六話
早朝まだ日の出ていない時間に目を覚ます。
朝食の時間まで瞑想をし体内に魔力を循環させる。
体内に固定化の魔術を施した後遺症か極々わずかな違和感を感じ丁寧に流れを正していく。
自分では意識していなかったが思ったより時間がたっているようだ。
目を開けると朝日が昇っている。
衣服を軽く見まわし乱れていないのを確認して部屋を後にする。
一階に降りると他の泊まり客が食事をしている。
空いている席を探して腰を下ろすと女将さんが直ぐに朝食を運んでくれる。
メニューは昨晩と同じだった。
日持ちするパンと一度に大量に作ることでコストを下げているのだろう。
黙々と食事を取り鍵を返却して宿屋を後にする。
市場に移動し商品の値段や質を眺めていく。
野菜や果物の品質は十分高く値段が高いということもない。
少なくともロッテムハルト周辺は安定しているのだろうと推測を立てる。
市場を一通り回った後、馴染の本屋を目指して街中を移動していく。
目的の本屋は多少古びて見えたが変わらず立っている。
店の中に入ると独特の匂いがする。
「いらっしゃい、本日は何をお探しで」
店主だろうか初老の男性が迎え入れてくれる。
「歴史書と最新の地図が欲しいんだが」
男性は迷いなく一冊の本を本棚から抜き取った後、カウンターの後ろの方から地図を取り出す。
「歴史書のほうが大銅貨五枚、地図が銀貨一枚だ」
銀貨を二枚取り出して支払う。
「大銅貨五枚のお釣りだ。またのお越しを」
地図と歴史書を収納魔法の中に収め冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドに入ると人は疎らだ時刻はお昼すぎ依頼に出ているのが大半なのだろう。
軽く依頼表に目を通し併設された酒場に足を踏み入れる。
ウェイトレスに注文を伝えその間に先ほど手に入れた地図を取り出し眺める。
眠る前と国境線がいくつか異なっていることに気が付き戦争があったのだろうと推測される。
屋敷の周りは大公爵領だったが召還に応じなかったので死んだという判断を下されたのか王国直轄地となっていた。
頼んでいたステーキとシチューが届いたので地図をしまい込み食事に専念する。
食事の終了後、飲み物としてコーヒーを頼み今度は歴史書を取り出す。
歴史書の後ろから確認する。
年号からするに少なくとも五百年以上寝ていたようだ。
そのまま寝る前に覚えている出来事までさかのぼり順に眺めていく。
周辺国とのちょっとした小競り合いは寝る前もあったことである。
一番大きいできことは東方の島国であるアスカ皇国が大陸に侵攻し破竹の勢いで侵攻。
それに対応するため大陸同盟が発足、大陸東方にまで押し返すことに成功するが利害関係で同盟内で小競り合いが頻発。
同盟が事実上崩壊しアスカ皇国側も動きを止めた為、停戦条約を結んではいないものの一部の商人が貿易は行えているようで小康状態であるらしい。
歴史書をしまい込み、すっかり冷めてしまったコーヒーを飲みながら考える。
アスカ皇国の文化は気になるがマキート王国の西端にあるここからではいささか時間がかかる。
加えて資金は幸い潤沢にあるが貯金を切り崩している状態だ、これも何とかするべきだろう。
とはいえFランク冒険者の稼ぎなどたかが知れている。
常駐依頼であるゴブリン討伐と薬草採取で一気に上げてしまおうかと席を立ったところで声をかけられた。