五十五話
夕食も終わり自室に戻ってきた。
ミリアーヌが収納魔法を覚えるのにはもう少し時間がかかるだろう。
そうなると実地訓練で出た魔物の素材を持ち帰れなくなってしまう。
それを解決する為にマジックバックを作成して渡しておこうと思ったのだ。
一般的には蛇系統の魔物の皮が高級品と呼ばれている。
手持ちの素材に下位竜の皮があることを思い出し取り出して鞄に加工するのに十分な量があることを確認し魔法を併用しながら加工していく。
しばらく作業を続け無事完成して仕上げに空間拡張と時間停止の魔法をかける。
空間拡張は鞄の容量を拡張し時間停止は空間内の時間を止め素材が腐ったりしないようになる。
鞄を作り終えた後はアーネストに渡す為に遺跡の研究資料を書き写す作業を続けた。
切りのいい所で切り上げ居間に移動する。
「ウィリアム様徹夜ですか。こちらをどうぞ」
セバスチャンがコーヒーを給仕してくれる。
ゆっくりコーヒーを楽しんでいるとミリアーヌが起きてきた。
「師匠。セバスチャンさんおはようございます」
「おはよう」
「おはようございます。ミリアーヌ様」
「セバスチャンまだ時間は早いが朝食の準備とお弁当を頼めるかな」
「かしこまりました」
ミリアーヌに紅茶を入れた後セバスチャンが食事の準備の為出ていく。
「ミリアーヌに渡すものがあるのです少し待っていてください」
部屋にマジックバックを取りに行き戻ってくる。
「お待たせしました。魔物の素材とかを入れられるようにマジックバックを準備しました」
「綺麗な鞄ですね」
「収納魔法が使えるようになるまでの繋ぎですがずっと使えるように下級竜の皮で作ってあります」
「下級竜の皮ですか。そんな高級品なんですね」
「この森には普通に生息しているので珍しいというわけでもないですよ」
「下級竜が生息しているのですね。そんなところで実地訓練って大丈夫かなぁ」
「いきなり強い魔物とは戦わせませんよ。転移魔法で弱い魔物の生息域に移動しますので安心してください」
ミリアーヌと会話しているとセバスチャンがワゴンを押しながら戻ってくる。
「ご食事の準備が整いました」
丁寧に給仕してくれる。
今日の朝御飯はトーストにスクランブルエッグとサラダにオニオンスープのようだ。
「お弁当にはサンドイッチをご用意しました」
二人分を受け取り収納魔法にしまう。
「セバスチャンさんいつも美味しい食事をありがとうございます」
「これが仕事ですので」
朝食を済ませ少し休んだ後、森の入り口に転移で移動した。




