八話
冒険者に絡まれた後、事情聴取ということで衛兵の詰所まで同行した。
「わざわざすみません。調書を作成したらお帰りいただけますので身分証をお持ちならお出しいただけますか」
「いえいえ、こちらこそお手数をおかけして」
作成した冒険者ギルドの身分証を呈示する。
「職業は魔術師のランクはFですか。絡んでいた奴らはDランクだったのですが」
「田舎から出てきたばかりでして」
「絡まれるようなことに心あたりはありますか」
「市場で収納魔法を使っていたのでそれ目的ではないかと」
「収納魔法持ちは珍しいですからね。持ち帰れる物が格段に増えますから」
担当者は質疑応答をしながら調書に書き込んでいく。
「襲ってきた者達は反省させる為に数日留置所に留め置いた後、罰金を支払って釈放という形になりますので報復に気を付けてくださいね」
「なるほど、ありがとうございます」
「それではこちらで間違いがなければ署名をお願いします」
調書に目を通し問題ないことを確認して署名する。
「それではおつかれさまでした。お気をつけてお帰りください」
担当者に見送られて詰所を後にしたときもう夕方になっていた。
昨日、泊まった門前宿を目指し歩いていく。
宿の扉をくぐると夕食を取っている人で席が埋まっている。
受付に歩きながら女将さんに問いかける。
「部屋はまだ空いているだろうか」
「空き部屋はまだあるけど食事はちょっと開けて貰えるかい。見てわかる通り席がいっぱいでね」
支払いを済ませ部屋の鍵を受け取り二階にあがり部屋に入る。
ベッドに座り長距離会話の魔法をセバスチャンに繋げる。
「セバスチャン、そちらは何か変わったことはあるか」
「ウィリアム様、こちらは特に変わりありません」
「そうか、引き続き屋敷の方を頼むぞ」
「かしこまりました」
セバスチャンとの会話を引き上げ瞑想して体内の魔力を循環させる。
昨日のような違和感もなく綺麗に循環することを確認する。
しばらく瞑想を続けそろそろいいだろうと夕食を取りに階下に降りるとぽつぽつ空き席を確認し腰を下ろす。
「すまなかったね」
と言いながら女将さんが手早く配膳してくれる。
メニューは相変わらずだが必要な栄養素を取れることを考えると貧乏人の味方なのだろう。
夕食を手早く済ませ早々に部屋に引き上げる。
することもないので明日からの採集に備え早めに寝ることに決め、クリアの魔法と安眠の魔法をかけベッドに横になった。
ちゅんちゅん、小鳥のさえずりで目を覚ます。
欠伸をしながらベッドから起き、服を軽く整える。
階下に降りると女将さんはもう起きており気軽に声をかけてくる。
「随分早いお目覚めだね。よく眠れたかい」
「えぇ、おかげさまで」
鍵を返却し椅子に腰を下ろすと女将さんが朝御飯を運んでくれる。
手早く朝食を済ませ宿を後にして門を目指す。
朝が早いこともあり人はまばらだ。
衛兵に身分証を呈示して門を潜り抜け森を目指して歩いていく。