四十五話
修行を終えたミリアーヌと共にセバスチャンが作ってくれた料理を食べる。
今日のメニューはワインにステーキと付け合わせのサラダにコーンスープだ。
一人だと栄養のバランスを考えないで食べることも多いがセバスチャンはその辺も考えて料理を出してくれる。
「このお肉、噛めば噛むほど肉汁が溢れてきて美味しいです」
「よろしければお代わりもございますよ」
「お願いします」
美味しそうに食べるミリアーヌを眺めながらワインを楽しむ。
「食事を楽しんでもらえたようでよかったです。明日からは本格的に教えていきますので食べ終わったら早めに休んでくださいね」
「はい。師匠」
ミリアーヌを残し保存魔法をかけてある食料置き場に王都で買い集めた食材を出してから自室に引き上げる。
古代遺跡の調査をまとめた資料を取り出し片っ端から目を通していく。
破壊神に関する記載は所々にある。
以前は関わり合いのないことだと気にしなかったが神と名乗る存在との接触を考えると対抗策を考えなければならないだろう。
破壊神の先兵として魔王と言われる異形の者が現れたとある。
資料から目をあげて窓を見れば日が昇りかけている。
随分長いこと集中していたようだ。
伸びをして部屋を出てセバスチャンを呼ぶ。
「おはようございます。ウィリアム様」
「セバスチャンに聞きたいのだが魔王という言葉に聞き覚えはないだろうか」
「魔王とは魔界の貴族の総称のことです。私も貴族の一員であり子爵を拝命しております」
ただの上級悪魔だと思っていたセバスチャンは貴族だったようだ。
「貴族の一員である私が長年ウィリアム様に仕えていることが不思議だという顔をなされていますね。魔界では力が全てです。私は貴方様の力に惚れて仕えております」
「破壊神についてはどうだろうか」
「魔界を作ったとされる神ですがそのことで他の神々の怒りを買い封印されたと聞いております。数千年に一度封印が弱まる時期があり封印を破る為に人間の贄を求め魔王に号令をかけ人間界を攻めさせるのです。魔物はその時に魔王達が引き連れてきて自然繁殖したものです。ダンジョンは魔王が拠点として利用していたものですね」
「セバスチャンは参加したことがあるのか」
「私は参加したことがないですね。ウィリアム様は別として弱い人間を相手にしても楽しくないですから」
「参考になったありがとう」
「いえ、お役に立てたようでよかったです」
朝食の準備に向かうセバスチャンを見送った。




