二十五話
砦の前面部に多数の堀を作る作業をしていると遠目にアーカディア帝国の姿を視認した。
作業を中断して砦と呼んでもよい陣地に引き上げる。
途中で切り上げたとはいえこれで大軍で攻めるには難しいはずだ。
「ウィリアム殿ご苦労だった。この礼は必ずしよう」
「この陣地を見て引き上げてくれれば楽なのですがね」
「今回の遠征軍は規模がでかい。どこまでやるつもりかはわからないがロッテムハルトを盗らずに引き上げるというのは考えにくい」
「領軍の集結具合はどうなのです」
「早馬は走らせたのだがどうも出し渋る領主も中にはいたようで予定よりも遅れている」
「消耗を抑えて籠城をするしかないですね」
◆◆◆
「斥候の報告では信じられぬと思っていたがこれはまた見事な砦だな」
「そうですね。兵を大量に投入しても攻略には手間取るかと」
「例のゴーレム部隊は準備できているな」
「はい。大賢者の作りしゴーレムを解析し量産に成功したその成果をお見せしましょう」
◆◆◆
「司令官、敵軍に動きがあるようです」
「ついに動き出したか。相手はどのような手できたのか」
「ゴーレムです」
「何ゴーレムだと・・・。大賢者様が残した遺跡の守り手の」
「とにかく見てみましょう」
司令官と二人城壁に上り視認すると共に探知魔法でゴーレムを捉える。
遺跡に設置していたゴーレムの反応を捕え先日、遺跡で遭遇した謎の男の事を思い浮かべる。
王国内に侵入しゴーレムを拿捕して技術を研究していたのだろう。
相手の作ったゴーレムまでは無理だが上位者命令で遺跡に配備していたゴーレムの制御権を奪い襲わせる。
「これは何が起こっているのだろうな」
無理もない攻め込んでくると思っていたゴーレムが同士討ちしているのだ。
◆◆◆
「これはどういうことなのだ」
「遺跡から研究用に奪取したゴーレムが誤動作を起こしています」
「ぐぬぬ、原因はわからぬがコアを破壊するのだ」
兵士に指示して暴走しているゴーレムを討伐させる。
◆◆◆
こうしてマキート王国とアーカディア帝国との戦争はゴーレムの同士討ちから幕をあけた。




