三十六話
防壁の上で待機することしばし後方の歓声が陣地全体に広がっていく。
敵軍は混乱した状態で散り散りに撤退していく。
戻ってきた兵士に敵軍の監視を引き継ぎまずは負傷者の治療を手伝うため救護所へ向かう。
救護所には大量の負傷兵が運び込まれておりエリアハイヒールで応急手当を施してまわる。
各段に腕をあげたミリアーヌと手分けして重傷者を中心にみていく。
残念ながら助からない者も出たがなんとか治療を終えた。
「ミリアーヌお疲れさま」
「ウィリアム様もお疲れさまでした」
治療が終わるのを待ち構えていた兵士に話しかけられる。
「ウィリアム殿ギリアム様がお呼びです」
兵士の後を追いかけ司令官用の天幕までやってきた。
「ギリアム殿お呼びだとか」
天幕にはギリアムと立派な恰好をした青年がいた。
「ウィリアム殿よくきてくれたこちらは援軍を率いてやってきてくださったハリー・フォン・マキート王太子殿下だ」
臣下の礼を取りながら挨拶をする。
「ウィリアムと申します。王太子殿下」
「ウィリアム殿、詠唱を聞いた者には口止めをしているがウィリアム・フォン・マクロードと名乗ったと聞いたのだが大賢者様とゆかりの者なのだろうか」
「ふむ。聞かれてしまいましたか名乗り出るつもりもなかったのですが」
大公爵位を示す証を取り出し魔力を通す。
「我が国に大公爵位を示す証は一つしか存在しない。それに魔力を通せたということは大賢者様本人ということになる」
「王太子殿下、お言葉ですが大賢者様がおられたのはもう八百年は前ですよ」
「ギリアム殿、自分自身を使って不老不死の実験をして成功したのですよ」
「にわかには信じがたいがさすが大賢者様というところか。ギリアム、真偽を問うのはまた後にしよう。今は先に済ませることもある」
「はっ、申し訳ありません。現在、領軍を中心に追撃戦を行っており国境まで帝国軍を追い出しにかかっております」
「ご苦労。ウィリアム殿とお呼びしても」
「王太子殿下のお呼びしたいように」
「ウィリアム殿にも追撃戦に参加して貰いたいところだが集まった諸侯にも手柄をあげさせねばならぬ。既に戦功大の二人にはここで待機して貰いたい」
「かしこまりました。王太子殿下はどうするのですか」
「私も包囲を解いたという戦功は稼いだからな。他の諸侯に任せるつもりだ」




