九十話
二人の召喚を終えセバスチャンお手製の夕食を食べていた。
悪魔の作った料理など食べられぬと最初は躊躇していたラファエルだが皆に勧められ恐る恐る口に運んだと思ったら今ではガツガツと料理を食べている。
「天ちゃんいっぱい食べて大きくなるんだよ」
ミーシャは天狐の子供に肉を食べさせている。
名前は天ちゃんに決めたようだ。
天ちゃんは味わっているのかゆっくり咀嚼しながら肉を食べている。
「大勢で食べる食事もよいものですね」
「ウィリアム様は放っておくと寝食を忘れて研究に没頭されますからな」
食後のお茶を入れつつそういってくるセバスチャン。
「明日からの予定ですけど周辺に巣くっているハイオークの討伐を考えています」
「醜い豚共の上位種か。そういうことなら我の力を見せてやろう」
ラファエルが胸を張る。
「天ちゃんはお留守番しててね」
天ちゃんは変化して小さな女の子の姿になる。
「一緒に行く」
「危ないから残っていてほしいの」
「大丈夫。戦えるから」
天ちゃんの周囲に小さな炎がいくつも現れる。
「わわ。天ちゃん魔法が使えたんだね」
コクリと頷くと炎は消えて子狐の姿に戻る。
「師匠。どうしましょうか」
「本人は行きたがっていますし危険のないように補助しますから連れて行ってあげましょうか」
天ちゃんは許可を与えると尻尾を大きく振った。
予定を確認し終えそれぞれ部屋に戻る。
薬草を調合していると部屋の扉をノックする音が聞こえた。
扉を開けるとラファエルが立っている。
「邪魔をするぞ。他の者がいる場所では話にくいことがあったのでな」
「構いませんよ」
「お主は二人を鍛えようとしてるようだがもっと手っ取り早い手があるといったらどうする」
「手っ取り早いですか」
「お主の眷属としてしまえば生命力はもちろんのこと他の能力も格段にあがるだろう」
「私は不老不死を望んでいましたからいいですがそれを二人に押し付けるつもりはないですよ」
「二人はお主の事を相当好いているように見えたのだがな」
「好かれているからこそというべきでしょうかね」
「それを聞いて安心した。あの方が何故そなたに力を与えたのかわかったような気がする」
「そうですか」
「秩序を守る側である私が言うべきことではないのだろうが必要な時にはその力を使うことを躊躇うなよ」
「肝に銘じておきますよ」
ラファエルは部屋を去り一人薬草の調合を続けた。




