二十九話
「ギリアム殿状況は」
「ウィリアム殿か、丁度いいタイミングで戻ってくれた。魔術師の魔力切れで接近を許してしまった所だ。相手の魔法も止まったのが唯一の救いだな」
「攻城梯子がいくつか見えますね」
「魔力に余裕があるなら乗り込んでくる者より後続を潰してくれないだろうか」
「わかりました」
防壁を移動しながらエクスプロージョンの魔法で敵の後続に打撃を与えていく。
敵は諦めずに攻め寄せてきていたが夕方近くになり撤退していった。
敵が残していった梯子を火魔法で燃やし飛行魔法で防壁を降り使えそうな矢を回収して収納魔法にしまっていく。
一通り戦場を巡り終え防壁を乗り越える。
備蓄場で収納魔法から矢を取り出している所で声をかけられる。
「矢を回収してくれたのが助かる。元々籠城する予定ではなかったので矢の備蓄が不足していた所だったんだ」
「ギリアム殿、後方からの補給は難しいのですか」
「援軍と補給の要請は送ったが援軍と矢の補充については難しいかもしれない」
「難しいとは」
「父上と嫡男である兄は軍略に疎いのだ。平時の領主としても良くもなく悪くなくといったところだしな。食料に関しては信頼できる部下に任せてあるから問題なく届くだろう」
名前にフォンがつくのは当主か継承権のある嫡男に限られる。
ギリアムは次男であった。
親と兄の不得手を補うため軍略を徹底して学んだそうだ。
「しかし、ウィリアム殿の魔力量には驚かせられる。ずっと魔法を行使していて切れる様子もないとは敵でなくて良かった」
「今日だけで相手はかなりの被害を出したはずですが」
「それに対してこちらの死傷者は想定より少ないが元の数が少ないからな」
被害が出ないように立ち回っていても死者はでる。
魔法の直撃に防壁を乗り越えてきた敵兵との斬り合いでどうしても犠牲は出るのだ。
「ギリアム殿こちらでしたか」
傭兵達のまとめ役であるグーカスがやってきた。
「グーカス殿何かあったのだろうか」
「傭兵達の被害報告にきたのですが」
「ふむ。それはわざわざ済まない」
「寄せ集めで連携が取れてないのもあり死者が想像以上に多いです」
「そうは言われても他所も余裕はないし正規兵を回したとしても連携に不備はでるな」
「何も対処しなければ傭兵達の士気は下がり突破されるかもしれません」
「私は元々傭兵として参戦しておりますし明日は私が援護に回りましょう」
「ウィリアム殿申し訳ないが頼む」




