八十話
広場に向かうとすでに二人は待っていた。
「師匠。こっちです」
手を振って合図を送ってくる。
「お待たせしていまいましたか」
「いえ。私達も今来た所ですから」
「お昼御飯はどうしましょうかね」
「それならお勧めのお店があるよ」
尻尾を左右に揺らしながら先頭を歩くミーシャを追いかける。
大通りを外れて寂れた感じのする建物群が並ぶエリアに入っていく。
「ここだよ」
看板の出ていない建物に迷いなく入っていく。
「親父さんいるかな」
「ミーシャじゃないか。最近食べに来てくれないからどうしたのか心配したぞ」
「今日はお客さんも連れてきたんだよ。いつものを三人分お願い」
「すぐに準備するから適当に座っててくれ」
「ここはカレースープとナンっていうパンが美味しいんだ」
しばらく待つと湯気を立てたカレースープと平べったいパンのようなものを店主が持ってきてくれる。
「ナンはそのまま食べても美味しいけどこうやってちぎってつけて食べるといいよ」
ミーシャが実演してくれ真似して食べてみる。
「変わった食べ方だけどこれは美味いな」
「でしょ」
ミリアーヌも恐る恐る真似して食べる。
「スパイスが効いていて美味しいです」
しばらく無言で食べ続けていると女性が入ってくる。
「ミーシャさんじゃないですか」
「フミ久しぶりだね。少し痩せたんじゃない。ちゃんと食べてる」
「最近魔物が活発になってて依頼の失敗が多くて」
フミは苦笑いを浮かべている。
「相変わらずパーティーは苦手なのかな」
「あんな下心いっぱいの人達とは組めないですよ」
「ウィリアムさんとミリアーヌに紹介しておくね。この子はフミ。薬草採取をメインにしてるEランクの冒険者だよ」
フミに会釈する。
「この人達ってミーシャさんが昇格試験をしたっていう人達ですか」
「そうだけどどうしたの」
「ミーシャさんが昇格試験を行った相手に一目ぼれして帰ってこないって冒険者ギルドでは噂されてますよ」
「ウィリアムさんの腕に惚れたのは間違ってないかな」
親父さんとよばれた人は無言でフミの前にも同じものを配膳してくれる。
「ありがとうございます」
「気にするな」
ぶっきらぼうに答えながら親父さんは下がっていく。
「依頼失敗か。蓄えもあんまりないんでしょ。お金はどうしてるの」
「街中の仕事しか受けらられない新人の仕事を奪うわけにもいかないので防具職人さんの所で下処理のお手伝いとかですね」
「そっか。昔から手先が器用だったもんね」
「最近は冒険者なんてやめて本格的に修行してみないか誘われていますけど」
「ウィリアムさん午後からなんだけど」
「魔物の間引きをしたいんだな」
「私も構いませんよ」
「そういうことだから少しの間だけかもしれないけど薬草取れるように頑張るね」
「ありがとうございます」
親父さんに四人分の代金を支払い魔物を討伐する為に王都を後にした。




