四十一話
「ウィリアム卿、我々はそろそろ行きますが謁見の準備が終わるまでこちらでお寛ぎください」
国王陛下を先頭に部屋を出ていく。
「はぁ~ すっごく緊張しました」
「ミリアーヌも聖女として認定されたら色々な人と会う機会も増えますよ」
「それはそうと師匠。大賢者様ってあの大賢者様ですか」
「落ち着いてください。どの大賢者を指しているかはわかりませんが大賢者と呼ばれているのは事実ですよ」
「アーカディア帝国を何度となく撃退し、様々な魔道具を作り出し平民の生活の水準を各段にあげたという。童話にもなっているぐらいです。私憧れていたんです。師匠に一生ついていきます」
意気込んで宣言するミリアーヌを宥めながら紅茶を飲む。
しばらくミリアーヌと雑談に興じていると文官が呼びにきた。
「ウィリアム様、謁見の準備が整いました」
ミリアーヌを応接室に残し先導する文官に続き廊下を歩いていく。
ひと際大きな扉にたどり着き文官の合図で扉が開いていく。
扉の先に進み臣下の礼をとり声がかかるのを待つ。
「なぜこの者が謁見を戦費として私から金を巻き上げたのですぞ」
「ロードベルト卿、陛下の前だ。控えよ」
宰相が抑え込みにかかる。
まだ文句を言い足りないのだろうロードベルトはこちらを睨みつけている。
「ウィリアム・フォン・マクロード大公爵この度の戦ご苦労であった。王国の間違いで取り上げたマクロードの森の領有権を認め大白金貨五百枚を褒賞として与えるものとする」
国王の宣言にざわつく謁見の間。
「皆が騒ぐ気持ちもわかるが陛下と共に大公爵本人であることは確認済みである」
宰相の一言で騒ぎが収まる。
その後も戦功をあげた者の表彰が続く。
「ギリアム殿前へ」
「はっ」
「少数の兵で貴重な時間を稼ぎ我が軍を勝利に導いたそなたに騎士爵を授け白銀勲章を与え大白金貨五十枚を与えるものとする」
全ての表彰が終わり陛下が退出する。
待っていた文官の先導を任せ先ほどの応接室に通される。
「師匠おかえりなさい。どうでしたか」
「気になることもありましたが問題なく終わりましたよ」
しばらくすると陛下と宰相が革袋を抱えた文官を引き連れやってくる。
「ウィリアム卿こちらが大白金貨となります」
文官から受け取り収納魔法に収める。
「ロードベルト卿の奴、最後まで納得していない風だったな」
「私としては隣接する諸侯ですのでうまく付き合いたいのですけどね」
「本来軍の管理も諸侯の管轄のうちだがロッテムハルトの軍縮があそこまで酷いとは思っていなかった」
「そうですね。ギリアム卿を爵位したことで改善を期待したいところですが」
「兵力を大きく損失して直ぐに動けるとは思いませんがロッテムハルトの領軍が立て直すまでアーカディア帝国への牽制して欲しいというところでしょうか」
「ウィリアム卿は察しが良くて助かります」
「私に依存しすぎるのも問題ですがお引き受けしましょう」
自由を多少縛られることにはなったが王宮での用事は無事に済みミリアーヌと共に宿屋に引き上げた。




