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老賢者は始祖になる  作者: 髙龍


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九十五話

魔王の襲撃から翌日。

庭では魔法が使えずに足手まといとなったのを気にしているのかミリアーヌがラファエルの指導の元杖を振るっている。

吸血鬼になった恩恵なのか威力は中々のものだ。

ミーシャは天ちゃんと共に魔法の練習をしている。

時折アドバイスを聞きにくるが順調に上達しているようだ。

自分は何をしているのかといえば四人を見守りつつ魔王から奪い取った因子を解析している。

魔封じの一族の持つ特性は有効に使えれば強力な力になるはずだ。

今でも発動させること自体は出来るのだが味方まで巻き込んでは意味がないので改良できないかと試行錯誤している。

「ウィリアム様。ただいま戻りました」

魔界に戻っていたセバスチャンが帰ってくる。

「どうだった」

「配下の者に見に行かせたのですが大物が通るには魔法陣に貯められた魔力が足りないようです。現在こちらに来れるのは小物のみだと思われます」 

セバスチャンには魔界にある人間界に繋がる転移魔法陣の確認にいって貰っていたのだ。

「小物であれか。能力によっては普通の人間では太刀打ちできないかもしれないな」

「魔封じの一族は数が少ないですからレアケースですね。大きな動きがあればこちらに連絡を寄こすように言ってあります」

「苦労をかける」

「ウィリアム様のお役に立てる以上の喜びはございませんので」

二人で話しているとミリアーヌが吹き飛んでくる。

「すまぬ。威力を間違えた」

「いえ。平気です」

すくっと立ち上がってラファエルの元まで駆けていく。

「性が出ますな」

セバスチャンは激しくやりあう二人を見て微笑んでいる。

ミーシャと天ちゃんがこちらに寄ってくる。

「セバスチャンさんおかえりなさい。ウィリアムさんどうやったら熱いって錯覚させられるのかな」

「実際に体験するのが早いのですがそうですね。幻術の炎に焼かれてみますか」

躊躇するそぶりを見せずに即答してくる。

「お願いします」

「それでは行きますよ」

ミーシャの足元が燃えだし次第に全身を蔽いつくしていく

「熱。熱いよ」

限界を見極め幻術を解除する。

「さっきまであんなに熱かったのになんともない」

不思議な顔をしている。

「幻術は他の魔術よりイメージが大切です。扱いは難しいですが世界を騙すことができれば他の魔術では出来ないようなことも起こすことができます」

「世界を騙すですか」

「例えばこのように」

世界が暗闇に包まれ月が落下してくる。

「つ 月が落ちてきてます」

月が落下しきるまえに幻術を解除する。

「今のも幻術なんですね。私頑張ります」

天ちゃんと二人離れていき魔術の練習を再開した。

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