二十三話
傭兵の登録をすませるため西門の衛兵詰所までやってきた。
扉を開いて中に入ると険悪な空気が流れている。
「だから、どうして雇ってくれないんだ」
怒気を含ませながら男性が詰め寄る。
「Fランク冒険者を雇うわけにはいきません。規則ですので」
「今は少しでも戦力が必要なはずだ。ランクなんて関係ないだろ」
「みすみすあなたを死地に追いやるわけにはいかないのです。わかってください」
経験の足りない者を戦場に出すのは危険だ。
本人は勿論のこと、味方すら危険に晒す可能性がある。
「俺は諦めないからな」
男性は足音荒く出て行った。
「お待たせしました。ご用件はなんでしょうか」
ギルドカードを提示しながら話しかける。
「傭兵として登録したいんだが」
「Cランクの冒険者ですね。こちらをお読みになり問題がなければ署名をお願いします」
渡された書類を確認し署名をおこなう。
「はい。これで傭兵としての登録が完了しました。西門を出たところで編成を行っていますのでこちらの札をご提示ください」
お礼をいい詰所を出てその足で西門を潜る。
天幕の広げられた場所を見つけそちらに歩いていく。
見張りの兵士に札を見せ、指示された天幕に入る。
「よく来たな。俺は編成官のダリスだ」
「魔術師のウィリアムといいます」
ダリスに札を呈示する。
「Cランクの魔術師か。正直いって助かった」
「助かったとは」
「魔術を使える奴が圧倒的に不足していてな」
「傭兵ですからね。そういうこともあるでしょう」
「いや、正規軍含め魔術師が不足してるのだ」
「どうしてそんなことに」
「今代の伯爵様になってから軍縮が推し進められてな」
「国境を守る軍を軍縮ですか」
頭が痛い。今代のロッテムハルト伯爵は何を考えているのか。
「特に高級取りの多い魔術師が辞めさせられたと愚痴を言っていても仕方ないな。今集まっている傭兵は昼にはイニツァー平原に展開している正規軍に合流して貰う。それまで他の者と交流を深めてくれ」
天幕を辞し屯している傭兵の中に混じり込む。
一人の男性が話しかけてくる。
「イニツァー平原にいくまで臨時リーダーをしている剣士のアルベドだ」
「魔術師のウィリアムだ。よろしく頼む」
「魔術師か。今ここにいる中では唯一だな」
その後もアルベドと雑談に興じ昼になりイニツァー平原に向け出発した。




