三十二話
指揮官用の天幕を出た後、物資集積所に向かう。
管理している兵士の指示に従い収納魔法から食料を補充する。
その後は傭兵達の元へ戻り矢傷を負った者を治療して過ごした。
夕方頃、敵兵は諦め撤退していった。
数日間、敵は遠巻きに弓で攻撃するに終始しこちらは防御に徹していたこともあり死傷者の数は少なく泥沼の様子を呈していた。
士気を鼓舞するためギリアムから少量ではある物の兵士と傭兵にお酒が配られ夜警の者以外は騒いでいる。
「ウィリアム殿、皆が騒いでるときに呼び出してすまない」
「ギリアム殿お気になさらずに。元々お酒は付き合い程度しか飲まないものですから」
「ウィリアム殿が在庫を融通してくれたおかげで問題になっていないが相変わらず補給部隊による補充ができていない」
そういうギリアムの顔には疲労の色が濃い。
初めての実戦で色々と気苦労が多いのだろう。
魔法で疲れの取れるハーブティーを入れて手渡す。
「こちらをどうぞ。疲れが取れますよ」
「すまない。心配をかけるほど疲れて見えるのだろうか」
誤魔化しても仕方ないので正直に言う。
「えぇ、疲労が見て取れますよ。ちゃんと眠れていますか」
「寝なければと思うのだが夜中でもちょっとした物音で起きてしまうのだ」
「指揮官が途中で倒れれば軍が瓦解します。今日は安眠魔法をかけますのでそれを飲んだら寝てしまってください」
「私よりウィリアム殿のほうが指揮官に向いていそうだな」
「経験を積めばギリアム殿なら立派な指揮官になれますよ。焦らないことです」
話しながら安眠魔法をギリアムにかけ挨拶をして指揮官用の天幕を後にする。
補給を安定化する為に問題の排除を決め陣地を後にする。
飛行魔法でしばらく飛翔したところで馬車の残骸がある場所にたどり着く。
探索魔法を展開し森の中に複数のウルフの反応を捉えるが今すぐ襲ってくるわけではないようだ。
残骸から使えそうなものを回収して収納魔法に収めていく。
食料はダメになっている物もあったが手付かずで残っていた矢の在庫を確保する。
これで迎撃戦で弓兵を十分活かすことができる。
問題を根本から解決する為に召喚魔法で闇をまとったシャドウウルフを影から次々と呼び出し森に潜んでいるウルフを駆除させていく。
倒したそばからウルフが沸いてくるがシャドウウルフに任せ倒したウルフを収納魔法に回収しながら探索魔法の範囲を広げる。
五人の人間の反応を捉えそちらに近づいていく。
「被害状況を聞いて予測していたがやはりあの時の魔術師か」




