの? いいなぁー!」


「うん……ところでさ、巫女もそうだけど、精霊術師に剣術っているの?」


「そう、それ! いらないの! なのに成績に入るんだ。理不尽だよね!」


「うわあ……」



 相手はこの世界の住人。かつお喋りなので、一気に色んなことを知れる。


 しかし沢山喋っているので、箸の手が止まっていることに気づく。慌てておかずを口に運ぼうとするも……



「でさ、でさ!」



 再び彼女が話し始める。


 ちらと皿を見れば、食べ物はちゃんと減っている。あれだけ喋って、いつ物を口に入れるタイミングがあるのだろう?



「精霊、実は操れるんじゃない? もしかして巫女のスキルにあるかもよ?」


「んー……でも、この子たちは友達みたいなものだし、利用するのって変な感じかな……」


「えっ!」



 私の言葉に、ステラが身を乗り出した。セレーナも、目を丸くしてこちらを見ている。



「……何か、変なこと言った?」


「それって凄いことだよ! 憧れるなぁ……名高い精霊術師さんでも、それが理想だって言ってたもん」


「え……え?」


「精霊に命令して動かすんだけど、心が通じ合ってる方が効果あるからね! 【精霊の加護】……ていうのが最高スキルなんだけどさ、もしかしてハルカも使えたりして?!」



「私はまだ出来ることって少ないけど」と言ってから、ステラは急に神妙な顔つきをする。



「……大気の精霊、ニンフよ……我が前に姿を現せ!」



 突然、今までとは別人の声音になり、一瞬、誰が言ったのだろうと思った。凛とした、大人のような声。今のが、ステラの詠唱だという。


 それに応じ……見たことのない、小さな生き物が彼女の前に現れた。


 羽を生やした小人のような。しかし、その体は風を纏っている。かすかに緑色に光っている。



「これが私の飼ってる精霊。ニンフ……実体化バージョン。操る人によって、精霊の形とかは違うんだけど……」


「わあ……人の形、してる……」



 思わず見入ってしまった。初めて見る子だ。



「うちの子たちも、出来るかな?」


「実体化は常にしてそうだし……光の色見た感じ、色んな属性の子居そうだし……それも小さいけどいっぱい居そうだし……火の精霊も居るのかな? 試しに呼んでみてよ!」


「えと、なんて言えばいいの?」


「んーと……『火の精霊よ、我が前に集え』とか?」


「なるほどね……じゃあ」



 私は、口の中の物を全て飲み込んでから、深く息を吸った。



「……火の、精霊よ……」



 まだ、それしか言わなかったのに。



 緋色の精霊たちが、一斉に私の元に集まってきたのだ。



「え……すご」



 ステラもセレーナも、目を見開いてこの光景を見ていた。


 ふたりとも、ただでさえパッチリと大きい目を、さらに驚愕の色を帯びて光らせている。


 私は私で、開いた口が塞がらない。


 こんなことって、出来るものなんだ……


 目の前の光の粒たちは、体を揺らしながら……いや、私に体をすり寄せる猫か何かのように、なおも近寄ってくる。


 私は思わず、いつものように彼らを()()()


 それを見て、また精霊術師姉妹は驚きの声を上げていた。


 ――この瞬間、私のギルドカードには、【精霊使役=1】が書き込まれたのだった。

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