三十一話
ミリアーヌに回復魔法のコツを教えると約束した翌日、予定通り傭兵達と防壁の上に陣取った。
相手の歩兵は相も変わらず攻略を目指し進軍してくる。
距離のある状態から雷陣で狙い撃ち射程に入った瞬間爆裂魔法のエクスプロージョンを放っていく。
後はそれをひたすら繰り返した。
「これって俺達いる意味あるのかねぇ」
アルベドはそんなことをつぶやきつつも油断なく敵兵の方を見ている。
昼頃、敵に新たな動きが現れる。
相手が攻城兵器を持ち出してきたのだ。
ロッテムハルト攻略まで温存したかったのだろうがここを抜けないことにはそれもかなわない。
このまま攻城兵器の稼働を許せば甚大な被害が出てしまう。
「ちょっと出て攻城兵器を壊してくる」
「さすがにウィリアムでもそれは無茶じゃないか」
飛行魔法で防壁を飛び出し敵の上を飛翔していく。
飛んでいる私に気づいて迎撃するつもりなのか矢が射かけられるが霧化の魔法で矢を回避する。
攻城兵器に十分近づいたところ火魔法のヘルフレイムで一気に燃やし他の攻城兵器も次々と燃やしてまわる。
◆◆◆
「なんなのだ。あの化け物は」
「優れた魔術師がいるであろうとはわかっておりましたがあれほどとは。虎の子の攻城兵器は全滅です」
「ぐぬぬ、奴をどうにかするうまい手はないものか」
「閣下、非常に申し上げにくいのですが撤退するべきかもしれません」
「撤退はできぬ。皇帝陛下と約束したのだ。必ずロッテムハルトをとると」
「それでしたら兵の消耗も激しいですし積極的に攻めこまず、矢を射かける程度にとどめるべきかと」
「うむ。性分ではないがそれは致し方ない。負傷兵を後方に下げると共に予備兵の到着を速めるように言うのだ」
「かしこまりました」
◆◆◆
攻城兵器を全て燃やしてから自陣地に戻る。
敵は力攻めを諦めたのか距離を取り矢を射かけ始めた。
防壁の上の兵士は大楯を持ち防御に徹している。
することもないので後方に下がり休息をとっているところに正規兵が訪ねてくる。
「ウィリアム殿、ギリアム様がお呼びです」
正規兵についていくと指揮官用の天幕に案内された。
「ギリアム殿何かありましたか」
「少しまずい事態になった。食料を運んでいた補給部隊がウルフの群れに襲われた」
「ウルフの群れですか。ピンポイントに補給部隊が狙われたのは不自然ですね」
「不自然ではあるが何よりまずいのは食料が届かなかったことだ。補給部隊を当てにしていたためあまり余裕がない」
「食料は私が収納魔法に入れている物をお出ししましょう」
「申し訳ないが頼む。薬品の補充もしてくれたそうで頼りきりで済まない」
「元々籠城をする予定でなかったので物資を事前収集してなかったのが裏目に出ましたね」
「事前の準備良さといい歴戦の猛者のような貫禄を受ける。ウィリアム殿さえよかったらこの戦争が終わったらうちのお抱え魔法使いとして使えてくれないだろうか」
「申し訳ありませんが抱えられるわけにはいかない理由があるのです」
「理由を聞くわけにもいかぬのだろうな。残念ではあるが仕方ない」
「それではそろそろ失礼します」




